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2007年6月21日 (木)

トリックスターズC

密室ミステリーの体裁を借りた魔術師=詐術師の物語。と作者は語る。しかしそれもまたフェイクで、核となっているのは、フーダニットとフォワイダニットとしてのミステリーなのだ。誰がなにを目的とし、なにを仕掛けようとしているのか。その謎と解決が根幹となっている。
嘯いてみせれば、それはどのような物語でもそーだろ、といってしまうことも簡単ではある。物語は、人生はすべてミステリーであるよ、と。まあ、そんなかっこつけたことを云うまでもなく、広義のミステリーというあまりにも許容度の広いジャンル構成の中において、しかし、よりミステリー色が濃いのは事実だろう。例えばそれは、作品の本質論ではなく、テクニックとしての表現系としてもいえる。謎の提示といくつかの推理/回答の論理的展開。そして検証と結果。さらなる真相。という、ミステリー小説の王道の展開である。娯楽なのである。楽しめてしかるべきであろう。

ひとつひとつのパッケージングとともに、大きな物語としても一応の一区切りとなっており、そこにおいて登場人物達の成長が浮かび上がっている。自覚と覚悟と云い換えてもいい。そのような動的な物語に人は魅了されるのであろう。登場人物に感情移入ができる(今の言葉で置きかえるとキャラ萌え上等ということ)のであろう。

些細な点であるがひとつだけ引っかかったのは、文章が妙にチャラチャラしているように感じたことだろうか。当初はもう少し硬質な感じがあったと思うのだが、今回特に、いわるゆライトノベル的な緩さ/甘さ/軽さが目についた。実際ラノベなのだから、それに目くじら立てるもんでもないけれど、内容といまひとつアンマッチな感じがほんの少しだけ感じられた。

ともあれ、次回の新展開はどうなっていくのだろう。ミステリーとしての外殻を捨て、人の物語へと変わっていくのか。あるいは新たなミステリーとして変化していくのか。けっこう楽しみではある。

あ、ワトソン役にして語り手かつ騙り手である主人公が、今回はじめて(だよね?)絵として描かれたことに対して、なんらかの意図/トリック/秘された真意があるような気がしてならない。もうこのシリーズに関してはすべてを疑ってかかるのが癖になってしまっているよ、自分。

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