時をかける少女
昔、読んだような気もするが、もしかしたら読んでいないかもしれない。いずれにせよ、物語としては、それはもう映画やらなんやらで、それこそ無意識領域にまでいやというほど刷り込まれているので、当然のように判って(いるような気になって)いるわけだが、そこはそれ、あらためて原典にあたってみようというわけである。
まあ、あらためていうことでもないが日本ジュブナイルSFのスタンダードとなるべくしてなった作品なのだなぁ、と思う。話としてはあらがないわけではない。しかしそれは些細な瑕疵でしかない。それが主眼ではないからだ。そもそもSF的設定に基づく大きな動きのある話ではなく、出会いと別れと予感という小編である。であるからこそ、主人公、芳山和子の想いが主役足りえているのだろう。
これ以上、語るのは無粋なのかもしれない。といいつつ。この小説の舞台としては、これが書かれた時代である昭和40年代前半を想定するのが本来なのだろうと思う。しかし、読んでいる最中は、自分は自分の中学時代をそのまま連想していた。おそらく今、この小説を読む少年少女は、自分自身の背景をそのまま置くのではなかろうか。つまり、物語として古びていない。普遍的であるのだと思う。これは実はすごいことなのではなかろうか。時代の変化に左右されない物語(いつの時代にも通じるということではなく、いつの時代に当てはめても成立する、という意味で)があるのだということに、驚きを隠せない。
他の2編は、かならずしもそうでもないので、「時をかける少女」という作品が奇跡的な稀有な存在なのだろう。と贔屓目かもしれないがそんなことを感じたのであった。
ところで、同時収録「果てしなき多元宇宙」の投げっぱなしジャーマンのようなおわりかたって実にSFっぽくて好きですなぁ。
時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫) 著者:筒井 康隆 |
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