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2007年6月 8日 (金)

新興宗教オモイデ教外伝

結局なにが云いたかったの? という感想になってしまうのだが。自分が思うに、これはおそらく物語としてきちんと「閉じて」いないせいなのではなかろうか。娯楽小説という枠組みの中で重視されるべき、物語性が弱いのだ。謎があり、その解決がドラマの進行によって表現されるという(?)というストーリーテリングはエンタテイメントの王道構造でるといっていいだろう。しかし本作では、謎の提示だけが(扇情的かつ猟奇的に)行われ、その結末が犯人の独白によって完結されるという非常にクラシカルなスタイルになっている。その手法自体は手法としてアリではあるのだけれど、本作のようになまじエンタテイメントに特化したライトノベル(単なるレーベルスタイルだけではなくネタとして)として描かれるには、この手法はあまり適切ではないのかなぁと思う。まあ描き方次第だとも思うが。

というわけで全体の雰囲気としてこれは「ドグラマグラ」的だと、思うのだった。猟奇的で電波的で観念的(脳髄の冒険的?)な設定は、ようするに原典「オモイデ教」を引きずっているからといってしまえばそのとおりではあるのだが、しかし本作者自身そこそこに意識していると感じた。そう捉えれば上述のカストリ探偵小説のスタイルを踏襲してるのも意図的なのだろうと思う。それが成功しているかどうかはまた別だ。少なくともサクサクと読みすすめにくいことは確かで、正直損しているんじゃないかと思う。

文体として、故意に誤植/当字による表現を用いている。例えば「本統」などは頻繁に登用されている。似て非なる造語を使用することで異世界感を醸し出す手法については、けっこう新鮮で面白いと思った。ただあまりにも頻出すると新味が薄れるのも事実でもう少し要所要所の使い方にしたほうがよかったのでは、とも思う。しかし、作者は意図的にやっているんだろうなぁ。もし単なる間違いだったら、それはそれで面白いんだけどね。

で、結論としては、なんかとってつけたような話で、あまり読んでいて楽しくはなかった。企画としては面白いと思うが、単体の小説としては自分は「違う」と思うのだった。

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