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2007年11月30日 (金)

チーム・バチスタの栄光(上・下)

とにかく面白い。一気読みである。細かくみればいろいろとほころびもあるのだけれど、そのような瑣末事は気にならないくらいのリーダビリティである。

読んでいて驚いたのは上巻の主人公にして語り手である田口が実はワトソン役で、本当の探偵は別にいたことだろうか。それはおそらく上下巻に分かれた文庫ならではの印象でもあるのだろう。唐突に出現する奇人探偵の体であり、それまでに積み上げた実直(?)な調査から、逸脱しはじめる。もっと社会派っぽく事実と推理を重ねていって真相に至る物語になるのかと思いきや、推理というミステリーの原理原則はあまり強くなく、むしろ田口=白鳥の聞き取り調査によってあぶりだされる事象から結論までは一足飛びなのである。人物相関構成自体は、ホームズとワトソン(プラス、ハドソン夫人もか?)という実に古典的探偵小説のそれに準拠しているため、そう感じるのかもしれない。

実は謎ではなくキャラクターの魅力で読ませる小説なのだろう。第3章、事件解決後のリスクマネジメントのエピソードこそがこの小説の一番の読みどころではなかろうか、とも思う。各人が何を為したか、そのことがこの物語の魅力である。
まあ、正直なところ、せっかくの理系ミステリーなのだから、もっと推理そのもの、論理のアクロバティック自身を体感させてほしかったかなぁ、と思うところもあるのだけれど、ここまで堪能させてくれたら大満足です。

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チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599) Book チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599)

著者:海堂 尊
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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600)) Book チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600))

著者:海堂 尊
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2007年11月28日 (水)

時をかける少女

昔、読んだような気もするが、もしかしたら読んでいないかもしれない。いずれにせよ、物語としては、それはもう映画やらなんやらで、それこそ無意識領域にまでいやというほど刷り込まれているので、当然のように判って(いるような気になって)いるわけだが、そこはそれ、あらためて原典にあたってみようというわけである。

まあ、あらためていうことでもないが日本ジュブナイルSFのスタンダードとなるべくしてなった作品なのだなぁ、と思う。話としてはあらがないわけではない。しかしそれは些細な瑕疵でしかない。それが主眼ではないからだ。そもそもSF的設定に基づく大きな動きのある話ではなく、出会いと別れと予感という小編である。であるからこそ、主人公、芳山和子の想いが主役足りえているのだろう。

これ以上、語るのは無粋なのかもしれない。といいつつ。この小説の舞台としては、これが書かれた時代である昭和40年代前半を想定するのが本来なのだろうと思う。しかし、読んでいる最中は、自分は自分の中学時代をそのまま連想していた。おそらく今、この小説を読む少年少女は、自分自身の背景をそのまま置くのではなかろうか。つまり、物語として古びていない。普遍的であるのだと思う。これは実はすごいことなのではなかろうか。時代の変化に左右されない物語(いつの時代にも通じるということではなく、いつの時代に当てはめても成立する、という意味で)があるのだということに、驚きを隠せない。

他の2編は、かならずしもそうでもないので、「時をかける少女」という作品が奇跡的な稀有な存在なのだろう。と贔屓目かもしれないがそんなことを感じたのであった。

ところで、同時収録「果てしなき多元宇宙」の投げっぱなしジャーマンのようなおわりかたって実にSFっぽくて好きですなぁ。

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時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫) Book 時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

著者:筒井 康隆
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2007年11月27日 (火)

capeta(15)

熱い熱い。レース終盤で1冊ですよ。かなり燃えたなぁ。まあ、物語としては全然進んでいないんだけどね。

自分はマンガをじっくり読むタイプなので1冊読むのに大体1時間程度かかるのだけれど、本巻が20分程度で読んでしまった。その気になれば10分きるんじゃないのか? まあ読書のファステストラップきざんでもどーでもいいんだけどさ。

次の展開が楽しみである。

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capeta(カペタ) 15 (15) (講談社コミックスデラックス) Book capeta(カペタ) 15 (15) (講談社コミックスデラックス)

著者:曽田 正人
販売元:講談社
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君に届け(5)

相変わらずピュアですなぁ。物語が恋愛モードにシフトしてきているのだが、自分がこのマンガに求めるものは恋愛ではなく友情なもんで「ちょっと違うぞ」と思うところもなきにしもあらずなのだが、まあ現代の高校生を描くにあたって恋愛は避けてとおれないのだろうということも認識はしている。ならば、単に恋愛を描くのではなく、そのことによる友情のありようを描いてほしいな、と。で、いまのところそれは成立しているのかな、と思う。
貞子が風早とできちゃったらその時点で自分は卒業というところですか。

まあ、少女マンガとしては恋模様をテーマとするのは王道なんですけどね。

それにしてもやのちん、カッコイイぜ。

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Book 君に届け 5 (5) (マーガレットコミックス)

著者:椎名 軽穂
販売元:集英社
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さよならピアノソナタ

本当に普通に青春小説なのである。超人的な能力もなければ異世界からの侵略もない。あるのは、ただ音楽に対する才能と想いだけである。しかも、登場人物たちの関係性も友情以上恋愛未満のいまどきの物語とは思えないくらいのピュアっぷり。もちろん、それは本作のテーマとドラマツルギー的にもっとも適切な選択であり、その判断は正しいのだけれど。まあいまどきの小説としては珍しいともいえる。

たぶん、話としては(いい意味で)実に平凡で小さな物語であるため、日常の積み重ねが重要なファクターである。作者は、そこらへんの「フツウ感」を描くのが実に巧みで、だから話が陳腐なものとして終わっていないのだろう。

語り口としてもうひとつの特徴を挙げるなら、登場人物が等身大に近いということである。常日頃、小説やマンガを読んでいて思うのは、描かれる人物像の設定年齢とメンタリティ年齢のギャップであるのだけれど、この作者は比較的マッチングしていると思う。だからこその物語としてのリアリティがあって、血肉の入った作品となっているのだと思う。この資質は実はけっこう稀有な才能であり、今後が実に楽しみだ。

最後に一言だけ付け加えるが、この作品は1冊で完結しているので、つづきは出さないでほしい。これは本当に切実にお願いしたい。

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さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6) Book さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6)

著者:杉井 光
販売元:メディアワークス
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ツァラトゥストラへの階段

またもゲームの物語である。まあライトノベルというジャンルでは影響を及ぼしあう同業他社として、ゲームというものは切っても切れない関係としてあるため、多かれ少なかれライトノベルはゲーム的要素を含んでいるのだが、この作者のように、ゲームシステム自体を直接的に取り込む作品は実はそんなに多くはない。

マンガで云えば「カイジ」や「ライヤーゲーム」などといった作品はあるが、やはり数としては多くなく、システムとプレイヤーという関係を対象とするのはレアなのだろうと思う(もっともマージャンなどの既存のシステムをそのまま用いる作品は多いが、それはシステム自身への興味とは違うように思うのでここでは別のものと考えたい)。

さて、今回も基本的にはゲームであり、その点では新鮮味に欠けるともいえる。ただし、前シリーズでの訳も判らず投入された物語とは異なり、自ら望んで参加するというありようが異なるといえはそのとおりである。前作は映画「キューブ」により近く、本作は上述の作品群に近しいというところだろうか。自分としては、けっこう楽しんで読んでしまったので、特に今のところ不満はない。今後の展開が楽しみであるとだけ、今はいっておきたい。マンネリせずに上手くパッケージを閉じてもらえれば、と思う。

ところで、作中に本作が「扉の外」シリーズの前史的ポジションなのかと思わせるような設定があるが、個人的にはそれはやめておいたほうがいいように思うなぁ。

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ツァラトゥストラへの階段 (電撃文庫 と 8-4) Book ツァラトゥストラへの階段 (電撃文庫 と 8-4)

著者:土橋 真二郎
販売元:メディアワークス
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2007年11月22日 (木)

スプライトシュピーゲル(3)

なぜかオイレンよりも読みづらい感の強いスプライト。その感触はいまでも変わらずだが、慣れてきたせいか、そこそこに楽しんではいる。

このシリーズの特徴に状況がみえにくい。ということがある。少なくとも自分はそう感じている。誰が、何を、どうしているのか、は、しっかりと伝わっているのだけれど、その背景や舞台の周辺状況、が、読み取りにくいのだ。なぜ、なのかはよくわからないのだけれど。もしかすると、この文体における状況描写がとりづらい、というところがあるのかもしれない。そうでないかもしれないけれど。単に自分との相性の問題なのかもしれないけれど。

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スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10) Book スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)

著者:冲方 丁
販売元:富士見書房
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オイレンシュピーゲル(3)

なんか文体にも慣れてきたのか、比較的読みやすいといえば読みやすくなった気がする。慣れてきたのは読者(つまり自分)だけではなく、作者もだと思うんだけれど、そういうわけで需要供給ともにコンセンサスができつつあるということである。ここまで、3冊分(スプライト込なら5冊)。ずいぶんとかかったなぁ。

話的には、いつものエスピオナージ近未来アクション。思わせぶりな策謀陰謀入り乱れてという雰囲気だが、大きな物語というよりは、組織の「犬」のサイバーSFアクションがやはりメインなのだと思う。今回、その傾向をより強く感じた。

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オイレンシュピーゲル 3 (3) (角川スニーカー文庫 200-3) Book オイレンシュピーゲル 3 (3) (角川スニーカー文庫 200-3)

著者:冲方 丁
販売元:角川書店
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スプライトシュピーゲル(2)

オイレン(2)と読み比べると事件の全貌がより鮮明になるのだろうな、と思いつつ、とてもじゃないがそんな気にはなれないのは、やはりこの独特の文体が読みづらさを助長しているからだろう。一気読みを阻むというかね。特に長編というシステムだと、展開を覚えておかなくてはならないのだけれど、頭に入らないことおびただしく、けっこうツライ。平文で書かれていたら、たぶん面白いエスピオナージ系近未来アクションとして楽しめたんだろう。

もしかして、老化? オワッテル?

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スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9) Book スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)

著者:冲方 丁
販売元:富士見書房
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2007年11月21日 (水)

私立トアール学園2年☆組物語(1)

作者のバカテンション爆発である。とにかく現在の萌えシロを恥じらいもてらいもなくだって好きなんだもん面白いんだもん的割りきりで投入し、ノリとイキオイだけで突っ走っている。そんな感じのマンガである。かなり好きである。楽しいしね。

(マンガというよりもアニメのほうの)うる星的スラップスティックマンガの一連の系譜の中で、先行作品へのリスペクト(?)引用をふんだんに行うというのは、ぶっちゃけ同人誌的なつくりではあるのだ。けれど、そこは作者の妄想力と作画力というダブルタイフーン的ねじふせられかたで妙に納得させられてしまったのは、結局同じ穴のムジナであるせいだろうか。だって好きなんだもーんという共犯構造ということだ。

まあ、この手の作品は実はけっこう出回っているのだけれど、絵柄として、2次元的ないわゆる萌え系ではなく、肉感的立体的な画風が自分は非常に好きであり、だからなおさらに、いいなぁ、と思っているのかもしれない。てなわけで今後も楽しみである。

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私立トアール学園2年☆組物語 1 (MFコミックス) Book 私立トアール学園2年☆組物語 1 (MFコミックス)

著者:石川マサキ
販売元:メディアファクトリー
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魔法使いのたまごたち(3)

結局、大きな盛り上がりもなく終了してしまった本作品。後半の、というか最終巻におけるたたみかけるかのような駆け足的展開は、打ち切りのにおいを感じずにはいられない。

実際問題、物語としてあまり強い魅力が感じられなかったのは事実である。それは語るべきものに対する立脚点があいまいであったせいではなかろうか。キャラクターの成長や友情の物語的ではあるが、どうも表層的で伝わってこない。ステレオタイプならばそれなりのエコーもあるはずなのだが、それも感じられなかった。おそらくは思わせぶりが強すぎて、状況としての友情の物語に集中できなかったせいではなかろうか(もっとももっと長く続く中で回収するつもりだったのだろうが)。
また、裏で語られていた事故事件についても生かされずバタバタと落としどころに収めた感じがある。もっと要所要所で展開すればよかったのでは、とも思うが、まずはメインキャラクターの親和を高めることに注力した、というのは判るので、そこらへんの判断は難しいなぁ、と思うのだった。

総じて、物語としてストーリー展開計画が弱く、見切り発車だったということなのかもしれない。絵ヂカラだけではどうしようもないことも多いのが、マンガなんだなぁ、と思うのであった。

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Book 魔法使いのたまごたち 3 (3) (シリウスコミックス)

著者:石川 マサキ,雑破 業
販売元:講談社
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2007年11月20日 (火)

クダンの話をしましょうか

※注意! 物語の謎に触れる記述があります。

面白いといえば面白い。ただし若干の違和感もないわけではない。
叙情的な印象の物語ではあるのだけれど、そこに快楽的要素に基づく自殺教唆という悪意が平然とあり、作品としてのバランスを欠いているように感じたのだ。全体を覆う雰囲気はクダンという哀しいさだめを負う者と人間との出会いと別れといういかにもウェルメイドな設定に相応しい展開であるだけに、後半のそれはいかにも不自然な印象なのである。
おそらくそれは作者自身意識してはいないのではないだろうか。ライトノベルだから、というと色眼鏡で見てしまっているような書きぶりになってしまうが、このジャンルは比較的そういう物語のムードパッケージングが弱いように思う。それは現実的にはどうなのか、という検討よりも、先行となるマンガやアニメやラノベなどの同業他社的作品群の描く世界をベースにして書かれ、結果、架空に架空を重ね縮小再生産の中で現実との乖離がより顕著になっていく。そういう構造が往々にして見受けられる。
だからラノベはいかんということではなく、そういうつくりの作品が楽しい場合もけして少ないわけではない。ただ、もっと書きようによっては、おさまりがよくなるのになぁと思う場合もあるのだよ、ということがいいたいわけだ。

本作においては、前述の殺伐感がもっとこなれていればクダンの哀しみが浮き彫りにされ、よりエモーショナルに泣ける話になったのではないかなぁ、と思ったわけである。

それにしても牛人間のクダンを少女として描いてしまうという設定には実はビックリなんですよね。まあその点については思ったよりもうまく(?)処理されてこれまたびっくりなんですが。

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クダンの話をしましょうか (MF文庫 J う 3-5) Book クダンの話をしましょうか (MF文庫 J う 3-5)

著者:内山 靖二郎
販売元:メディアファクトリー
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神様が用意してくれた場所(2) 明日をほんの少し

スーパーナチュラルな要素を多分に含んだ物語であるにもかかわらず、物語としては非常に等身大である。これは登場人物が潜在的能力としてはスーパーであっても、それを発揮して普通以上に何かを為そうとするのではなく、(表現に語弊があるかもしれないけれど)あくまでも普通の人としての常識的な行動をとっているからではなかろうか。

であるがゆえに、かどうかは判らないが、普通に青春小説的な側面が強くなり、読後の清涼感につながっているように思う。

個人的にはもっとフツーでいいのではないかとも思うのだが、ともあれ奇をてらうことなく淡々と物語を紡いでいってほしいシリーズである。

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神様が用意してくれた場所2 明日をほんの少し (GA文庫 や 1-2) (GA文庫 や 1-2) Book 神様が用意してくれた場所2 明日をほんの少し (GA文庫 や 1-2) (GA文庫 や 1-2)

著者:矢崎 存美
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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2007年11月19日 (月)

東京大学応援部物語

個人的にはどうしても楽しめなかった。というのも、やはり時代錯誤的全体主義による応援部というシステムが、自分のスタイルである超個人主義とは真逆であり、感覚/感情/観念として絶対に受け入れられないからだと思う。もちろん文中にもその点に関する問題提起は幾度となく繰り返され、また登場する人物達もそれに悩んでいるのだということは読み取れる。故に理屈としてはその必然、あるいは必要悪としての存在である事は十分理解できる。しかし、そういうもんだろうなと思っても、それを受け入れられるかどうかは別である。

というわけで、この人たちヘンだよ。という意識が前面に出てしまって、読んでいても楽しくなかったのであった。結局、自分との相性の悪い本であったというしかない。うーん、なんとも残念である。

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東京大学応援部物語 (新潮文庫 さ 53-4) Book 東京大学応援部物語 (新潮文庫 さ 53-4)

著者:最相 葉月
販売元:新潮社
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ARIA(11)

いつものとおりの物語。と思いつつ実はけっこうターニングポイント的な巻であった。これまで謎だったアリスのシングル問題しかり、灯里とケットシーとの関係しかり、いままでと同じではない=大人への変化=モラトリアム期のおわり、を描いている。つまり、物語としての終着点に向けて動き出したということである。

この物語がどこで終わるのかは判らない。3人が一人前のウンディーネになって終わる。新たな3女神と云われるようになって終わる。灯里の元に次の世代の見習いが来て終わる。どれも想定され得るし、どれでもいいようにも思う。いずれにせよ、きれいに着地してほしいなぁ、と思う次第。

ところで、この巻。絵柄が若干変わったように思えた。具体的にはまつげの描きこみ方などが、今までよりしっかり濃厚になっているように思う。昔のを読みかえしていないので、勘違いかもしれないけれど。

さらに。実際にヴェネツィアに行ってみたが、ウンディーネさんはいませんでした。むさいオヤジ船頭ばかりなり。当たり前か(笑)。

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ARIA(11) (BLADE COMICS) Book ARIA(11) (BLADE COMICS)

著者:天野こずえ
販売元:マッグガーデン
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2007年11月16日 (金)

のだめカンタービレ(19)

ここ数巻、なんとなく沈滞ムードのあったのだめではあるが、今回はややはじけていた感があった。酔払い話(所長っ!)のせい? それとも峰のせい? たぶん、バカの開放という点が、抜けた雰囲気になっていたのだろう。

ストーリー的には、それぞれの現在と予感を描き、いよいよラストスパートへといったところだろうか。

ところで、ちょっとどうなのよという点がある。千秋とのだめの関係ですよ。いや別に付き合おうがどうしようがそれはそれでいいんだ。基本的に少女マンガだし。ただね、のだめの面白さって、千秋=ツンツン、のだめ=デレデレ(兼ヘンタイ)にあると思うのね。今回、千秋がデレに走ってしまっていてそれは遺憾のではないか、と。

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のだめカンタービレ #19 (19) (講談社コミックスキス) Book のだめカンタービレ #19 (19) (講談社コミックスキス)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
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2007年11月 8日 (木)

ラルΩグラド(4)

最後までパッとしなかったのは、やはりあまりにも類型的な物語に終始してしまった点だろう。舞台設定をファンタジーにとり、あとは、ジャンプ特有の友情努力勝利に集約される順列組み合わせのストーリー構築。その結果、どこかで読んだことのあるような平凡な話でしかなくなったのではなかろうか。今日び、マンガやライトノベルで嫌になるほど繰り返されているモチーフであるため、よほどの新機軸を導入しない限り読み手の欲求に応えるのは至難の技ではあろうし、そのハードルをどう越えるかがクリエイターの醍醐味でもあろう。それを避けて定型化された既存のシステムをなめるだけにしたという事実は読者もお見通しになるのは必然で、双方吸引力を持たぬままズルズルといってしまうということになる。

見どころは、小畑の超絶画力であるのだが、あまりにも細かすぎてコミックスサイズでは再現しきれていない。正直読みにくくなってしまっている。でき得るならば大判サイズのコミックスに、できないならせめてA5の大人マンガサイズで、発刊してほしかったなぁ。とは思う。

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BLUE DRAGONラルΩグラド 4 (4) (ジャンプコミックス) Book BLUE DRAGONラルΩグラド 4 (4) (ジャンプコミックス)

著者:鷹野 常雄,小畑 健
販売元:集英社
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パノラマデリュージョン(2)

今巻は話が動くというよりは、キャラクターを掘り下げる巻でした。単発的なエピソードの積み上げですね。そんな中でも新キャラ登場等、次回への布石もあり、以下乞うご期待といったところ。

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パノラマデリュージョン 2 (2) (アフタヌーンKC) Book パノラマデリュージョン 2 (2) (アフタヌーンKC)

著者:小原 愼司
販売元:講談社
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2007年11月 7日 (水)

イガジョ!

冒頭の説明がこの小説の魅力のすべてである。そう断言する。以下はすべて付け足し。極論すれば、なくてもよし。それが率直な感想である。

バレーボールの発生起源に関する強烈に破天荒な設定は、かなりよい。ヘンに萌えに走ったライトノベルにするのではなく、起源から普及、盛衰の歴史論文書としてパッケージングすることができたのなら、今年のベストテンに入ったかもしれないのに残念なことである。もっともそんなバカな本を買うような奇特なバカは少ないだろうしマーケットして成り立たないのも当然理解はしているつもりだ。ただ自分がそんな本を好んで買いたいバカであるというだけのことである。

閑話休題。ストーリーとしては実に王道、お約束で、だから展開も伏線も幕引きもすべて想定範囲内。まあどう膨らませりゃいいんだよという気もするし、だからこその王道構造ということでもいいのかもしれないが、もう少し独創性があってもいいのになぁ、とは思う。
その独創性としてあるのが魔球なのかもしれないけれど、あれは(山田風太郎系?)忍法であって、魔球じゃあないのでは? レトリックでしかないのかもしれないが、普通に忍法ありのゲームであるとエクスキューズして、あとは忍法合戦でもよかったように思う。

まあ、はじめよければすべてよし的出オチの面白さはあったので、とりあえず後悔はしていない。

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イガジョ! (富士見ファンタジア文庫 109-17) Book イガジョ! (富士見ファンタジア文庫 109-17)

著者:瀧川 武司
販売元:富士見書房
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暴風ガールズファイト

一見、ライトノベルのようではあるが、実は至極まっとうなスポーツ青春ジュブナイル小説であった。設定はややステレオタイプではあるのだけれど、ヘンに萌媚びたところがなく、本当に普通に純粋に、熱い学生スポーツ小説として楽しめたのである。

まあ、女子校という設定上、あるいはラクロスという設定上、どうしても「マリ見て」や「プリキュア」を類推してしまわざるを得ないのが、現在の読者の共通基礎知識であるわけだが、本作はそれをも逆手にとって、例えば冒頭の書き出しがマリ見て調であったり、登場人物のひとりプリキュア好きの腐女子であったりと、様々な手法でもってあえてパロディ的に作中に取り込んでいる。そのことにより、単なる縮小再生産作品ではないポジションを自ら設定したといえるだろう。
で、そんな引用対象を選択するという点においては、本作はライトノベルとしてのカテゴリーになるのかもしれない。

まあ無理やりにジャンル分けをする必要などはなく、単純に熱血なストーリーに燃えてみればいいだけで、自分としてはかなりお薦めできる作品だったなぁ、と思うわけである。

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暴風ガールズファイト (ファミ通文庫 さ 3-5-1) Book 暴風ガールズファイト (ファミ通文庫 さ 3-5-1)

著者:佐々原 史緒
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ねこめ~わく(5)

あいも変わらずぼんやりした話であることよ。ストーリーもあってなきが如し。おそらく猫満載という設定により、創作欲求が充足してしまって、物語性をオミットしてしまっているのではなかろうか。もちろん作者だけではなく、読者側もそう。供依存完成である。でもいいのだ、それで。(いい意味で)この話に多くは求めてなんかいない。いつまでも続くぼんやりユートピアであればいいのだと思う。

(と書いてみたが、少しずつ話自体も動いちゃあいるんですがね)

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ねこめ~わく 5 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) Book ねこめ~わく 5 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

著者:竹本 泉
販売元:朝日新聞社
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2007年11月 5日 (月)

理由あって冬に出る

学校を舞台とするミステリーは、良作になることが多いような気がする。それは、主人公達が学生であり、ゆえに若者ならではの悩みや成長が物語と表裏一体となるからではなかろうか。逆にみれば、それらがないと、舞台を学校に設定する必然がなく、物語としてフツーのミステリーでしかないことになってしまうということである。もちろんフツーのミステリーであって悪いというわけではない。しかし、いい意味での「若さ故の過ち」を抱えた学生達の物語は、それだけで十分に魅力を持っているのだ。いわんやミステリーにおいて。である(もちろん買いかぶりすぎである)。

さて、本作。なんともまあ健全で清清しいことか。謎はそんなにトリッキーでもパズラーでもなく、また日常の謎系というほど日常にどっぷり漬かってもおらず、軽妙である。登場人物たちもまた適度にエキセントリックで愛すべき者たちばかり。構造としてはきっちりと名探偵役が存在し、助手役が語り手で、といったホームズタイプのミステリーで、正直、あまりにも奇をてらわない王道、というか直球な設定にすごく新鮮味を感じてしまった。
ミステリーでもあるが、部活小説(より厳密に云えば部活棟小説か?)ともいえるだろう。

個々の展開については、本作の真相に言及することになってしまうのでここでは語らないが、中盤あたりで明かされる解答とその語の展開については、ちょっと泣けた。現実社会からすればそれは幻想かもしれないけれど、ささやかな夢くらいみても罰は当らないよね。

ところで、本作を読んでいて感じたのだが、本作が設定的にも展開的にも実にライトノベル的な構造になっているにも関わらず、明らかに一線を隔している感覚があった。よくよく考えると登場人物に対する具体的な描写(例えば、ショートヘアで、とか、メガネをかけていて、とか、小柄だけどグラマーな、とか、いかにも萌シロ励起する記述。もちろんこれは男子についての描写もそう)が、ない。ところどころ描かれる手がかりから想像するしかない。つまりキャラクターに頼らない物語であり、また、そのくらいは文中から読み取れるでしょ、という意気でもあろう。でも本来、小説における登場人物ってそういう存在だと思うのだ。そして仮に萌えるとしても、この程度の情報量で十分だとも思う。昨今のライトノベルは安易に萌シロを提供しすぎているのかなぁ、とそんなことも考えてしまうのであった。

いずれにせよ、本作はお勧め!

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理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1) Book 理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)

著者:似鳥 鶏
販売元:東京創元社
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だめあね☆☆☆

購入したのは早かったが、読むまでにこれほど時間がかかるとは。そのわけは、最終巻ってことで、なんとなく勿体なくて後回しにしていたせいだったりする。こんなアホな(誉め言葉)お話に読むのが惜しいってこともないんじゃないの? という人のほうが多分多いと思うのだけれど、自分にとっては、大好きな!シリーズだったので、しかたがない。好きになっちゃったらしかたがないじゃない。ということです。

さて、本作。最終巻らしく、これまでのバカ暴走っぷりから多少なりともマジな展開が入っています。それが作者のテレもあるのかもしれないし、商売として単にバカだけじゃあ本気でダメでしょ、ということもあるのかもしれない。なんとなくカッコつけたほうが収まりがいいよね、という思考も気持ちとしては十分に判る。べつにそれはそれでいいんです。なんとなく最後までバカバカしいお笑いで終わるのもいいかなぁ。と思っていたせいで、ちょっと驚いた程度。
おそらくはこの作者の本質的な資質としては暴走妄想系ではなく、そこそこに理詰的な構成を考えるタイプなのだと思います。だからこそ、単なるおバカな話だけでは息切れしてしまう。それがシリーズ短命の理由なのかもしれません。

それにしても、陽気で積極的。でもとてつもなく的外れな「ダメ姉」というコンセプトは実によかった。マジレンジャも終わって久しく、さびしい限りです。

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だめあね☆☆☆ ウェディングベルはアイのため!? (ファミ通文庫 か 2-4-3) Book だめあね☆☆☆ ウェディングベルはアイのため!? (ファミ通文庫 か 2-4-3)

著者:葛西 伸哉
販売元:エンターブレイン
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2007年11月 1日 (木)

銀星みつあみ航海記 LOG.2.0

さして文章巧者でもない、有体に云えば文章力の点では下手な作家ではある。にもかかわらず、思わずホロリと男泣きしてしまうのは、泣かせるツボを本能的に判っている作家だからなのだろう。一気読みに楽しむことができた。

ただ、本作に関しては、アイディア的には小粒で広がりはあまりない。これまでの危機また危機、それを運と機転で乗りきるという鷹見ならではの展開にはなっておらず、大きなハードルをひとつだけ設け、それにどう(事前の準備も含め)対処したかだけになっている。もともとページ数も多くなく、妥当といえばそのとおりなのだけれど、ちょっと浅いかなぁと思うところはある。

あとがきで作者自身が語るとおり、スペオペとは基本的に冒険活劇である。自分も活劇としてのスペオペを愛好している。だからこそ、似非スペオペ、似非SFの架空戦記モノが大嫌いなのだ。戦記モノとは、一見空想科学小説の体を成しているが、その実、単なる軍事モノ戦争モノが好きな人間のたられば妄想でしかない。そこにはラブ&ピースがない。そんなものは読みたくもない。
というわけで、自分は「でたまか」も読まず嫌いなわけだ。
だからこそ、スペオペとしての矜持をいくばかなりとも持ち、持とうという意思を感じる本作があってよかったな、と思う。

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