響鬼探究
平成ライダーシリーズはどれも概ねフォローしてきてはいるが、響鬼に関しては思い入れがかなり違う作品であった。それは誰もが語っているとおり、魔を鎮めることを生業とする集団の物語の(加算の意味の)和の魅力であり、殺伐としていない真っ当な人間関係が構築する(調和という意味の)和の魅力であり、鬼や魔という日本的風土に由来する設定や画面に描かれる筆文字が成す(日本的という意味の)和の魅力である。
そんな響鬼について語られたのが本書である。それは解説書であり研究書でもあるのだが、なによりこれはラブレターなのである。だからそこに書かれた文章には、あふれんばかりの、そして少しだけの悔しさをもっての愛情があふれている。
冒頭のやや一般論的な響鬼の魅力はさておき、自分にとっての一番の魅力は少年の成長の物語であった。明日夢が悩み、考え、そして導かれながら、自分で答えを出していくまでになる成長の物語。だからこそ後半での悶々とした展開は成長の方向性が「鬼になる」という単純な選択肢になってしまったことに違和感を覚えた。
であるからこそ、最終回の幕の閉じ方はは、初期の響鬼の方向性に回帰していると思ったし、観る側の気持ちの整理がついたな、と感じたのであった。
振り返って自分はヒビキさんたちのような真っ当な大人であるのだろうか。次代のよき手本足りえているのだろうか。いや全然ダメだ。とあっさりと敗北宣言を掲げてしまうようなダメ人間ではあるが、そんな大人に対しても「鍛えてますから」と云えるようになりたいと思わせる。そんな魅力を持つ作品であった。
ともあれ、そんな共感を持った作品への思いを共有するための本でもあるということだ。必読。
(それはそれとして、純粋に読み物として面白かったのは対談のパート。やはりプロの言葉には重みがあるのだなぁ)
響鬼探究 販売元:国書刊行会 |
| 固定リンク
最近のコメント