2008年6月22日 (日)

四畳半神話大系

これはようするにうる星やつらビューティフルドリーマーなのだった。少しずつズレながらも永遠に続く心地よいモラトリアム。そのループから脱するための主人公の通過儀礼。まさに然りである。

そんな設定をいつもの森見ならではのDT感溢れる自虐的加害的文体は自分としては実に唸らせられるところであり、まったくもって同意する限りなのである。
まあ、しかし、とどのつまり、結局のところ、ハッピーエンドとはね。成就した恋の話など聞きたくもないわ。

お勧め。

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四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1) Book 四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)

著者:森見 登美彦
販売元:角川書店
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バンガローの事件

ナンシードルーご活躍。しかし無茶な娘さんですなぁ。

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Book バンガローの事件 (創元推理文庫 M キ 5-3 ナンシー・ドルーミステリ 3)

著者:キャロリン・キーン
販売元:東京創元社
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2008年4月19日 (土)

美術の核心

日本人は無類の印象派好き。その命題に対してなんらかの答えが欲しくて読んでみたわけだが、まあ判ったような判らなかったような結論。結局、主観でしかないのね。自分としてはもっと歴史的背景や心理学的要素とか民族論とか、客観的な検証がなされた解答が(まあそれとて仮説にしかならないのだとしても)知りたかったのだが、美術史研究においてはそういう文脈で整理されることはないので、しかたがないのかなぁ、ないものねだりだったのかなぁと思いつつ、個人的にはさらに追求していきたい命題ではあるので、深く静かに調査していきたい。

で。本自体は、読みやすい初心者向けの美術指南となっていて、かなり面白かった。自分は(自分で云うのもナンデスガ)それなりに経験値があるつもりだけど、細分化されたジャンルにおいては知らないこともあり、また知っていても表層的な知識であったりで、その再確認ができるという点でも、非常によかったなぁと思うのであった。

できれば、より深く学びたい人に向けた参考図書の紹介があればなおよし、かなぁ。

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美術の核心 (文春新書 614) Book 美術の核心 (文春新書 614)

著者:千住 博
販売元:文藝春秋
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2008年4月 6日 (日)

上司の哲学

上司かくあるべし、ということを判りやすい実体験を元に書いてある。1時間程度で読みきれるが、それでおわり、というような読み方をするのではなく、たまに読み返して気持ちを改めるというのがあるべき読み方だと思う。実際、書いてあることを常に覚え続けているなんて無理な話だしね。

こういう社会人啓発本ってちょっと胡散臭いもので、この本も若干そう思わないでもない(特に松下嫌いの自分にとっては)が、しかしそういうひねた読み方をしない人が伸びるんだろうなぁ。きっと。

上司だけじゃなく、部下も必読。と、とりあえず薦めてみる。

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上司の哲学―部下に信頼される20の要諦 (PHP文庫) Book 上司の哲学―部下に信頼される20の要諦 (PHP文庫)

著者:江口 克彦
販売元:PHP研究所
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2008年3月16日 (日)

すべての美人は名探偵である

バカミスである。この場合のミスとは、ミステリーとミスコン、両方を指すわけだが、おそらく、いや確実に作者もそれを意識しているね。

ミステリーとしては鯨統一郎らしからぬ浅さではある。童歌の謎の展開も表層的で掘り下げが足りないし、物語運びにもいろいろと無理がある。そこいらへんはかなり残念賞であるわけだが、しかし、この小説はそういう話を楽しむための話じゃないからね。
基本的にはスター競演顔見せ興行であり、ある意味マジンガーZ対ゲッターロボみたいなものである(どんだけ古いたとえなんだ?)。だからストーリーは二の次でいいってもんでもないのだけど、つまりはキャラクターが活き活きと動き回ることに対しより優先度が高く、だからへんにロジックをこねまわして勢いを殺してしまうのは本末転倒なのだ。そう思う。

それにしても自分は最近、ライトノベルばっか読んでいるせいでおかしくなってしまっているのかもしれないが、この物語も、そんな目線で読めてしまってしかたがなかった。要するに百合百合なスラップスティックコメディということなのだが。主人公のいっぽうは、だめあね系(でも受け)で、もう一人は、妄想美少女系(でも攻め)。うーん、萌えますなぁ。てな感じ。これでツンデレだいたら完璧。みたいな。そんなバカな読み方をしても許せる、いや、そういう読み方を誘導されている、というのはやはり鯨統一郎にまんまと踊らされているのだろうなぁ。

ふたりの本筋の短編集も好きだし、そちらのほうが正しいあり方だとも思うのだけれど、このバカコンビの百合百合な!小説もまた書いてほしいなぁ、と本気で思う。そう思う自分はかーなり、毒されている。

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すべての美人は名探偵である (光文社文庫 く 10-6) Book すべての美人は名探偵である (光文社文庫 く 10-6)

著者:鯨 統一郎
販売元:光文社
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2008年3月 8日 (土)

闇を見つめて

相変わらずミステリーとしては弱い。しかしこの小説はミステリーとしてではなく、アメリカという国でふたつの大戦のあいだにあった普通の人々の歴史を描いているのであり、その視点からすると実に面白いのである。今回は引き続き恐慌時代の中で起こったデモを主役としている。これが実に見事で、ああ、こういうことがあって歴史が動いていったのだなぁ、と本当に読ませられた。

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闇を見つめて (創元推理文庫) Book 闇を見つめて (創元推理文庫)

著者:ジル チャーチル
販売元:東京創元社
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悪夢のエレベーター

これは小説ではない。コントである。というのが一番はじめに感じたことである。
さえない若者に怪しい中年、妄想系ゴスとエレベーターに閉じ込められて、さあどうする、というシチュエーションがまずは胡散臭い。それからの展開も、動的に物語が動いていくというよりは、4人のテンパッた会話劇として進み(それは密室劇だから当然でもあるのだけれど)、やがてとんでもない方向に事態が進展していくというのは、実に舞台的、コント的であるなぁ、と。

もっともこれが「藪の中」的手法による、第2章、第3章と進むにつれ、そのありえないシチュエーションが実は必然であることが浮かび上がってきて、さらには、不条理が条理として(?)、悲劇的な喜劇として幕を閉じるわけだが、その落着のしかた、それに至るまでの伏線の置き方などは、なるほどそうきたか、とちょっと唸らせられてしまった。

読後の感想としては、単なるコントではなく、コント仕立てのシチュエーションサスペンスだったんだなぁと思った。けっこうお勧めしたい。

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悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫 き 21-1) Book 悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫 き 21-1)

著者:木下 半太
販売元:幻冬舎
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神様のパズル

「宇宙を創る」という、実にSFらしいアイディアのSFとして物語が展開するのかと思っていたのだけれど、実際は天才科学者少女の成長痛と通過儀礼の物語であった。肝心の壮大なホラ話としてのSF的ストーリーは、まあそれがメインテーマでもありそれなりに語られてはいるものの、やや不完全燃焼。実際にどうなったのか?の部分については逃げをうっており、ちょっとそれはずるいなぁと思わざるを得ない。こちらがSFの王道を必要以上に期待していたせいかのかもしれないし(それは小松賞というブランドに対しての期待でもあったわけだが)、その点、ちょっと不当な感想になっているかもしれない。

以上のような色眼鏡をとりあえず外して読めば、マイナージャンル(この場合、理系研究室)の若モノ小説としてそれなりにきれいにまとまっており、面白いとは思う。

でも。やっぱり。ガチでコアな空想科学な小説が読みたかったなぁ。

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神様のパズル (ハルキ文庫) Book 神様のパズル (ハルキ文庫)

著者:機本 伸司
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2008年2月12日 (火)

夜の静寂に

キャラクター紹介から物語をスタートしなくていい分、この物語自体を展開しやすいのだろう。ややスラップスティックぎみの展開が楽しい。まあ殺人事件を楽しいというのもアレだが、あれあれという物語はこびを堪能することができる小説であるといえよう。1作目同様、本格推理としては弱いのだけれど、基本的な謎と伏線の提示は前半でされており、ミステリーとしての誠実さは高い。まあ、でも伏線が描かれた時点で物語の核となる謎の真相がバレバレで、そういう面でいえばミステリー小説としての甘さはないわけではない。しかし、この小説はあくまでも昔の田舎町のドタバタした殺人事件の顛末を追うタイプの作風なのであって、だから、仮に謎が判ってしまっていても問題はない、と自分は思うのであった。

云い換えると、主人公の兄妹とそのまわりの人々というキャラクター主導型の小説であり、だから彼らが活き活きと描けていればそれでこの作品の目的は達成できている。ということなのだ。
と、もったいぶって書いてみたが、単純に面白いってことを云いたかっただけなのである。

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夜の静寂に (創元推理文庫) 夜の静寂に (創元推理文庫)

著者:ジル チャーチル
販売元:東京創元社
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2008年2月 4日 (月)

そのケータイはXXで

先に映画を観たのだけれど、その映画が実に怪作にして傑作だったので、読んでみることにした。びっくり。映画はかなり破天荒で「原作にかなり手を入れたんだろうなぁ」と思っていたら、これが逆で、原作のほうがもっと破格な壊れっぷり。映画のほうが、もっと現実的だったとは。それは、原作があってそれを90分にまとめるに際して、エピソードを整理しブラッシュアップする必要があってのことではあるのだけれど。でも、あのトンデモナイ(褒め言葉)映画よりもっとムチャクチャなんだもん。本当にびっくりした。

正直、そんなに上手い作品ではない。なんでここをそんなに書き込むかなぁ、とか、もっと詳しく書かないとわからんだろう、とか、表現の濃淡にむらがある。それは、作品全体をつつむムードもそうで、ホラーなんだか、アクションなんだか、コメディなんだか、あっちにコロコロこっちにコロコロと、落ち着かない。それは若書きということもあるのかもしれないのだけれど。
でも、それをまずよしとして読んでみれば(まあ映画がそうだったので覚悟はできていたからかもしれないが)、なんでもありの面白さ第一主義的なエンタテイメントとしては、そんなに的外れではないのだった。若書き的なところにさえ目を瞑れば、アリだと思う。実際けっこう楽しんじゃったしねぇ。

解説でも言及されていたけれど、本当にジョジョっぽいのだ。特に愛子サイド。対決において、相手の手の読み合戦なんて、(雰囲気的には)まさにそのまま。作者の好きなものを全部入れてみましたという姿勢は、潔くていい。

荒っぽいところもあるけれど、1作目だしね。次作も期待して読むことにします。

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宝島社文庫「そのケータイはXX(エクスクロス)で」 (宝島社文庫) Book 宝島社文庫「そのケータイはXX(エクスクロス)で」 (宝島社文庫)

著者:上甲 宣之
販売元:宝島社
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