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2007年5月 9日 (水)

新釈 走れメロス 他四篇

森見節あふれる短編集。といいつつ、DT色満載の感じのやけに多いいつもの文体ばかりかというと、さらっと書いた短編もあり、様々な新たな顔が見ることができたともいえる。まあ、自分としてはモリミらしさを愉しみたいなあと思っていたところであり、そういう意味においては「山月記」と「走れメロス」が白眉だなぁとは思った。
短編集、といっても登場人物は斉藤なる人物を核に、主役になったり脇役端役になったりしながら登場して、作品全体の大きなまとまりを作っている。舞台時代も基本的には同じの連絡短編集であり、もっと云えば前作(?)「恋せよ乙女」と同じであり、本作だけでみてもひとつの大きな物語として読むこともできるし、また森見ワールドを形成しているともいえる。

(関係ないけれど、実は自分はワールドって作家を括る言葉が嫌いなのだ。なんか安っぽい感じがするし、そんな安直に括ってどうするとも思うからだ。でも、他にいい表現がないのでしかたがないんだけどね。ワールドって云って云いのはディオだけじゃん(うそです))

でもやはり基本的には元の作品に対するオマージュでありパスティーシュでもありモチーフでもあるという他に立脚して構築された物語であるためか、どことなく同人作品的な見かたがあったりして、それは悪いわけではないんだけれど、まあ作品自体の力としてはやや弱いのかなぁとも思うのであった。云いかえると余技的な感じとでもいおうか。その分、作者の力が抜けていていいという云い方もあるが、そもそも森見作品に方に地下欄はいった作品なんてないしねぇ。

で、結局自分はどうだったんだよ、ということだと、楽しかったっす。と。

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