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2007年5月22日 (火)

バニラ

導入部である第1章あたりを読むかぎりでは、ガンマニア臭がこれでもかというくらいに漂ってきているのだ。こういったディティールの書き込みは、好きならばこそということは判るが、こと物語として読む場合、突出したこだわりの文章はそこだけ浮いてしまって微妙にヒクものである。だが、本作については、読んでいるうちにそれも気にならなくなっていったのだった。つまりそれだけ話に引き込まれたっていうことだ。

テーマとしては「俺たちに明日はない」や「テルマ・アンド・ルイーズ」に代表される作品群に分類される破滅型の物語である。やむにやまれぬ事情により犯罪を犯し、警察に追われ、そして。。。というパターンのそれだ。物語としての展開はある意味セオリーどおりで、だからクライマックスに向けて話が進むにつれて、ふたりの楽観的な未来は到底想像することができず、だから「美しき死」に向けて一直線に話が流れている。ふたりの愛が完結するには「死によって幕を閉じる幸福」しかないだろうと、そうしか思えない。そんな結末が必然として感じられる程度に筆力があるということなのだろう。
さて。だから、そんな必然で終わるしかないという気持ちが一番強く感じているのだが、しかしそれでいいのか? ご都合主義の大逆転でもいいし、無様な生への執着でもいい。なんでもいいから、死ではない幕の引き方になってほしいという気持ちも想うのだ。死は美しいかもしれないが、唯一無二の回答であるべきではない。そう想うのは、実のところ主人公達に感情移入をしまくっているせいなのだ。本来の自分はそこまで他人の生に拘泥していない。そんな自分を変節させるほどの吸引力があったわけだ。

客観的に考えれば主人公はやはり犯罪者である。だが主観的視点によって主人公達の想い、心の動きが丹念に書き込まれているため、読者は(つまり自分は十分に感情移入するはめになり)、また警察側も単なる敵役ではなく、己の正義を貫くために冷静かつ情を持って対応する組織としてフラットに書かれており、純粋な悪人が存在せずボタンのかけ違いによる犯罪の悲劇という気持ちで読むこととなる。故にラストの感動につながるのだと思う。

物語の結末として、みっともないほどに愛することを選択し、自分の期待はいいほうに裏切られる。それは甘いなという気持ちもあるが、そのくらいの救いはあってもいいのだろうな、とも思う。

設定的には、別に日本である必要性はなく、現時点でも銃の所持が認められている国の現在の物語としてもよかったのに、とは思った。が、それではあまりにも生々しく、架空であることによるエクスキューズがないといけなかったのかなとも思う。実際、銃による犯罪が多発している海の向こうの国の話を聴くにつけ、必要以上に強力な殺傷兵器が普通に手に入る有様には疑問があるし、それを是とする世界はいかんだろうとも思う。だからこそ架空の日本が舞台である意味はあるのかもしれない。と同時に、警察機構や、家族関係等の主人公の心の動きを成立させるための設定として、日本であることもあるのだとも思う。

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