ジョン平とぼくと3 ジョン平とぼくらの世界
この物語のよさは飄々とした、かつナイーブな雰囲気にあると思っている。事件ではなく日常を読むべき、味わうべき物語、世界であると思う。ところが、今回、大きな物語をたたむにあたって、そんな日常性とはかけ離れた、いわゆる「世界の危機」をキーにすえて話を進めてしまっている。これは、前巻、前々巻からのフリとして、けして逸脱をしているわけではないが、しかし、主人公をはじめとする人々がこれまでの積み上げてきた世界観からすると、身の丈を超えてしまっているのではないかと思うのである。もう少し、平凡だけど心地のより普段の日々とその中での少年たちの成長という話でもよかったのではなかろうか。
いや、こう書くと、実際に書かれたものへダメ出ししているように思われるかもしれないが、そんなことはなく、これはこれで面白かったのだ。ただ、自分が感じていた作品の魅力とは別のところで話が進んでしまい、他作品と代替不可能な「この作品だから」こその何かが失われてしまっている。そう感じたのだ。
反面、この作品のもうひとつのよさである、魔法というロジックをきちんと規定し、論理的に展開している科学性(本当はSF的センスオブワンダーといったほうがいい?)については、世界を規定し整理する物語としての展開の中で、逆により明確なっており、評価がなかなかに難しいなぁと思わないでいられない。
あとがきにあるとおり、今後あるとするならばあるであろう短編は、畢竟日常のささやかな出来事が主眼となっていくであろう。であるとするならば、むしろこの作品のムードや世界観にとってふさわしい表現形式であるのかもしれない。
ジョン平とぼくと3 ジョン平とぼくらの世界 [GA文庫] 著者:大西 科学 |
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