チーム・バチスタの栄光(上・下)
とにかく面白い。一気読みである。細かくみればいろいろとほころびもあるのだけれど、そのような瑣末事は気にならないくらいのリーダビリティである。
読んでいて驚いたのは上巻の主人公にして語り手である田口が実はワトソン役で、本当の探偵は別にいたことだろうか。それはおそらく上下巻に分かれた文庫ならではの印象でもあるのだろう。唐突に出現する奇人探偵の体であり、それまでに積み上げた実直(?)な調査から、逸脱しはじめる。もっと社会派っぽく事実と推理を重ねていって真相に至る物語になるのかと思いきや、推理というミステリーの原理原則はあまり強くなく、むしろ田口=白鳥の聞き取り調査によってあぶりだされる事象から結論までは一足飛びなのである。人物相関構成自体は、ホームズとワトソン(プラス、ハドソン夫人もか?)という実に古典的探偵小説のそれに準拠しているため、そう感じるのかもしれない。
実は謎ではなくキャラクターの魅力で読ませる小説なのだろう。第3章、事件解決後のリスクマネジメントのエピソードこそがこの小説の一番の読みどころではなかろうか、とも思う。各人が何を為したか、そのことがこの物語の魅力である。
まあ、正直なところ、せっかくの理系ミステリーなのだから、もっと推理そのもの、論理のアクロバティック自身を体感させてほしかったかなぁ、と思うところもあるのだけれど、ここまで堪能させてくれたら大満足です。
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599) 著者:海堂 尊 |
チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600)) 著者:海堂 尊 |
| 固定リンク
最近のコメント