黄金の剣は夢を見る
良くも悪くもよく見かけるきちんとまとまったお話であった。としかいいようがない、かなぁ。けして悪い話ではないと思うのだが、新鮮味にはやや欠け、さりとてステレオタイプの書割り小説かというと、そうでもない。うまく云い表せないへんな感じではある。
今回のガガガとルルル自身、スーパーダッシュとコバルトの対抗馬的設置であることは誰もが判ることで、特にルルルに関しては少女向け恋愛を基調としており、まさにコバルトのフォローワーなわけである。そしてコバルトが(歴史的にみても)ライトノベルという括りからは若干離れた位置にある。もっといってしまえば、少女マンガの活字版であるということである。で、ルルルもまた然り、というわけで、本作もなんのことはない、少女マンガを文字化したというのが、一番近い感覚といっていいだろう。
伝奇的物語として、過不足はないとは思うが、食い足りなさが残るのも、結局は主人公の恋愛心情を描くことがメインであるとするならば、十分に納得できるし、それでこの小説としての存在意義は達成されている。そういう意味では十分に満足しているのだ。ただ、やはり叙事的にもう少しドラマチックにできる要素を散りばめているにもかかわらず、それをオミットするのはやはりもったいないのではなかろうか。例えば根幹のアイディアである三王の謎についても、本当ならもう少し深いところまで掘り下げてほしかった(でないと、あれだけ程度の謎がなんで平安期からこっち誰も解決できなかったのかのエクスキューズにならん)。
というわけで、他にもいろいろとあるのだけれど、結局、そこそこに面白かったですよ。というのがまとめになってしまうわけで、それは、ある意味、損をしているのかもしれないなぁ、はっきりダメ出しをされるなり、ベタ褒めされるなりのほうが、すっきりするんじゃないのかなぁ、と、自分で書いていてそう思ったりするのであった。
黄金の剣は夢を見る 著者:西谷 史 |
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