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2007年12月31日 (月)

芸術の売り方

ひさしぶりに読んだ学術系である。非常に面白かった。そして非常に手強かった。結局3週間くらいかかってしまった。まあその分、じっくりと書かれた内容を脳内で咀嚼することもできたし、それこそがこの本の正しい読み方なので、満足である。

芸術とひとくくりにしてしまうが、本書で対象とするのはクラシックや演劇を中心とする舞台芸術である。そして、それらの活動の場となる劇場の経営に関する検証と示唆が様々な視点からたっぷりと語られる。

前半のチケット単価と観客の来場意識に関する検証は実に刺激的。外部の人間がよくいうチケットを安くすればいいんじゃないかという意見に対し、現場のマネージャーが感じている高い安いが入場者の増減には必ずしもリンクしていないという現実とのギャップに、実際の現場検証という事実をもって明快に回答を出している。
また後半は、具体的な事例を元に現在の観客の意識変化にあわせての新しいネット活用や広告手法、会員制度のあり方についてアドバイスを出している。

実際のところ、海外の定期会員制度と日本のそれとはかなり違いがあるため、ここで書かれた内容をそのまま用いるわけにはいかないとは思うのだけれど、数値をもって検証し、実践に結び付けていくことが非常に重要だということは全世界に共通している。まあいっちゃなんだけどそれってマネジメントの基本なのだ。ただそれができているかというとまた別の話であり、そういう意味で、組織の意識改革に向けたいい勉強ができたな、と思う。

ところで、のだめでパリのオケで会員がどうのこうのと軽~く書かれていたエピソードについて、ようやくそういうことなのね、と納得しました。古典的な会員制度をとっているオケにとっては死活問題なんだね。なるほど。

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芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング Book 芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング

著者:ジョアン シェフ バーンスタイン
販売元:英治出版
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絵描きの植田さん

絵本というふれこみなのに全然挿絵がなく、それにしては紙質もいつもの新潮とは違っており、これはいったいどういう意図かと思いつつ読み進んだのだが、そうでしたか、そういうことでしたか。

シンプルに描かれた絵は、ただの挿絵などではなく、物語と密接に結びついており、正直してやられたと思った。

物語はいしいしんじらしい、寓話調のスタイルで語られる、ひと冬のささやかな出来事/奇跡である。悲劇的に進むのか大団円となるのか、途中まで、いやクライマックスまで判断できず、内心ドキドキしていたのだけれど、とりあえずよかったなぁ。

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絵描きの植田さん (新潮文庫 い 76-6) Book 絵描きの植田さん (新潮文庫 い 76-6)

著者:いしい しんじ
販売元:新潮社
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キャノン先生トばしすぎ

現在の記号的になりすぎたエロマンガ表現全盛の中においては、実に今様ではない作風だが、個人的にはペンに勢いがのっていて走る絵柄は非常に好きなのである。ストーリーも絵柄に輪をかけたかっ飛ばしっぷりで、そのドライブ感やよし。スラップスティック色の強いラブコメといっていいのではなかろうか。

後半のエロマンガ家論を内包する(比較的)シリアスな展開は、現在の状況を赤裸々に描くとともに情熱のほとばしりを感じて、ちょっと燃えたっす。

ただし、設定的にはヤバイっしょ。いやマジで。

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キャノン先生トばしすぎ キャノン先生トばしすぎ

販売元:楽天ブックス
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2007年12月30日 (日)

武林クロスロード(2)

前作に輪をかけてヒドイね(笑)。暴力表現然り性表現然りもうやりたい放題で、ティーンズのための小説という分野としてのライトノベルの限界に挑戦している、というか、すでにリミッタ振り切って完全にR18小説になっているですよ。はっきり云ってエロエロですよ。読んでいてセツナイデスヨ(笑)。

武侠が好きというのは十分に伝わってはくるけれど(多分確信犯的に)武侠という人間の能力を誤解しているところも健在。表現に現代的な単語が混じってきて雰囲気ポイントを下げてしまう文体も健在。まあそれもこの作品ならではの特徴とも思ってはいるので、割り切っていますけれど。

てな感じで、ああ、今回もヤッチャッテルなぁという感想なのだけれど、でも、だからといってダメな作品でもないんだよなぁ。なんかいいんですよ。怖いものみたさ的な感覚も多少はあるのかもしれないですかね。こうなったら行けるとこまで行ってみてください。

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武林クロスロード 2 (2) (ガガガ文庫 ふ 1-2) (ガガガ文庫 ふ 1-2) Book 武林クロスロード 2 (2) (ガガガ文庫 ふ 1-2) (ガガガ文庫 ふ 1-2)

著者:深見 真
販売元:小学館
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暴風ガールズファイト(2)

ライトノベル的なデコレーションをふんだんにしているのだけれど、それは表現上の演出であって、その根幹にあるのはしごくまっとうに熱血的なスポーツ青春小説である。そこには超能力や異世界人などの飛び道具など一切ない。ひたすらに真剣にラクロスに向き合う少女達がいきいきと描かれているだけだ。
だから本質的にはライトノベルというよりはジュブナイルなのだと思う。

実のところ自分はスポ根は嫌いなのだ。根性という言葉に代表されるような我がままな精神論で組み立てられた筋肉バカはなんとかしてくれと常日頃思っていたりもする。とはいいつつ、純粋に何かに打ち込む熱血的な姿に単純に惹かれてしまう面もあって、つまりはスポーツが嫌いなのではなく、そこに巣食う強制精神が嫌いなのだなぁ。
本作品はそんなところがないので純粋に楽しみ応援することができるのかもしれない。

さて、今回はチームがいよいよ本格的に始動し始めるところまでの物語となっており、今後お約束方々含めていろいろと楽しい熱血部活生活が描かれていくのだろう。かなり期待する。

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暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫 (さ3-5-2)) Book 暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫 (さ3-5-2))

著者:佐々原 史緒
販売元:エンターブレイン
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ナイチンゲールの沈黙

バチスタがめっぽう面白かったので手を出したのだが、びっくり。全然違う話になっている。前作が本格ミステリーの枠を保ちつつのエンタテイメントであるとするならば、本作は、キャラクター中心のミステリーエンタテイメントというべきであろう。

単純に登場人物が増えたということだけではなく、キャラクターに必ず二つ名がついており、それをもって特徴/能力/属性を補強提示しているというのが、まず一番大きな違いであろう。その手法は実はライトノベルにおけるキャラクター表現に近い。それがかろうじて通常小説に収まっているのはヘンな超常能力がないだけ、といってもいいかもしれない。
実のところ、このような表現を用いてキャラクターを立たせて物語を推進していく描き方をしている作品として筆頭に上げられるのは「京極堂シリーズ」だと思う。そういう視点で両作品を比べてみると、登場人物たちが右往左往しながら実に楽しそうに事件に向かいあっている(というか、事件を玩具にしている)雰囲気も、かなり近いものがある。

多分「ミステリー」として前作と同質の強度を保ちえるのは、よほどのラッキーがないとできなかったのだと思う。それはこの田口×白鳥シリーズに限らず、あらゆる作品についていえることだろう。そこで無理に同様の手法でシリーズを重ね、劣化していくよりは、少しずつ作品の求心力アイディア自体からキャラクター主体に方向転換することで、魅力の持続性を高めるというのは正しい判断であろうと思う。
もっとも、そのようなことができるのはもともと作品の登場人物に魅力があって、変化に耐えられるようになっていたことが前提であり、また作者の力量があってできることでもある。その点において、バチスタという作品はあらゆる方向性を内包していた作品だったのだなぁと思う。

さて、そんなこんなでナイチンゲールである。5W1Hがきっちり展開できていて作品自体は面白かった。事件発生まで間延びした感じもあって、多少、展開のバランスが悪いところもあるかなと感じたが、とにかく読み込ませるリーダビリティは健在で、ぐいぐいと読み進むことができた。

難点としては死体をバラすことについての禁忌感があまりにも薄すぎるのではないかという点だろうか。エクスキューズは一応書かれているが、ちょっと安易かなぁ。

ともあれ、次回作も当然楽しみにせざるを得ないことだけは確かだ。

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ナイチンゲールの沈黙 Book ナイチンゲールの沈黙

著者:海堂 尊
販売元:宝島社
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魔女の生徒会長

いつものように悩ましい成長痛を飛び道具的ネタでひねくれて描く作家の日日日としては、実にスタンダードな描き方をしているなぁ、と思った。たぶん、超常能力や魔法やその他諸々の非現実を(まあ、とんでもない生命力とか体力とかそういうはみでた部分は別にして)封印して作品を書いてみるというのが、自己課題だったのだろう。そしてそれはある程度成功しているように思う。ライトノベルと純文学の中間的色合いになっていて、いつもの日日日とはちょっと違う作品になっていたと思う。

読んでいて、これって「ハルヒ?」と思うところが随所に見られるのも面白いといえば面白かった。具体的にどこをどう引用して、ということではなく、なんとなく空気感のようなものを共有している、そんな感じなのだが、どうだろう。もっと明確な類似か所を見つけられた人がいたら教えて欲しい。

けっこう面白そうなシリーズになりそうである。

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魔女の生徒会長 (MF文庫 J あ 2-7) Book 魔女の生徒会長 (MF文庫 J あ 2-7)

著者:日日日
販売元:メディアファクトリー
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輪環の魔導師 闇語りのアルカイン

奇をてらうこともない実に王道のハイファンタジーである。

剣と魔法の世界は、描き方によっては陳腐なものになってしまう。これまで何度も云っていることだが、(PCゲームとしての)RPG登場以降、ファンタジーという物語は「異世界を創る」を描くことから、パラメータ的な追体験を文章化したモノへ、シフトしてしまった。すべての作品がそうだというつもりはないし、もちろん優れたファンタジー作品も発表されている。
しかし、総量の割合を考えると、後者の作法で生み出された作品が雨後の竹の子のように増えていることは確かであろうし、その結果、ファンタジーの地力を弱くしている。と自分は感じている。
登場人物設計も戦士や僧侶、魔道師など、既存の属性をそのまま使用し、なぜその職業があるのか、という根本的な問いかけをしないまま書いている作品は、趣味の範囲ならいいが、プロとしてはいかがなものかと思う。
せっかく世界を創る神なのだ。マップやキャラクターだけではなく、オリジナルの社会や歴史、政治や宗教を夢想してほしいと思う。

で。本作は、基本的には既存の世界観をモチーフにした王道的構造下にありはするのだけれど、誰しもが魔法を使える世界という(完全に独創的ではないにせよ)この世界独特のオリジナルの設定を基本とし、さらにそのアイディアが物語の推進力として機能する構造を組み立てていて、作者の、自分の世界を読んで欲しいという意思が伝わってくる。好感度は高い。素直に楽しんだ。

もっとも、物語の展開自体はかなりベタで、先が思いきり読めてしまう。のだが、とりあえずはシリーズ初巻、主人公達3人が旅に出るための序章だとして、そこは甘めにみたのだがどうだろう。とりあえず、次巻以降どう化けていくのか、あるいは失速するのか興味津々と云ったところである。

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ジョン平とぼくときみと

本来、このシリーズは短編のほうが合っていたのかもしれない。「魔法」という設定が、大きな物語に展開していくようなドラマティックなアイディアではないからだろうと思う。もちろん、悪い発想ではない。オリジナルの世界観を描き出している。しかし、あくまでも世界観であって、物語の推進力になる「謎」ではないと思うのだ。だからこそ、「魔法」という「存在」が「普通」にある世界における「日常の物語」であることが、この作品には相応しく、ゆえに短編に似つかわしい。と自分はそう思う。
てなわけで、本作は、いままでの続いてきた物語の前や後の時間での小さなエピソードを語っている。特に大きな展開もなく、登場人物たちの日常を描き、キャラクターを掘り下げている。それがこの小説の心地よさなのであると思う。淡々とした語り口とあいまって、平熱の物語としてちょっと独特な雰囲気を作り出している。

もっとも魔法と科学を逆転した世界というアイディアはいいんだけれど、今回、ちょっと判り易すぎるくらいに前面に出すぎていてちょっとあざとさを感じないでもない。もう少し科学もまたひとつの分野としてあるということを描いていくと、我々と同じ世界、でもちょっとだけ違う世界、という空気感がより浮き出してくるように思うのだけれど。今後、続いていく中で、どのように描かれていくのだろうか。

ところで、自分が一番気に入ったエピソードはやはり三葉の物語であるが、これってやっぱり魅了の魔法のせいだろうか?

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ジョン平とぼくと4 ジョン平とぼくときみと (GA文庫 お 3-4) (GA文庫 お 3-4) Book ジョン平とぼくと4 ジョン平とぼくときみと (GA文庫 お 3-4) (GA文庫 お 3-4)

著者:大西 科学
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はい、泳げません

はい、自分も泳げません。人間は必ず浮くからという虚言を信じられません。人は沈むのですよ、絶対に。プールならまだしも海だったら最悪。沈むだけじゃなくそのままどこかへさらわれていってしまうに違いない。水怖し! だから筆者の苦悩が実によく判る。

この本の一番の読みどころは実は本文ではなく、章間のインストラクターの一言にあるように思う。これが実に憎らしい。泳げない者の心がまったく判ってない人間の無意識の優越感が文中にしっかりと表現されている。少なくとも自分はそういうふうにしか読めなかったのだが、泳げる者からすれば、なんでそうひがみっぽく読むかなぁ、と思うのかもしれないとも思うし。身体能力/機能がもたらすこのディスコミュニケーション。もっともこれが本作の泳げる者と泳げない者の思考のズレを相対化して表現しており、そこが面白いなぁと思って読んだのも確かなんですけれど。

ともあれ、泳げない人は必読。読んで泳げるようにはけしてなれないけれど、泳げないことに対する共感を得ることだけはできると思う。ただ惜しむらくは筆者は「泳げない人」のままであってほしかったかなぁ。

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はい、泳げません (新潮文庫 た 86-1) Book はい、泳げません (新潮文庫 た 86-1)

著者:高橋 秀実
販売元:新潮社
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リアル(7)

言葉足りなで誤解を招くことも承知で云えば、もはや普通のスポーツマンガ。それも陳腐な熱血などではなく、理想と現実の中で悩みながら高みを目指そうとする者たちの物語。
もちろんそれだけではなく、車椅子バスケを中軸としてそこに関わるいろいろなジリジリと苦悩する人間模様が読み込ませるのである。

実際、いつもホロリとしちゃうんだよね。次巻までまた1年かぁ。待てないなぁ。

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リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス) Book リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス)

著者:井上 雄彦
販売元:集英社
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秘密の新選組(3)

大バカな一発ネタで史実の真実を抉り出し、クソ真面目な保守信者を斬るというマンガも、はや3巻目。相変わらずしどい展開である。切腹者も登場し、バカでノーテンキにみえる物語にも生臭い血の匂いが漂いだし、乱丈の毒がいよいよ本領を発揮しだした感じで、好きですなぁ。

次巻あたり、平助と山南の最期になるのかしらん。

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秘密の新選組 (3) (Fx COMICS) (Fx COMICS) Book 秘密の新選組 (3) (Fx COMICS) (Fx COMICS)

著者:三宅 乱丈
販売元:太田出版
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2007年12月18日 (火)

おまけのこ

ほのぼのとしつつどこか諦観じみた哀しみを醸し出す本シリーズ。定番的に読めるので、いまさらどこが面白いとか語ることも不要なのだけれど、ね。

前作今作と思ったのは、主人公一太郎を中心に話をまわすのではなく、脇役を主人公として語るエピソードが増えてきたことだろうか。今巻は特に、屏風のぞきや家鳴といった、サブのサブのキャラクター達が中心となる話がある。そのことによって、作品世界の広がりがでて、シリーズとしては妥当な成長をしているといえるのだが、しかし、反面、妖のキャラ化(シンボルとしての妖怪ではなくアイドル的なそれ。うーん、ちょっと上手く説明できないが)が、進むことにもつながっており、そういった萌えシロを増やすようなのは、ちょっとどうかな、と思わないでもない。もっとも、商売的にはそれもまた正しい選択なんだよなぁ。

(ま、そういう印象を持ったのはタイムリーにTVドラマがあったからかもしれないけれど)

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おまけのこ (新潮文庫 は 37-4) Book おまけのこ (新潮文庫 は 37-4)

著者:畠中 恵
販売元:新潮社
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PLUTO(5)

面白いといえば面白いが、いかんせんペースが遅くってそれまでの展開を忘れているのがきびしい。その都度読み返せばいいのだけれど、なんとなくそういう気分にならない話なんだよねぇ。

やはり完結後に一気読みしたほうがよいマンガなのかもしれない。

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PLUTO 5―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (5) (ビッグコミックス) Book PLUTO 5―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (5) (ビッグコミックス)

著者:浦沢 直樹,手塚 治虫
販売元:小学館
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2007年12月13日 (木)

ヒャッコ(2)

やっぱ面白いわ、コレ。

とりあえず主人公(達)がいて、準主役級(達)がいて、その中で繰り広げられるスクールデイズというフォーマットではある。でもそれらのレギュラーメンバーのみでの物語というよりは、毎回、新しい人物が登場し、人の輪が広がっていくというスタイルで、つまりは「トモダチ百人でっきるっかな」。要するに「ヒャッコ」なわけである。名は体を現しているのである。

もう少し、レギュラーメンバー固定でエピソードをまわし、世界観を深化してもらってもいいかもしんないんだけど、とも思うところもあるのだけれど、それはそれ、作品としてのコンセプトでもあるだろうし文句はいわないですよ。

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ヒャッコ2 FlexComix (Flex Comix) Book ヒャッコ2 FlexComix (Flex Comix)

著者:カトウ ハルアキ
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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2007年12月11日 (火)

古時計の秘密

それにしても明るい。牧歌的、というのともちょっと違うが、少年少女のための、児童文学としてのミステリーはかくあるべしというような物語であった。

最近(といってもけっこうな時間がたったが)人が死なないミステリーとして、「日常の謎」系というジャンルができているが、本来、そうそう人が不可解な死を遂げることなど、そしてそれに出くわすことなど、ないのである。もっと読み手が、現実味を持って読めるということを考えれば、このような謎になっているのではなかろうか。それがティーン向けならなおさらである。まあ、推理小説として若干の甘さはあるのだけれど、しかし本作(シリーズ)に関して云うのであれば、主人公の魅力が70%、推理小説としての魅力が30%みたいな、読み方でいいのだろうし、であるからこそ、きちんと役割を果たしているといえる。

気楽な読書としては実にちょうどいい物語だといえよう。

ところで、やはり年代を感じるなぁ、と思ったのは、ナンシーが閉じ込められた場面でのことだろう。現在においては、こういうシーンでは、ケータイの電波が届かないというエクスキューズが絶対に必要になってくる。もしかすると、本作の時代背景を知らないで読んだ人は「なんでケータイ持ってないのさ、車はバリバリ運転してるのに」なんて感想を持つに違いない。そういう時代を読む。というのも面白みのひとつではあるので、自分はその手のギャップも好きなんですが。

しかし、ナンシードルーってば、現実にいたら、でしゃばりで五月蝿いヤツ。なんて思っちゃうかも知らんなぁ。

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古時計の秘密 (創元推理文庫 M キ 5-1 ナンシー・ドルーミステリ 1) Book 古時計の秘密 (創元推理文庫 M キ 5-1 ナンシー・ドルーミステリ 1)

著者:キャロリン・キーン
販売元:東京創元社
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銀星みつあみ航海記 LOG.3

シリーズ完結。というか打ち切りだったのだろうか? 詳しい事情はよく判らないが、そのせいで今回はかなり先を急いで物語が進んだような気がする。後半部、バタバタと収束し、ちょっと慌しい。そのかわり前半部の設定提示に半分くらいページを割いており、そういった語り口のペース配分は、ちょっと雑かな、と思う。まあ、でもそれが重大な問題ではない。面白ければいいのだ。

とりあえず総括すると、明朗快活で波乱万丈なスペオペとしては、そこそこ成功している部類であったといえるだろう。キャラクターもいきいきと動いており、コンフリクトも重すぎず軽すぎず、速度感を持って物語をすすめるのにはちょうどよかったのではないか。

反面、トラブルの解決策については、あっと驚く新基軸などはなく、読み手の推測の範囲内で判ってしまい、そこらへんが凡庸にみえないでもないのはマイナスであった。例えば、本巻での水流システムなどは誰でも簡単に思いつく発想であり、物語を進める上でのハードルに対する思いもよらぬ解決策とは云い難い。もっとも、そのようなアイディアをこれだけの早い発刊ペースで考えろというのは酷な話であり、まあ割り引いてみてもいいのだろうとは思う。

これまでも何度となく云っていることだが、スペースオペラという活劇の本来は、擬似未来戦史ではない。国間の戦争を宇宙という場に移しただけの軍事ヲタクの妄想ではないのである。その点において、本シリーズは(微妙にかすってはいるが)、未来の世界の冒険を描いているといえ、そこが非常に重要なポイントであったし、自分が評価している点でもあった。
しかし、どうやら、現在の読者ニーズにおいては、戦史的なもののほうが受け入れられる傾向なのかもしれない。それはあるいがシミュレーションゲームの影響なのかもしれないし、単に、SF冬の時代をいまだ引きずっているだけのことかもしれない。いずれにせよ、超常能力バトルや妖魔退治といった現在のライトノベルのメインストリームではない、分野の小説はあまり求められていないのだろう。
SFの底辺を支えるべきパルプなSFは、日本においてはやはりダメなのかなぁ、アニメやマンガでの絵の持つ力を活字で代替することはできないのかなぁ、と思うのであった。

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銀星みつあみ航海記 LOG.3 (3) (角川スニーカー文庫 140-28) Book 銀星みつあみ航海記 LOG.3 (3) (角川スニーカー文庫 140-28)

著者:鷹見 一幸
販売元:角川書店
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2007年12月 5日 (水)

黒博物館スプリンガルド

藤田節顕在! 藤田節ワンパターン! まあ誉めているわけですが。物語の冒頭に登場する者は主人公ではなく狂言回し的存在で、かつ、主人公のバディであること。厭世的な主人公が実は非常に真っ当な人間で、為すべきことのために命をも捨てようとする事。悪は絶対的な悪であること。まさに藤田ならではの物語ですなぁ。

バネ人間の造形がいいですよね、まがまがしくて。

レトロでデカダンな十九世紀倫敦という舞台は藤田作品には合っているように思う。

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黒博物館スプリンガルド (モーニングKC) Book 黒博物館スプリンガルド (モーニングKC)

著者:藤田 和日郎
販売元:講談社
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