幽霊列車とこんぺい糖
もっと叙情派ファンタジーかと思ったら、まったくの大違いで、トラウマ囚われまくりの登場人物たちが悩み苦しみまくる鬱屈した話であった。そしてだからこそ面白かったともいえるのだ。
近親関係者との関係性の欠落によるジェンダー特有の悩みを主眼としており、卑近な見かたで読むと、近親愛と同性愛の成就による自己解放の物語となっている。まあ(「マリ見て」のような楽天的な)単なる百合小説ではないが、個人的にはタナトスと常に隣り合わせの危うい生というものについてはかなりシンパシーを感じずにはいられず、そう意味において、本作はリアリティ(現実的という意味ではない)があると思うのだった。
物語の決着点として死に至らなかったのはライトノベルとしての最低限のモラルであったのかもしれないが、せめてもの救いを描くための(ご都合主義的)必然ではあろう。そのくらいの幻想は必要だし、そうでなければ重過ぎる。
幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫 67-3) 著者:木ノ歌 詠 |
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