先生と僕
相変わらず上手い語り口で一気に読むことができる良作であった。
ということを前提として、いつもの坂木司作品とは若干のテイストの違いがあるように感じた。とはいってもすべてを読んでいるわけではないので、たまたまなのかもしれないが、作者の作風は「日常の謎」をいうジャンルコンセプトをベースにしつつ、しかし実際に描いているのは、世話物的な物語であった。それはやもすれば説教臭さが鼻白むくらいの人情話であるといってもよいだろう。
が、本作においては、そのへんの登場人物たちの関係性をメインにすえるのではなく(もちろんしっかりと描いてはいるが)、ミステリーであることにより真摯に向かい合っているように感じたのだ。それは作品のコアとなる部分が、古典的ミステリーの紹介とオマージュに深くコミットしているからだろうが、その結果、作風にある程度の新鮮味がでるのであれば、それは好ましいことだと自分は思う。
といいつつ、若干の不満を云わせてもらうと、事件自体が、万引きや不法建築、盗撮などといった日常的な事件ではあるが、現代の生々しい面を切り出しているところだろうか。ホームズ役はコマシャクレタ(?)中学生であるというのが理由でもないのだけれど、もう少しやむにやまれぬ、というか、事件ですらない「謎」であるための謎であってもよかったのではないか、とも思うのだ。
また、推理は推理として、それはイコール真相でなくとも物語りは成立するわけで、名探偵は常に真相を明らかにできなくても、この物語においてはそれはそれでいいようにも思う。
ま、でもあえて云うならば、であって、これらば重大な問題ではない。些細な瑕疵ですらないかもしれない。あくまでも、重箱の隅をつつくと、というレベル。
ともあれ、数時間を有意義につぶすことができる本であった。
ちなみにあげられていたミステリー作品ですが、自分は3勝2敗でした。高確率なのかどうなのか判りません。あと、そうそう、ワトソン役は誕生日いつなんだ?
先生と僕 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |
| 固定リンク
最近のコメント