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2007年5月 6日 (日)

Q&A

恩田陸はストーリーテラーである。(多少の偏向はあるものの基本的に)ジャンルフリーのエンターテナーで、だからそれぞれの好き嫌いはあっても飽きることはない。

今回は基本的にサスペンス系のミステリーといっていいのだろうか。事件的にはサスペンスといっていいだろう。だが、単なるそれではなく、事件はすでに終了しており、多視点からの供述による真相の判明という「藪の中」的展開で、そんなテクニカルな語り口、表現手法で無理やりねじ伏せられた感がある。
はじめは、普通に書いたらそれなりによくあるパニック系ミステリーを質疑応答形式で書くことで、謎が少しずつ違う視点からほぐれていって最後にすべてが明らかになって完結かなぁ、と思っており、事実そのとおりでもあったのだが、中盤以降、物語は主題となるスーパーマーケット事件の真相だけではなく、当初の事件を狂言回し的にそこにまつわる登場人物たちの別の物語を語りだす。それは、あるシチュエーションをモチーフとした連作短編集の味わいにも近い。さらに後半になると、事件の話を聞きだすインタビュアー達自身の物語へと変化していく。
最終的には、おそらく事件自身と、事件にかかわった者達の物語の完結とは、ややずれたところにある少女の物語、しかもスーパーナチュラルな要素が唐突に表出する(それは唐突ではあるが破綻ではない)。
読み終わってみれば、物語としても作話技法としても実にテクニカル。翻弄させられた。

恩田陸は元々の作品から叙情的なホラーミステリー系、あるいはSFミステリー系を得意とする作家のイメージがあり、社会的集団劇というよりはよりパーソナルな文章の書き手のイメージがあったのだが、本作品のように社会的(あるいは組織犯罪的ともいうが)ミステリーを書くようになったのだなぁ、と思うと引き出しがどんどん増加しているのだなぁと感慨深い。しかも多作家だしね。

まあ、本作はけして王道の書き方ではない。技法重視、叙述的確信犯な作品である。それを堪能すればよし、なのだ。

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Q&A Book Q&A

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