2008年6月22日 (日)

ベン・トー サバの味噌煮290円

バカ小説なのだけれど、天然ではない。かなり考えて誇大妄想的語彙を升目に埋めていくように書いている。だから突き抜け感がいまひとつ足りない。作者の文章の方向性は本来もっとフラットなもので、若干無理をして書いているように読めた。

まあとはいいつつチャレンジ精神は買いだし、底力があるのでそれなりに読めてしまう。今後、どっちに行こうとしているのか判らないけれど、今回、飛び道具的ネタもそれなりに表現できるということがわかって、それは収穫だったか。

それにしても弁当争奪をネタとした部活小説なんて、フツー思いつかんだろうに。アイディア出しという点においては、ちょっとどうかしてると思わずにはいられないなぁ(いい意味で)。

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ベン・トー―サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-3) Book ベン・トー―サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-3)

著者:アサウラ
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2008年5月25日 (日)

君のための物語

悪くはない。しかし甘い。誰もが仲直り的な甘さである。まあ物語をものがたりっぽくするために登場人物たちに過酷な環境を与えるのもどうかとは思うが、安直にお友達化する設定もいかがかと思うわけだ(というほどご都合主義というわけもないのだが)。

ワープロの使いはじめで普段だったら絶対使わないような言葉を多用する的なヘンに硬い文体がひっかかったりするが、世界観、というか、舞台設定は平凡ながら的確。全体的にはまあまあ楽しんだといったところである。

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君のための物語 (電撃文庫 み 13-1) Book 君のための物語 (電撃文庫 み 13-1)

著者:水鏡 希人
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2008年4月19日 (土)

MAMA

紅玉いづきは寓話作家である。ライトノベルとして書かれているのは確かだが、実のところライトノベルの重要な要素であるキャラクターを、重視していないのだはないかと思うのだ。
また、物語を組み立てていくストーリーテラー型の作家でもない。伏線やコンフリクトを話の中に配置し、表現していくという面が弱いように思うのだ。

ではどこに創作のモチベーションがあるのかというと、勝手な想像だけれど、現象/想い/ムード/世界観といった在りようそのものではないか、と思う。だからこそ寓話である、と自分は感じたのである(もしかしたら言葉の使い方を間違っているかもしれないが、許されよ)。

だから、作中日本と思しき東洋が登場し、世界観表現が混乱(自分はするように読んでしまった)してもあまり気にしてはいない。またクライマックスまで一直線でオチもまるわかりであってもそれを隠そうともしない。
しかし、それが作品の強力な魅力になっているのもまた事実である。

自分の書きたい気持ちを(物語というオブラートに必要以上に包まないで)そのまま作品にしているという点で非常に稀有な才能だと思う。これが今後どのように「作家」として変わっていくのか、はたまた変わらないのか、楽しみである。

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MAMA (電撃文庫 こ 10-2) Book MAMA (電撃文庫 こ 10-2)

著者:紅玉 いづき
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2008年4月 9日 (水)

ようこそ無目的室へ!

作者がやりたかったことがあまりにもわかりやすくて、読んでいるこちらが照れちゃいました。

自分はミステリーを読んでいていつも疑問に思っていたのだ。なぜこんなに人が死ぬのだ、と。もっと普通の生活の中に「謎」があっていいのではないか。そんな中で北村薫などが「日常の謎」というジャンルを開拓し、ひとつの答えを出したのだけれど、しかし自分は、それすら違うのではないか、日常の謎がイコール情の物語になっていることに対して、もっと思考実験的でもいいのではないか。と思っていた。(あ、もちろんハードなミステリーが嫌いなわけではない)

よくよく自問してみると、なんのことはない自分の理想のミステリーとは「黒後家蜘蛛シリーズ」であったということだ。些細な謎に、ヒマ人たちがあーでもないこーでもない、と解釈をつける。便宜上、それらしい回答を設けはするが、しかし本質的にはどれが答えでもいい。なぜなら思考実験すること自体が目的だから。そういうミステリーが好きなのであった。

というわけで、本作。それはもうあからさまに黒後家蜘蛛を意識している。なんたって藍座市に霜府高校だからね。まあ、単純にミステリーとして読むと、謎もその回答も非常にゆるく甘すぎるぞ、というところなのだけれど、無目的室というぬるま湯部活な雰囲気がけっこう楽しいので、それで相殺してもいいかな、と思った。話のさげの一言もけっこうキレイで小粋な感があって、自分は好感触を持ったしね。こういうものいーんではないでしょうか。

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ようこそ無目的室へ! (HJ文庫 あ 1-2-1) Book ようこそ無目的室へ! (HJ文庫 あ 1-2-1)

著者:在原 竹広
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2008年3月12日 (水)

ジャストボイルド・オ’クロック

うーん、ビミョーに期待はずれ。もっと小粋なアクション(格闘とかの、ではなく行動する者の物語としての)ストーリーを想像していたのだけれど、ライトノベル的内省成長痛があっての、いかにもなヒーローストーリー(?)であった。それはそれでいいのだけれど、語り口が雑で言葉足らずなところと冗長なところが入り組み、ようはあまり整理ができておらず、すんなり読み進めなかった。いかにも残念である。

人類崩壊後の家電共生人類というアイディア、CI戦略としての職業的ヒーローというアイディアなど、けっこう面白げな設定ではあるのだけれど、それがきちんと生かしきれていない。それも物語が整理できていないことによるもので、ああ、もったいないなぁ、と思うわけだ。

いろいろと悩み多い現実社会に生きている我々としては、そのようなしがらみから離れて痛快ハードボイルドヒーロー小説をものにしていくってのもなかなかに難しいのかもしれない。

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ジャストボイルド・オ’クロック (電撃文庫) Book ジャストボイルド・オ’クロック (電撃文庫)

著者:うえお 久光
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2008年3月 8日 (土)

オオカミさんと毒りんごが効かない白雪姫

バカだねぇ、相変わらず。中学生並みの、いや小学生並みのエロ発想、大好きです。

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オオカミさんと毒りんごが効かない白雪姫 (電撃文庫 お 8-11) Book オオカミさんと毒りんごが効かない白雪姫 (電撃文庫 お 8-11)

著者:沖田 雅
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閉じられた世界 絶望系

これはひどい。ライトノベルの形をとったアンモラルな妄想小説だ。いや、もちろん誉めているのだけれど。

登場人物皆、人として正しくなく、己の業と妄想に自家中毒し、一見他者とかかわっているようにみえる物語の中で、実はただ自己の主張を垂れ流すのみの一方通行の断絶っぷり。セックスすら、他人の肉体を使ったオナニーでしかない。そこには愛(イコール他者と対等に向き合うこと)などない。そんなドロドロとしたナニカを天使や死神にかこつけて物語っぽく語ってみた。という野心作にして問題作である。

ひどいなぁ、と思いつつ、もちろん一気に読むことを楽しんでしまえたのは作者の文章力によるところも多い。その確信犯的なルサンチマンがどれだけの人に受け入れられているのだろうか、それは気になるところである。

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絶望系 閉じられた世界 電撃文庫 (1078) Book 絶望系 閉じられた世界 電撃文庫 (1078)

著者:谷川 流,G・むにょ
販売元:メディアワークス
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2008年2月22日 (金)

人類は衰退しました(2)

ノーテンキなアイディアと、のほほんとした文章まわしが心地よい作品で、その持ち味は今回も健在。ホーカーシリーズやねこめ~わくシリーズといった、先行類似作品との対比としても、個性ある文章力が際立っているといえよう。

ただ、前回と比べてあまりにもストーリー展開がバタついていてちょっとついていきづらかった。そこの点は残念だな、と思うのであった。

2話掲載だが、自分としては、親指姫にして花束アルジャーノンをあまりにもわかりやすい形でモチーフにしている(とゆーか、パチってる?)1話目が好きですかな。2話目はあまりにも時間時空が判りにくくてついていけてない。歳とったせいでもないと思うのだけれど。

とりあえず次も楽しみにしておるわけですよ。

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人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫 た 1-2) Book 人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫 た 1-2)

著者:田中 ロミオ
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2008年2月15日 (金)

狼と香辛料(7)

番外編的短編集。ボーナストラック的な位置づけになるので、本来ならば本編完結後に出るべきなのかもしれないし、でも、作品に熱のある今この時期ならでは、なのかもしれない。と屁理屈をこねてみた。物語が大きく動く内容でもないので、キャラ萌え視点で単純に、素直に楽しく読ませていただいたと書くべきなのかね。

これは作品に直接関係ないのかもしれないし関係あるのかもしれないが、挿絵の雰囲気が変わってきているな、と思った。感情表現が直接的というか記号的というか、つまりはよりマンガ的になっているように思う。

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狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553)) Book 狼と香辛料 (7) (電撃文庫 (1553))

著者:支倉 凍砂
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2008年2月13日 (水)

ARISAチェンジリング

ストーリーも世界観も実にステレオタイプで新鮮味に欠ける。というようなライトノベル(に限らず定期的提供を行うジャンルはすべからく、だろうが)はよくみかけるわけで、それ自体はダメとは実は思ってはいない。裾野の広がりを構成する上で必要なのだろうなぁ、と思うからだ。まあ、個人的には好んでそのような作品群までを守備範囲にするつもりはないが。だから設定面におけるダメだしはとりあえずしない。

この作者だが、自分としては初見である。著作リストをみる限りでは冊を重ねているようだが、しかし、なんだろう、読んでいてどうもしっくりこない。語り口やネーミングなどのセンスが古いということもあるのだろうけれど、とにかくよくできたライトノベルにある熱がないのだ。淡白であるとかクールであるとかではなく、伝わるものがない。それは上述の設定の陳腐さが影響していることもあるのだろうけれど、この書き慣れなさはなんだろうな、と思う。作者の本来書きたい、あるいは得意としていないテーマやジャンルを勉強しいしい、機械的に書いている。そんな印象である。

ライトノベルがここまで爛熟している今、需要と供給においてもいろいろあるのかもしれないなぁ、と思うのであった。

ところで、作中、並行世界の説明で「ライトノベルやテレビアニメではよくある設定」的な表現があったが、例示としてこのふたつはいかがなものか? SFというジャンルに執着するつもりもないけれど、ちょっとね。

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ARISAチェンジリング (電撃文庫 な 2-22) Book ARISAチェンジリング (電撃文庫 な 2-22)

著者:中里 融司
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