« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »

2008年1月29日 (火)

風の向くまま

さほどにのめりこむほどの完成度ではなく、さりとて凡作というには忍びなく、そこはかとなく面白かったという感想であった。

基本的にキャラクターで読む小説だと思う。それなりに真っ当で、でもどこかブルジョアの尊大さが抜けきれずそれを本人達も自覚していて、という、一見まともで、しかしよく考えるとちょっと屈折している主人公のロバートとリリーの兄妹の行動が物語を牽引する。活き活きと(というほど活発でもないのだけれど)した、探偵ぶりは微笑ましく楽しむことができた。

反面、ミステリーとしてはちょっと雑で、謎を解く鍵が途中一言もふれられることなく、謎の解明のときにはじめて登場するというのは、本格推理的には問題だろう。もっともこの小説はそういうタイプの作品ではないという認識で読んでいるので、自分としては気にはならなかったのだが。

興味深いのは、舞台が大恐慌時代であるということだろう。その当時の生活者の状況が作品の進行上、密接に(でもないか)関係していることもあり、深く描かれていて、なるほどミクロ的にはそういう感じの時代だったのだなぁ、と、これはけっこう勉強になった。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

風の向くまま (創元推理文庫) Book 風の向くまま (創元推理文庫)

著者:ジル チャーチル
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (2)

酒のほそ道(22)

相変わらず誘惑度が激しい作品ですよ。
案の定(?)読んだ次の日、湯豆腐とねぎま鍋を食してしまいました。いやぁ、酒が進む進む。危険です(笑)。
ここ最近、料理は鍋ばっかりだったので、ひとつちゃんとしたものを作りたくなりもしますな。といっても当然ながら酒の肴であることは云うまでもないのですがね。

もうひとつの興味津々料理、ミニ野菜もそのうち試すつもり。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!


酒のほそ道 22 (22) (ニチブンコミックス) Book 酒のほそ道 22 (22) (ニチブンコミックス)

著者:ラズウェル細木
販売元:日本文芸社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2008年1月22日 (火)

夢をかなえるゾウ

面白いといえば面白いのだけれど、いわゆる「物語」というとらえ方で読むべきではない本だなぁ、というのが直感的な感想である。

ストーリーの構造が、起承転結というクライマックスに向けて何らかの盛り上がりをみせ、そして大団円、という動き方ではなく、主人公と神様の(ネタ的には突拍子もないが)フツーの生活があって、そして別れがあっておしまい、という、(悪い意味ではなく)なんとも平坦な日常的非日常が描かれているのである。
類似的に考えるとドラえもんやオバQのように、突然現れた異人との共同生活というモチーフなのだろう。描かれるべきは二人の相棒的な関係である。だから前述の類似例と同様、個々日常の中でのエピソードはあっても物語としてのダイナミックなうねりはない。結末らしい結末は単なる別れだけであり、一抹の寂しさと余韻が肝となる。そういう物語であるのだ。

そんな全体構造の中で、本書の個性となっているのは、神様ガネーシャの強烈なキャラクターである。関西弁ということもあるのだけれど、ぱっと思いついたのは松本人志なのであった。いかにも彼が言いそうなアホな発言の連発で、なるほど、これは小説というよりもコントなのだろうと思うわけだ。ここでいうコントとはその場その場のシュチュエーションを基点として笑いを重ねていくということだが、そう考えると、「物語」としての脆弱さも頷ける。

笑いのガジェットとして日々の課題があるのだけれど、これがまたいちいち胡散臭く、しかしヘンに説得力があるのが可笑しいわけだ。作者はこの点をかなり作為的に笑いシロ誘導するよう書いており、なるほどウケるためのテクニックを活かしているなぁと思う。

そんなわけで、これをファンタジー小説として単純に読むと正直浅いなとは思う。しかしファンタジー色の強いシシュエーションコントとしては実に楽しい。ラストの余韻がホロリとさせ、終わりよければすべてよしという気にさせられてしまう。作者のテクニックにまんまと乗ってしまった訳だ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!


夢をかなえるゾウ Book 夢をかなえるゾウ

著者:水野敬也
販売元:飛鳥新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

2008年1月 7日 (月)

ミステリクロノ(2)

単純に濃度でみるならば、本作はかなり薄味なのではなかろうか。時間操作機械は登場するが、それがドラマとの連動する組み込み度合いが弱く、今回のエピソードの導入役程度でしかない。また、物語自体も二転三転するようなものではなく、一本調子であることは否めない。

というのは、ガジェットとしてのミステリーとしてみた場合の感想で、本作の謎とは基本的には叙述トリックなのである。まあ、かなり判りやすいので、決着点もかなり早い時点で推測できてしまうので、叙述ミステリーとしても甘めであるのだけれど。ただ結末において、さらなる真相(なのか想像なのかはわからないが)が明らかにされ、思ったよりもビターなエンドとなっており、なるほどなぁ、と思うところはあった。

本質的に(新)古典的なミステリーを志向している作者である。あまり早書きせずに、じっくりと煮つめた作品を発表していってくれるといいな、と思う。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

ミステリクロノ 2 (2) (電撃文庫 く 6-8) Book ミステリクロノ 2 (2) (電撃文庫 く 6-8)

著者:久住 四季
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2008年1月 4日 (金)

マリア様がみてる キラキラまわる

今回は瞳子の活躍の場が全然なくって、ドリラーの自分としてはかなり物足りない気分。ラストの祐巳×ドリルのツン会話がちょっとあるくらいだものなぁ。まあ、長々と続いてきたこのシリーズもそろそろ終着点が近く、祥子×祐巳の関係性にあらためてシフトしていくためのエピソードでもあり、そこらへんはしかたのないことかもしれない。ただ、個人的には祐巳の成長=ドリルとの新たな絆=そして人は続いていく。という感じの、おわりだけれどもおわりではない永遠性を、より希望しているので、もう少しドリルや、同級のつぼみとのエピソードを描いてほしいかなぁ、とないものねだりをさせていただきたい。

ところで、あれだけ思わせぶりだった祥子さまの謎の行動も判ってしまえばなんてことはない。この作者ってそういう肩透かし的な伏線が多いということは知ってはいたけれど、それにしても、もう少しはドラマチックなものを期待していたんだけどなぁ。ま、いいんですけれど。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56) Book マリア様がみてるキラキラまわる (コバルト文庫 こ 7-56)

著者:今野 緒雪
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

狼と香辛料(6)

今回は幕間。中休み的なエピソードで、事件らしい事件はなく、これまでのロレンスとホロの関係を再確認するとともに、今後の大きな流れのクライマックスに向けた目標設定を明確にしたといったところだろうか。

このままさらなる謎/目的/人物などが挿入されてこなければ、ペース的には、あと3,4巻で完結すると思われるが、実際、そのくらいできれいに閉じてほしいな、と個人的には思っている。ヘンにだらだらと続いてマンネリ化するよりは、きれいに幕を閉じてほしいわけで、なんかそれって男女の仲と一緒かも。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

狼と香辛料 6 (6) (電撃文庫 は 8-6) Book 狼と香辛料 6 (6) (電撃文庫 は 8-6)

著者:支倉 凍砂
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

さよなら絶望先生(11)

絶望した! アニメ化第2弾になるほど市民権を獲得する大衆迎合っぷりに絶望した!

とまあ、そんな感じですか? 作品中でもアニメやらマンガ誌編集システムに対し自家中毒的に毒を吐き続けているわけですが、どことなく前巻に比して強さを増したような。というか前巻が弱くなりすぎているだけだったのか。それを作者が自覚して反動しただけなのか。まあ、よく判りませんが。

いつまで続く生殺し。期待してます。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

さよなら絶望先生 第11集 (11) (少年マガジンコミックス) Book さよなら絶望先生 第11集 (11) (少年マガジンコミックス)

著者:久米田 康治
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »