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2007年12月30日 (日)

ナイチンゲールの沈黙

バチスタがめっぽう面白かったので手を出したのだが、びっくり。全然違う話になっている。前作が本格ミステリーの枠を保ちつつのエンタテイメントであるとするならば、本作は、キャラクター中心のミステリーエンタテイメントというべきであろう。

単純に登場人物が増えたということだけではなく、キャラクターに必ず二つ名がついており、それをもって特徴/能力/属性を補強提示しているというのが、まず一番大きな違いであろう。その手法は実はライトノベルにおけるキャラクター表現に近い。それがかろうじて通常小説に収まっているのはヘンな超常能力がないだけ、といってもいいかもしれない。
実のところ、このような表現を用いてキャラクターを立たせて物語を推進していく描き方をしている作品として筆頭に上げられるのは「京極堂シリーズ」だと思う。そういう視点で両作品を比べてみると、登場人物たちが右往左往しながら実に楽しそうに事件に向かいあっている(というか、事件を玩具にしている)雰囲気も、かなり近いものがある。

多分「ミステリー」として前作と同質の強度を保ちえるのは、よほどのラッキーがないとできなかったのだと思う。それはこの田口×白鳥シリーズに限らず、あらゆる作品についていえることだろう。そこで無理に同様の手法でシリーズを重ね、劣化していくよりは、少しずつ作品の求心力アイディア自体からキャラクター主体に方向転換することで、魅力の持続性を高めるというのは正しい判断であろうと思う。
もっとも、そのようなことができるのはもともと作品の登場人物に魅力があって、変化に耐えられるようになっていたことが前提であり、また作者の力量があってできることでもある。その点において、バチスタという作品はあらゆる方向性を内包していた作品だったのだなぁと思う。

さて、そんなこんなでナイチンゲールである。5W1Hがきっちり展開できていて作品自体は面白かった。事件発生まで間延びした感じもあって、多少、展開のバランスが悪いところもあるかなと感じたが、とにかく読み込ませるリーダビリティは健在で、ぐいぐいと読み進むことができた。

難点としては死体をバラすことについての禁忌感があまりにも薄すぎるのではないかという点だろうか。エクスキューズは一応書かれているが、ちょっと安易かなぁ。

ともあれ、次回作も当然楽しみにせざるを得ないことだけは確かだ。

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