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2007年7月13日 (金)

海をみあげて

空に浮かぶ鯨というシチュエーションには、惹かれるものがあるのだろうか。(厳密にいえば宇宙なんだけど)「ジョナサンと宇宙くじら」や「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」などはいい例だが、けっこうな数があるように記憶している(ジュディマリの「くじら12号」はタイトルだけだったか?)。おそらく、空なり宇宙なりと大洋との連想があって、またクジラという大きな生物への畏敬の気持ちも相まって、ということなのだろう。

で、本作。実のところクジラが泳ぐ空という設定は、それ自体を解明すべき謎としておらず、そのような状況下にある街でのちょっと不思議な日常、少年少女の成長を主眼としている。語り口も暖かく、まさに青春というかジュブナイルというか、ネガティブな内省、自傷もなく、心地よい読後感である。多少のあらさや既視感もあるのだけれど、その明るさによって救われているよな、と。ヘンに小難しく考えず、素直に楽しめばいい小説なのだな、と。そう読めばいいのだと思う。

個人的には、物語のどこかで、空に浮かぶクジラ自身の謎についてひとつの答えを出してもらう、そのセンスオブワンダーのきらめきがあってもいいのになぁ、と思わないでもない。ありえない世界が成立することによる驚き、広がりを味わってみたかったかなぁと思う。しかし、主人公達が中学生だし、そもそも小説としての志向も違うわけだし、逆にそうなっていたらいたで、展開が無理やりだとか、そういう捻くれたことをいってたかもしれない。とりあえず、本作は本作として、これでよいのだと思う。

ぜひ続編など無駄にエクスペンドすることなく、いい感じで完結しておいてほしいですね。

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