« 2007年5月 | トップページ | 2007年7月 »

2007年6月26日 (火)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん

物語としては、詐述トリックのミステリーを根幹とした、青少年特有のイタイ内省的な話である。連続殺人と誘拐(の犯人)という扇情的なキーワードを推進力に物語を進め、クライマックスですべてのピースがあるべき位置に収まり、そして生きていく意味を(少しだけ)見出していく。そういう、現在のライトノベルのひとつの方向性の中の位置作品である。

若書きという点を考えれば、多少の荒さは許容の範囲だろう。テーマもしかり散りばめられた偽悪的なギミックもしかり、どことなく舞城王太郎を思い出させるが、それは別に同一のタイプの作品であることでもないし、同一の面白さをもつということでもないが、しかし、シーズはあるのかもしれないとも思う。

しかし、最近特に感じているのだけれど、ライトノベルというジャンルがマンガの文章化という位置づけの中、超人戦闘であったり妄想恋愛であったりと、目的と手法が一体となったサブジャンルを構成しているのは周知のとおり。しかし、お手軽なエンターテイメントとして縮小再生産を繰り返しているのもまた事実で、結果、オリジナリティも薄れ、新たな驚きを得る機会は減っている。そのように疲弊したジャンルをてこ入れしようとする場合、必要以上に刺激的でインモラルすれすれのカンフル剤を用いることは当然の流れであろう。これは、TVにしろマンガにしろ、どのジャンルでも経験してきているものだ。

最近のライトノベルを読むにつけ、エロ小説すれすれ(そのものですらある)であったり、バイオレンス小説であったり、確実にR18指定になり得る作品が増えすぎているように思う。自分自身そういう作品は嫌いではないし、逆に意図的に好んで読んだりもするのだけれど、それはあくまでもサブであって、メインであるべきではないとも思うのだ。じゃあ、(ステレオタイプのという意味ではなく)王道のライトノベルはなにか、といわれると、明確には云えないのだけれど、最近の爛熟ぶりには、さすがにそれはマズイだろうと思うことが多すぎる

ま、いったんドロドロになってそこからまた新機軸が生まれ出るということもジャンルの進化パターンである。今はそこに至るまでの過程の道中ということなのだろうか。

で、この作品の感想に戻るが、上述とは逆の云い方になるのか、あるいは補強になるのか判らないが、この作品はライトノベル的ではないし、ライトノベルではないなあ、と思うのだった。自分のイメージとしては、講談社ノベルズあたりなのだけれど。でもって、ラストの甘さはぶっちぎって、死に至る物語として後味悪く終わる、と。そういう印象がある。
褒めてるようで褒めてないな。ま、次回作に期待するってことで。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 Book 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸

著者:入間 人間
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

銀のエンゼル

あのミスターの「普通」の物語。ここでいう普通とは、日々の生活のちょっとした出来事を淡々と描き出すという生活小説(でいいんだっけ?)ということだ。映画のその後、続編という位置づけのため、登場人物は基本的にアテ書きであり、ゆえにその顔を思い浮かべながら読むことになるのは当然の帰結だろう。特にそれが裏目に出るというものでもないし、より明快な脳内映画として読むことができた、ということでいいだろうか。

ま、ただ、大泉さんだけはあまりにも個性が強烈というか、自分の中での思い込み/思い入れが強いのか、絵として出すぎ。それは、どうでしょう?(あ、別に狙ったわけではないんですけど。。。)

ともあれ、小編といってよい長さもあいまってあっさりと読み終え余韻を楽しむことができた。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

銀のエンゼル―出会えない5枚目を探して Book 銀のエンゼル―出会えない5枚目を探して

著者:鈴井 貴之
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月25日 (月)

新世紀エヴァンゲリオン(11)

エヴァにハマった人間として、そしていまだにどこか引きずっている部分も否めない人間として、いまだ続く連載に対しては、色々と考える面もあるわけですよ。これがガンダムくらい時間をおくと、懐古的回顧的視点で読むこともできるんだけど、エヴァは自分にとってはまだまだ生々しいんだよなぁ。

貞本版エヴァについては、まさに佳境。これから実にツライ話になっていくわけですが、どうなんですかね。TV版ではなく映画版、つまり本来あるべき姿をトレースしているようではあるが、最終的にはまた「ベツノモノガタリ」になるような気がする。まあ、新解釈映画版も控えていることだし、一人にひとつずつのエヴァがあるとするならば(ちゅーかそういうものだと思うが)、なるべくハッピーであってほしいなぁ、と思わずにはいられない。無類のハッピーエンダーとしては、そう願うばかりです。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

Book 新世紀エヴァンゲリオン (11)

著者:貞本 義行,GAINAX,カラー
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (3)

2007年6月22日 (金)

ジョン平とぼくと3 ジョン平とぼくらの世界

この物語のよさは飄々とした、かつナイーブな雰囲気にあると思っている。事件ではなく日常を読むべき、味わうべき物語、世界であると思う。ところが、今回、大きな物語をたたむにあたって、そんな日常性とはかけ離れた、いわゆる「世界の危機」をキーにすえて話を進めてしまっている。これは、前巻、前々巻からのフリとして、けして逸脱をしているわけではないが、しかし、主人公をはじめとする人々がこれまでの積み上げてきた世界観からすると、身の丈を超えてしまっているのではないかと思うのである。もう少し、平凡だけど心地のより普段の日々とその中での少年たちの成長という話でもよかったのではなかろうか。

いや、こう書くと、実際に書かれたものへダメ出ししているように思われるかもしれないが、そんなことはなく、これはこれで面白かったのだ。ただ、自分が感じていた作品の魅力とは別のところで話が進んでしまい、他作品と代替不可能な「この作品だから」こその何かが失われてしまっている。そう感じたのだ。

反面、この作品のもうひとつのよさである、魔法というロジックをきちんと規定し、論理的に展開している科学性(本当はSF的センスオブワンダーといったほうがいい?)については、世界を規定し整理する物語としての展開の中で、逆により明確なっており、評価がなかなかに難しいなぁと思わないでいられない。

あとがきにあるとおり、今後あるとするならばあるであろう短編は、畢竟日常のささやかな出来事が主眼となっていくであろう。であるとするならば、むしろこの作品のムードや世界観にとってふさわしい表現形式であるのかもしれない。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

ジョン平とぼくと3 ジョン平とぼくらの世界 [GA文庫] Book ジョン平とぼくと3 ジョン平とぼくらの世界 [GA文庫]

著者:大西 科学
販売元:ソフトバンククリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

オイレンシュピーゲル(2)

相変わらず読みにくい/特殊な文体/微妙に違和感=作者の思惑空回り。ではあるが、それさえ慣れてしまえば、実にスタンダードな、近未来ポリティカルアクション/SF/ライトノベル/士郎正宗フォローワーだろう。

この手の小説は勢いで読ませることが重要で、それが物語のダイナミズムにもつながっていくのだと思うのだが、文体がアレなもんだから、速度感を欠いているように思うのだ。もっとも自分が思っている以上にコンサバで、受け入れ態勢に戸惑っているだけなのかもしれない(=けっこうイタイ自己発見)。

内容として非常に王道/定石な物語である。だからといってお仕着せだとは思わないが。それはそれなりに独自の世界史観による構築がなされているからだろう。その点においてはやはり上手いと思う。特に今回は泣かせる話であったりもして、まさにコレゾな感じはあるのだ。

それにしても、もっとスムーズに作品を堪能できたら、という気持ちは払拭できないのもまた事実。むしろ、アニメとかマンガでビジュアルとして体感すべき物語なのかもしれない。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

オイレンシュピーゲル 2 (2) Book オイレンシュピーゲル 2 (2)

著者:冲方 丁
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月21日 (木)

トリックスターズC

密室ミステリーの体裁を借りた魔術師=詐術師の物語。と作者は語る。しかしそれもまたフェイクで、核となっているのは、フーダニットとフォワイダニットとしてのミステリーなのだ。誰がなにを目的とし、なにを仕掛けようとしているのか。その謎と解決が根幹となっている。
嘯いてみせれば、それはどのような物語でもそーだろ、といってしまうことも簡単ではある。物語は、人生はすべてミステリーであるよ、と。まあ、そんなかっこつけたことを云うまでもなく、広義のミステリーというあまりにも許容度の広いジャンル構成の中において、しかし、よりミステリー色が濃いのは事実だろう。例えばそれは、作品の本質論ではなく、テクニックとしての表現系としてもいえる。謎の提示といくつかの推理/回答の論理的展開。そして検証と結果。さらなる真相。という、ミステリー小説の王道の展開である。娯楽なのである。楽しめてしかるべきであろう。

ひとつひとつのパッケージングとともに、大きな物語としても一応の一区切りとなっており、そこにおいて登場人物達の成長が浮かび上がっている。自覚と覚悟と云い換えてもいい。そのような動的な物語に人は魅了されるのであろう。登場人物に感情移入ができる(今の言葉で置きかえるとキャラ萌え上等ということ)のであろう。

些細な点であるがひとつだけ引っかかったのは、文章が妙にチャラチャラしているように感じたことだろうか。当初はもう少し硬質な感じがあったと思うのだが、今回特に、いわるゆライトノベル的な緩さ/甘さ/軽さが目についた。実際ラノベなのだから、それに目くじら立てるもんでもないけれど、内容といまひとつアンマッチな感じがほんの少しだけ感じられた。

ともあれ、次回の新展開はどうなっていくのだろう。ミステリーとしての外殻を捨て、人の物語へと変わっていくのか。あるいは新たなミステリーとして変化していくのか。けっこう楽しみではある。

あ、ワトソン役にして語り手かつ騙り手である主人公が、今回はじめて(だよね?)絵として描かれたことに対して、なんらかの意図/トリック/秘された真意があるような気がしてならない。もうこのシリーズに関してはすべてを疑ってかかるのが癖になってしまっているよ、自分。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

トリックスターズC PART1 (1) Book トリックスターズC PART1 (1)

著者:久住 四季
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する


トリックスターズC (PART2) Book トリックスターズC (PART2)

著者:久住 四季
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月20日 (水)

君に届け(4)

今回も泣けました。結局、自分がグッとくる/きてるのは、色恋模様なんかじゃなくて、友情の物語の部分なのね。貞子がやのちずに救われているのと同様、やのちずが貞子によって変わっていっている(手垢がついた鼻白む表現でいうなら「成長している/大人になっていく」なんだけど、そんな簡単にひとくくりにいいたかぁないのよ)ところに、モーレツに泣きツボ押されまくっているのだ。

今回、一瞬ドロドロした話になりそうな感じもあったりしたが、貞子がピュア/天然なおかげで、そういう展開にはならず、自分としてはホッといたしました。

次回、どうなっていくのか。ぜひ、ピュアラブの方向で!

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

君に届け 4 (4) Book 君に届け 4 (4)

著者:椎名 軽穂
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (2)

2007年6月19日 (火)

☆☆☆

ついうっかり買ってみたのは(いや、確信犯的に買ったんですけどさ)、けして久住推しなせいではなく、ましてやきらりんファンだからですらない。んじゃあなんで買ったのよ、というと、自分がアイドルポップ好きだから、という実につまらない理由でどーもすいません、てなわけですよ。

聴いてみての感想としては、やはりシングルカットされたナンバーはそれだけの吸引力があるな、ということだ。完成度が高い。まさに膨らんでは消えていくポップという移ろいのアートの中で、特にその指向が顕著であるアイドルポップとして、これぞ! という感じ。そんな勝手なこちら側の想いだけで、いいの悪いのというってのもなんだけど、これってズバリ萌えの構造に他ならない! ちゅーことは、自分は久住小春に萌え萌えなのかっ!? けして上手いとはいえない歌に何故か惹かれるのはそういうことなのかっ!? いや、論旨が矛盾しているな。でも、別に強く主張するほどの内容でもないから、いーですよね。

そんなこんなな感じではるが、冒頭2曲の他はスパゲティがよかった。アニメっぽくて。ね、ダーリン(はぁと)、な感じがグッジョブ。

まあそれはそれとして、久住小春のすごいところをひとつだけ最後に付け加えておくが、イニシャルがQXという普通じゃあみられないアルファベットであるのはやはり驚嘆すべき点であろう。うーん、バカネタですみません。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

☆☆☆ Music ☆☆☆

アーティスト:月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)
販売元:アップフロントワークス(ゼティマ)
発売日:2007/02/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月18日 (月)

アヒルと鴨のコインロッカー

※注意! 文中に作品の面白みを想像させる記述があります。

伊坂はストーリーテラーである。その巧みな語りにのり振り回され、そして見事かつ思いもよらない着地を堪能すればよいのである。ということは、これまで何度も、そして誰もが口にしていたことで、今回もまさにそのとおり。ふたつのストーリーが絡み合い、そしてひとつにまとまるときに浮かび上がる思いもよらない真実。そして「ものがたり」。まさに読書の醍醐味である。

ということは判ってもいるのだけれど、しかしながらあえて云わせてもらうとしよう。これは自分自身の問題である。自分は、ネガティブでヒネクレテイルと自覚している。そのことについてはそういうことだと思ってほしい。で、にもかかわらず、なのかもしれないし、だからこそ、なのかもしれないが、物語にはハッピーエンドを求めてしまうのである。それが多少のご都合主義であってもかまわない。悲しみの現実を突きつけられるよりはうそ臭い幸せであってほしい。そう思うのである。
だから、本作の物語の序盤から不幸(だろ?)であるヒロインとの別離、それは死別なのだろうと容易に想像できてしまう展開は、面白いのだけれど読み続けるのをよしとしたくない、そういうアンビバレンツな感情を生むことになる。結果、その予感は予想とは別の形で実現してしまうわけだ。そのトリッキーな展開自体には本読みとしては魅了されずにはいられないが、しかし、読むことに対する痛みはあるのだ。だから手放しで満足を得られることができなかった、ということなのだ。

実は作者はそのような不幸性を意識しているのかもしれない。冒頭、そして巻末に書かれた「この作品の制作において生き物は死んではいません」という記載は、作中、重要なファクターとなる動物虐待についてのフォローとして書かれた映画のパロディであると同時に、実は、小説自体がフィクションであって、人間も含めて動物は創造の産物である、だから、必要以上に悲しむことはないのだ、ということを伝えようとしてるのではなかろうか。と自分は読み取った。うがちすぎかもしれないが、そうやって自分は浄化したさせていただいた。

ともあれ、物語としてはやはり一級である。どう読み取るかは、読む側の自由であり、不自由であるのだろう。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

アヒルと鴨のコインロッカー Book アヒルと鴨のコインロッカー

著者:伊坂 幸太郎
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (2)

2007年6月17日 (日)

神様のメモ帳

(必要以上に持ち上げているかもしれないですが)

いよいよもって、アウトサイダー達の探偵小説となってきた。つまり、要するにIWGPなんだけどさ。正直、主人公が高校生だからライトノベルレーベルで成立(?)しているけれど、猩猩人物たちの設定年齢をプラス5才ぐらいにしてやれば、文春や幻冬、あるいは創元推理あたりの推理小説として十分にいけると思う。
(またまた繰り返しになるけれど、ライトノベルだからダメなんじゃなくて、一般レーベルにすることで読者層が広がるだろうに、ということである)

結局、行動する者達の物語というハードボイルド探偵小説の基本としっかりと押さえていることとがすべてなのではなかろうか。現実味のある謎と展開、安直に堕さないコンフリクト設定、リアリティある登場人物たちの心情をきちんとフォローしつつ、ヘンにぐずぐずさせず、行動させる。その緩急のつけ方が見事なのである。
クライマックスからラストに向けて甘いともいえるかもしれない。しかしべたつかない程度のウェルメイドは望むところである。

あまり内容についてまでふれることはしない(いつもしてないけど)。とにかく読んでくれ、と。それだけはいいたい。07年上半期がそろそろ終了するところではあるが、今年の収穫のひとつは、このシリーズだろうと、確信しているからだ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

神様のメモ帳 2 (2) Book 神様のメモ帳 2 (2)

著者:杉井 光
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

世界平和は一家団欒のあとに(2)

飛び道具的な設定と思いのほかしっかりとした物語という、1作目は、であるが故にそこで完結し、むだにダラダラと希釈拡散していくような続編はやめたほうがいいと思っていた。前回もそういう感想を書いていた。前言撤回。2作目も十分に面白かった。正直やられた。

この本が一貫して語っているのは「家族」であり「コミュニケーション」である。それはまさに真摯に描こうとしている。逆にいえばアクションとか萌えとか、いわゆるライトノベルのお約束的おかずにはあまり拘泥していないとも云える。だからクライマックス含めアクションシーンはあるが、それ自体を描いてはおらず、あくまでも物語を進めるための行為として描いているのだ。
だから、一見チャラチャラしたライトノベルであるにもかかわらず、読み終わって得られるのは、むしろ一般小説の感慨に近いのだ。

(これは今までもいっていることだが、別にライトノベルについて小説の上下があるということではない。志向が違うというだけのこと。ただ往々にしてライトノベルはツメの甘いモノが多いというのもまた事実だから、ね)

そんな印象を生み出しているのは、実はストーリー自体にあるのは当然として、さらに文体が石田衣良@IWGPに非常に親和しているせいではなかろうか。だからどうだというわけでもないが、個人的には好きな筆使いなので、ちょっとリコメンドする次第である。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

世界平和は一家団欒のあとに 2 (2) Book 世界平和は一家団欒のあとに 2 (2)

著者:橋本 和也
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月15日 (金)

ゼランディーヌ―性悪ないばら姫

読むのにえらい苦労した。物語が頭に入っていかないのだ。たぶん、自分が物語に対して魅力/吸引力を感じていないためだろう。やっぱ、コスプレ巨ニューってだけで表紙買いしちゃいけないってことなのね。

ライト鬼畜のゴスロリ女装系SF風アクションといういかにもライトノベルな内容で、かなり書割り的、つまりステレオタイプで、なおかつ文章が捉えどころのない平板な書きっぷりで、うーん、やっぱり自分にはこれはつらい。

なにが足りないのか、自分でもよくわからないのではっきりと指摘しづらいのだけれど、プログラムピクチャーならぬ、プログラムノベルを、割り切って楽しめる余裕がないときには、向かないお話であろう(否定しようにも具体的なツッコミどころを挙げられないくらいに平凡だった、ということか?)

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

ゼランディーヌ―性悪ないばら姫 Book ゼランディーヌ―性悪ないばら姫

著者:嬉野 秋彦
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

戦国時代のハラノムシ

昔の人の考えることは面白いねぇ。という感じで愉しむ絵解き本で、テイストとしては怪獣図鑑とか妖怪大辞典とか、まあそんなもん。意図的にそういう構成にしているのだろうな、とも思う。

この手の本は、個人的には原典自身にあたるべしという信条/心情なので、こういう再構成版よりは復刻本として発刊してほしいかな、と思うところもある。しかし、とりあえず初心者向けとして簡潔にまとまっているので、これはこれでよかったな。

読んでいて「蟲師」に対する言及が多く、確かにそのとおりだとは思うが、あまりにも云いすぎると、若干の気恥ずかしさを感じないではないシャイな自分(笑)。

九州博物館に行ったとき、ハラノムシシリーズをまったく気にもとめていなかった。というか、気づいちゃいなかった自分に対しては、ちょっとダメじゃん、と反省するところしきりではある。今度行ったときはきちんとチェック&ラーニングですね。ただしいつ行けるのかはわからないけれど。

それにしても、自分、きっと陰虫に寄生されているに違いないっす。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

戦国時代のハラノムシ―「針聞書」のゆかいな病魔たち Book 戦国時代のハラノムシ―「針聞書」のゆかいな病魔たち

販売元:国書刊行会
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月14日 (木)

学園カゲキ!

ものすごいストレートな変化球。いや、大暴投なんだけど真っ向勝負。うーん、どっちもヘンな表現だなぁ。でも感想としてはそんな印象であった。

ジャンルとしては、学園コメディである。ショウビズ特区の学園生活というアイディアは、基本的には宝塚であったり堀越であったりという現実社会の様相をより発展させたもので目新しいという程でもない(どっかで読んだことがあるような気もするが、思い出せないので、ま、いいや)。でもステレオタイプというほどありふれてもおらず、自分としてはちょうどいい塩梅だった。

(いろんな意味で)一直線で好感度が高い。物語自体のボリュームがないため、枝葉的なエピソードは省略され、主人公とヒロインの純愛っぷりに特化し、故に速度感がでたのだと思う。その分、脇役の掘下げがやや足りないかなぁと思うところもないわけではないが、今回は物語の勢い優先をよしとしたい。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

学園カゲキ! Book 学園カゲキ!

著者:山川 進
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

2007年6月13日 (水)

人類は衰退しました

一見ほのぼのとした、しかしけっこう腹黒い、でも能天気なお伽噺風SF。ってくくりでいいですか? (マイノリティな)人類と繁茂した非人類とのコミュニティという設定は、古くは「ホーカーシリーズ」を連想するし、最近(でもないか)では「ねこめーわく」を連想する。特に後者については物語の展開のしかたといいネタの出しかたといい、かなり近い感じである。自分としてはそういう世界は嫌いではないので、フツーに面白く読ませてもらったが、食い足りないというか緩いというかそういう印象を持つ人もいるかもしれない。もう少し世界設定を具体的に説明してもいいんじゃないの、とかね。でも、基本的にバカSFコメディなので、この程度でいいんじゃないだろうかねぇ、と思うな。

語り口として、笑いをとるために(?)メタ的なボケをしているところもあるのは(例えば妖精さんになかたと名づけるのは今は笑いに転化できるが作品中の世界観からは逸脱している)、パッケージングとしてちょっとやりすぎかもしれないとは思う。まあ好きずきのレベルではあるのだけれど。

お気楽に読める小説としては及第点。続編が出たら読むとは思う。でも出なくても別にいいかな。書き手も読み手もゆるゆるだなぁ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

人類は衰退しました Book 人類は衰退しました

著者:田中 ロミオ
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (2)

2007年6月12日 (火)

ピクトさんの本

対象と手法については「オジギビト」にかなり近しいが、「ピクトさん」という名称(と人格)を与え、その仮想人格の人となりを基点に分類整理していく、という点が、伝記的でもあり、とある一族家系の生き様的でもあり、面白い点であった。

とりあえず、収集と分類まで、が本書において行われていることだが、今後、より学究的発展をしていくとすると、どういう方向に進んでいくのだろうか。ピクトさんを単なるピクトグラムの一形態としてまとめると、白けてしまうし、キャラクター化を過度にすすめると単なるパロディになってしまうし、けっこう難しいように思う。

ともあれ、初発としては世界各国のピクトさんを知ることができたことで十分だとは思う。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

ピクトさんの本 Book ピクトさんの本

著者:内海 慶一
販売元:ビー・エヌ・エヌ新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月11日 (月)

まりあ・ほりっく(1)

最近、(アッパー系バカ)学園マンガが増えているような気がする。好きなジャンルなので嬉しい次第ではある。

本作は、主人公がズーレーで、対するヒロイン(?)が女装癖の美少年だったり、ツンツンメイドだったりと、もう萌えシロ満載の設定。まあ、自分は萌えるために読んでいるわけではないので、おお、なるほどと、構造分解して愉しんでいるわけだが(ちょっとウソ、それなりに萌えてます(苦笑))、まあ不必要にテンションの高いバカっぷり、ボケとツッコミっぷりは心地よいなぁ、と。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

まりあ・ほりっく 1 (1) Book まりあ・ほりっく 1 (1)

著者:遠藤 海成
販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

黄金の剣は夢を見る

良くも悪くもよく見かけるきちんとまとまったお話であった。としかいいようがない、かなぁ。けして悪い話ではないと思うのだが、新鮮味にはやや欠け、さりとてステレオタイプの書割り小説かというと、そうでもない。うまく云い表せないへんな感じではある。

今回のガガガとルルル自身、スーパーダッシュとコバルトの対抗馬的設置であることは誰もが判ることで、特にルルルに関しては少女向け恋愛を基調としており、まさにコバルトのフォローワーなわけである。そしてコバルトが(歴史的にみても)ライトノベルという括りからは若干離れた位置にある。もっといってしまえば、少女マンガの活字版であるということである。で、ルルルもまた然り、というわけで、本作もなんのことはない、少女マンガを文字化したというのが、一番近い感覚といっていいだろう。

伝奇的物語として、過不足はないとは思うが、食い足りなさが残るのも、結局は主人公の恋愛心情を描くことがメインであるとするならば、十分に納得できるし、それでこの小説としての存在意義は達成されている。そういう意味では十分に満足しているのだ。ただ、やはり叙事的にもう少しドラマチックにできる要素を散りばめているにもかかわらず、それをオミットするのはやはりもったいないのではなかろうか。例えば根幹のアイディアである三王の謎についても、本当ならもう少し深いところまで掘り下げてほしかった(でないと、あれだけ程度の謎がなんで平安期からこっち誰も解決できなかったのかのエクスキューズにならん)。

というわけで、他にもいろいろとあるのだけれど、結局、そこそこに面白かったですよ。というのがまとめになってしまうわけで、それは、ある意味、損をしているのかもしれないなぁ、はっきりダメ出しをされるなり、ベタ褒めされるなりのほうが、すっきりするんじゃないのかなぁ、と、自分で書いていてそう思ったりするのであった。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

黄金の剣は夢を見る Book 黄金の剣は夢を見る

著者:西谷 史
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

2007年6月10日 (日)

世界の孫(2)

なぜにイカ? 2巻にして早くもお孫さんという設定とは全然無関係のヘンなマンガになっている。暴走するにも程があるというか、獣偏に王な感じ。ただ、間違った同時代感覚というか、カンフーや時代劇の引用っぷりには、うまくツボにはまってしまって笑ってしまった。

あと、コスプレの着エロ的感覚もね。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

世界の孫 2 (2) Book 世界の孫 2 (2)

著者:SABE
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

扉の外(2)

正直、前作で完全に話が閉じているので、どうやって続編にするのか非常に興味があったのである。期待半分不安半分。結果として、基本的な設定は変わらず、しかし、一義的な課題はまったく別もの、登場人物も別ものというシステムを採用したわけだ。まあ、順当に考えればそういうことになるのだろうな。

さて、そういったわけで、新たな閉塞環境による物語は、よりゲーム色が強くなっている。ストラテジックなウォーゲーム的、あるいはボードゲーム的な前作から、カードゲーム的な物語となっている。舞台自体もそれを成立させるべく冒頭からフロアを変えている。ある意味、アイディアを成立させるために無理やりな感もあるが、前作後半で提示された設定を前提とした展開になっており、それは順当だと思う。
で、ゲームだ。ゲームの法則規則が少々判りにくく、また、ワンアイディアで最後の最後まで引っ張っており、あまり複雑な構造にはなっていない。そんなシンプルなゲーム構造に特化された空間での右往左往する学生達のエゴイズムの物語である。その描写的作話技術は、この作者の特色なのだろう。自分は、それなりに気にいっているのだけれども、屈託した部分が鼻につく人はいるかもしれない。

あと、前作で巧みに回避されていた性的なコンフリクトについては、比較的あからさまになっており、そういう点で多少生々しくなってきている。まあ現実的にはそうなってしかるべきだと思うのだが、前作のエクスキューズを引用せず、むしろ暴力行為との代償的に表現しているのが、インフレ的な感じがあって、これも好き嫌いがあるかもしれないなぁと思う次第。自分としては、まあアリです。

今回のラストは前作の余韻とは逆に、次回への強い引きによって終わっている。といいつつ、ここで終りとしても全然問題のない部分でもある。おそらく次巻を意識しての布石ではあるのだろうけれど、無理に続けることなく完結としてもらってもいいのになぁ、と思うのだ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

扉の外 2 (2) Book 扉の外 2 (2)

著者:土橋 真二郎
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

アンダカの怪造学(6)

日日日は文章力がある。と何度も繰り返してしまっているのだけれど、これだけ捻くれた文章、かための単語をならべている状況でさくさく読めるのはやはり力があるからということだ。文章力/筆力があると、それだけで読みがいがあるからね。まあ、究極的には物語自身の力がないとダメなんだけど。これは、映画における脚本と演出の関係にも近いのかもしれない。

さて、シリーズも折り返し地点なんだろうか。いろいろとキャラクターや設定の掘り下げが続くが、そろそろシリーズとしての大きな着地点に向けて動きはじめたといったところだろうか。

ややマンネリ的、中だるみ的な感じがないわけでもない。1冊単位でとりあえずまとまっているので、それなりにクライマックス感はあるが、大きな話としての動きのほうが気になりだしているせいだろうか。

とりあえず、そんな感じ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

アンダカの怪造学 6 (6) Book アンダカの怪造学 6 (6)

著者:日日日
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月 8日 (金)

樹海人魚

うーん、アイディアは面白いんだけどね。それを活かせていないというか。

キャラが立っていない。全員同じようなメンタリティで、読んでいて見分けがつかないのが、マイナスその1。確かに頼りになる先輩とか、無能な上司とか、バリエーションは表面上は構築しているが、文章として表現されると、ほとんど差が出ない。これはキャラの性格にブレがあるせいでもあろう。主人公が、イジケたキャラなのか無謀で強気なのか、唐突に変わっており、現実において一貫しているとはいわないけれど、そうなるべき状況下でそうならない、不自然な印象だけが残る。

また、場面に登場している人物を完全にフォローできておらず、誰が話しているのか、どういう行動をしているのか、場面から退場したのか、それらが判らない。必ず文章化しなけれはならないというものでもないが、推測で補うことすらできないのはちょっと違うのではないだろうか。おそらく書き込みが足りないということなのだと思う。書き込んで、刈り込む、という手順を踏んだほうがよいように思う(エラソー? 自分)。

さらに設定についても書き込みが足りない。歌い手と指揮者という面白そうで独創的な設定であるにもかかわらず、それらが具体的にどのような機能で、どのような効果を発揮し、という具体性を欠いているため、非常に判りにくいモノとなっている。例えば、赤い糸についても、それが概念としての比喩なのか、具現化させた機能なのかが、わからない。推測もできない。これはユーザーフレンドリーではないだろうと思う。

あと、指揮者とリンクが切れた歌い手は人魚に戻って暴走するという設定であるにもかかわらず、重要なポジションを占める2名の登場人物(遠藤長官と主人公自身)が、設定をオミットしているのは、あまりにも卑怯なのではないだろうか。この物語は人魚と歌い手という2面性を持った存在をどう捉えるかということが重要であり、それを根底から覆すような後付けは作者が物語の全体把握をせず、場面単位での盛り上がりに流されてしまったのでは、と勘ぐってしまわざるを得ない。

まあ、事ほど左様のとおり。せんじてまとめれば、文章力が追いついていないなぁ、ということに尽きると思う。
ともあれ、かなり否定的に書いてはいるが、根本のアイディアである「人魚」はかなり魅力的なのである。それを物語としてどう語り下していくかは、作者の今後次第であろう。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

樹海人魚 Book 樹海人魚

著者:中村 九郎
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (1)

新興宗教オモイデ教外伝

結局なにが云いたかったの? という感想になってしまうのだが。自分が思うに、これはおそらく物語としてきちんと「閉じて」いないせいなのではなかろうか。娯楽小説という枠組みの中で重視されるべき、物語性が弱いのだ。謎があり、その解決がドラマの進行によって表現されるという(?)というストーリーテリングはエンタテイメントの王道構造でるといっていいだろう。しかし本作では、謎の提示だけが(扇情的かつ猟奇的に)行われ、その結末が犯人の独白によって完結されるという非常にクラシカルなスタイルになっている。その手法自体は手法としてアリではあるのだけれど、本作のようになまじエンタテイメントに特化したライトノベル(単なるレーベルスタイルだけではなくネタとして)として描かれるには、この手法はあまり適切ではないのかなぁと思う。まあ描き方次第だとも思うが。

というわけで全体の雰囲気としてこれは「ドグラマグラ」的だと、思うのだった。猟奇的で電波的で観念的(脳髄の冒険的?)な設定は、ようするに原典「オモイデ教」を引きずっているからといってしまえばそのとおりではあるのだが、しかし本作者自身そこそこに意識していると感じた。そう捉えれば上述のカストリ探偵小説のスタイルを踏襲してるのも意図的なのだろうと思う。それが成功しているかどうかはまた別だ。少なくともサクサクと読みすすめにくいことは確かで、正直損しているんじゃないかと思う。

文体として、故意に誤植/当字による表現を用いている。例えば「本統」などは頻繁に登用されている。似て非なる造語を使用することで異世界感を醸し出す手法については、けっこう新鮮で面白いと思った。ただあまりにも頻出すると新味が薄れるのも事実でもう少し要所要所の使い方にしたほうがよかったのでは、とも思う。しかし、作者は意図的にやっているんだろうなぁ。もし単なる間違いだったら、それはそれで面白いんだけどね。

で、結論としては、なんかとってつけたような話で、あまり読んでいて楽しくはなかった。企画としては面白いと思うが、単体の小説としては自分は「違う」と思うのだった。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

新興宗教オモイデ教外伝 1 (1) Book 新興宗教オモイデ教外伝 1 (1)

著者:原田 宇陀児
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月 5日 (火)

マージナル

新レーベル固め読み第2弾。うわぁ、またまた飛び道具だぁ。

殺人愛好家の主人公と連続殺人者と被害予定者が織りなすサイコミステリーなのだが、非常に血生臭い話なのである。快楽目的のバラバラ殺人が実に露悪的というか、そこまで書かなくてもよかろうに、というぐらいの描写なのである。自分は血みどろは苦手ではないけれど、別にあえて必要以上に表現することもないんじゃないの、とは思うなぁ。

それに輪をかけての主人公の闇の深さ。いつダークサイドに陥ってもおかしくないという設定は、まあ悪かないけれど、でも、なんかあざとさを感じなくもない。物語上、その遠因も書かれていて、あるいは救済されるのでは、という流れもありはするのだけど、しかしそうなったらなったで安易な逃げのような気もするし、結局、この手の話は救いがないのが救いであったりするのかね。

ラストのどんでん返しについては、とりあえずなる程と思える程度のサプライズだったが、しかしそれなりの伏線がなかったせいもあって(あるいは自分が気づかなかっただけかもしれないが)とってつけた感は否めない。当馬的に殺された彼女が気の毒だよな、という感想である。

総じて、荒っぽい話だなぁと思うし、意図して扇情的に書かれているなぁと思う。とりあえず新レーベルの話題性づくりという観点からは成功しているように思う。あ、こんな感想の書き方だと、つまらなかった的論調になっているけれど、それほど酷くはない、いや、楽しんで読めたんですけれどね。それ以上に、その作品の外的要因による位置づけのほうが興味深くそちらを邪推するほうが面白かったもので。

あ、あと、設定やストーリー自身はライトノベル的ではないのだけれど、日常のおバカなテイストの入った会話などは、いかにもラノベ的で、和まされたといえば、そのとおりだし、浮いているといえば、それまたそのとおり。もしかしたら作者は明るめな話のほうに指向しているのかなぁ、と思ったりした。ま、単にラノベで文章を学んだので畢竟そういう書きっぷりになっただけかもしれないけれどね。だったら作調にあわせたほうがいいですよ、とちょっとだけ思った。(といいつつライトノベル=香港映画説を唱える立場(?)としては、いいとこどり文体ならこうなるだろ、と思うところもあるのですよ)

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

マージナル Book マージナル

著者:神崎 紫電
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

2007年6月 4日 (月)

武林クロスロード

ライトノベル新レーベル。というわけでとりあえず固め読みをしているのだが、その1冊目である。

いやぁ、驚いた。ライトノベルの範疇を超えてるよ、ヘンな方向において。ちゅーか、エロ表現において。まがりなりにも少年少女を対象とするライトノベルにおいて、エロに関していえば、やはり基本は寸止めであり婉曲であり隠喩であると思うわけですよ。現実問題として実生活において乱れているのが常だったとしても、非R18作品において、官能小説バリの行為行動を文章化するのはいかがなものか、と。しかも相当ムチャな百合っぷり(?)だし。つまり、美少女系アダルトコミックを小説にしました。とそういう作品であるわけだ。

で。しかし、だ。自分はけしてそれに対してダメ出しはしませんよ。だって、面白かったから。ヘンに遠慮しないリミッター振りきりっぷりも潔く、エロについても(ライトノベルで、という前提つきでだが)かなり愉しませていただいた。バイオレンスについては可もなく不可もなくといったところだが、ヘンに辛酸になるよりはいい。それにこの小説はやはりエロを書くために書かれたものだと思うしね。でなければクライマックスが戦闘ではなく拷問(という名の濡れ場)である必然性がない。とにかく、作者の意図は明確で、それにうまく乗ることができれば話を堪能することができるというものであった。

まあ、不満がないわけでもない。自分も武侠についてはかなり思い入れがあり、故に武侠に関する安易な設定については「おいおい違うんじゃないの?」と思うのである。功夫はけして魔法の力ではないし、武侠は超人的な達人ではあるが、それは超人ではないだろうと思う。むしろ(侍魂に近しい)生き方であり、死に方であったりするのだ。
でもそれは一般論(でもないが)であり、この作品という架空の世界の中では、そうなんです。という主張によって形づくられている部分においてブレはないので。自分はそれを許容し、作品として愉しませていただいた。

それにしても全員巨ニューという設定といい、ビバ半陰陽という設定といい、ホントわかりやすいなぁ。こんな飛び道具的小説をライトレーベルでGOサインを出した編集部に軽く拍手をしたい。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

武林クロスロード Book 武林クロスロード

著者:深見 真
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (4)

2007年6月 1日 (金)

猫ラーメン(2)

2巻目もまた、大将にギュンギュンきた。大将の暴走っぷりは実に楽しいのだけれども、しかし、そんな商売やってちゃダメー! もっと冷静になってっ! そして幸せになって! ヘンにだまされたり、しないで! と心の片隅で叫んでしまうのである。そういういたたまれなさのある、面白くかつつらいアンビバレンツなマンガなのである。

2巻になると、概ね、展開のパターナイズも完成し、4コマとして安定しているともいえるが、そのぶんマンネリ的縮小化しないよう、ネタの(というか大将の勘違い暴走っぷりに)インフレ化がおきているような気がする。でもって、いたたまれなさも2倍3倍なのだ。それはちょっとつらいんんですけど~。といいつつハニャ~という気持ちもアリアリ。

と、ネコ好きのココロを弄ぶひどいマンガだよ(笑)

それにしても猫カレーはどうよ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

猫ラーメン(2) Book 猫ラーメン(2)

著者:そにし けんじ
販売元:マッグガーデン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | トラックバック (0)

« 2007年5月 | トップページ | 2007年7月 »