すべての美人は名探偵である
バカミスである。この場合のミスとは、ミステリーとミスコン、両方を指すわけだが、おそらく、いや確実に作者もそれを意識しているね。
ミステリーとしては鯨統一郎らしからぬ浅さではある。童歌の謎の展開も表層的で掘り下げが足りないし、物語運びにもいろいろと無理がある。そこいらへんはかなり残念賞であるわけだが、しかし、この小説はそういう話を楽しむための話じゃないからね。
基本的にはスター競演顔見せ興行であり、ある意味マジンガーZ対ゲッターロボみたいなものである(どんだけ古いたとえなんだ?)。だからストーリーは二の次でいいってもんでもないのだけど、つまりはキャラクターが活き活きと動き回ることに対しより優先度が高く、だからへんにロジックをこねまわして勢いを殺してしまうのは本末転倒なのだ。そう思う。
それにしても自分は最近、ライトノベルばっか読んでいるせいでおかしくなってしまっているのかもしれないが、この物語も、そんな目線で読めてしまってしかたがなかった。要するに百合百合なスラップスティックコメディということなのだが。主人公のいっぽうは、だめあね系(でも受け)で、もう一人は、妄想美少女系(でも攻め)。うーん、萌えますなぁ。てな感じ。これでツンデレだいたら完璧。みたいな。そんなバカな読み方をしても許せる、いや、そういう読み方を誘導されている、というのはやはり鯨統一郎にまんまと踊らされているのだろうなぁ。
ふたりの本筋の短編集も好きだし、そちらのほうが正しいあり方だとも思うのだけれど、このバカコンビの百合百合な!小説もまた書いてほしいなぁ、と本気で思う。そう思う自分はかーなり、毒されている。
すべての美人は名探偵である (光文社文庫 く 10-6)
著者:鯨 統一郎 |
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