芸術の売り方
ひさしぶりに読んだ学術系である。非常に面白かった。そして非常に手強かった。結局3週間くらいかかってしまった。まあその分、じっくりと書かれた内容を脳内で咀嚼することもできたし、それこそがこの本の正しい読み方なので、満足である。
芸術とひとくくりにしてしまうが、本書で対象とするのはクラシックや演劇を中心とする舞台芸術である。そして、それらの活動の場となる劇場の経営に関する検証と示唆が様々な視点からたっぷりと語られる。
前半のチケット単価と観客の来場意識に関する検証は実に刺激的。外部の人間がよくいうチケットを安くすればいいんじゃないかという意見に対し、現場のマネージャーが感じている高い安いが入場者の増減には必ずしもリンクしていないという現実とのギャップに、実際の現場検証という事実をもって明快に回答を出している。
また後半は、具体的な事例を元に現在の観客の意識変化にあわせての新しいネット活用や広告手法、会員制度のあり方についてアドバイスを出している。
実際のところ、海外の定期会員制度と日本のそれとはかなり違いがあるため、ここで書かれた内容をそのまま用いるわけにはいかないとは思うのだけれど、数値をもって検証し、実践に結び付けていくことが非常に重要だということは全世界に共通している。まあいっちゃなんだけどそれってマネジメントの基本なのだ。ただそれができているかというとまた別の話であり、そういう意味で、組織の意識改革に向けたいい勉強ができたな、と思う。
ところで、のだめでパリのオケで会員がどうのこうのと軽~く書かれていたエピソードについて、ようやくそういうことなのね、と納得しました。古典的な会員制度をとっているオケにとっては死活問題なんだね。なるほど。
芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング 著者:ジョアン シェフ バーンスタイン |
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