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2007年5月30日 (水)

ほしのあき2002-2007 超A級保存版

自分の中でほしのあきというマテリアルはどのようなポジションにあるのだろうか。ということを考えずにはいられない1冊であった。

と書くといろいろと思弁したように思われるかも知れないが(ないか?)、実際にはあまり大したことは考えていなくて、「別にそんなに萌えないよなぁ」という直観をどう説明したらいいのか判らないだけである。

たぶん、年齢や容貌や身体つき等、さまざまなアンバランスが生むギャップに引っかかってるのだろうけれど、それがイコール「あきちゃん萌え~~」みたいな感情は自分の中には生まれないということだ。だからといって嫌いなわけでもないんですがね。いや、好きですよ、はい。ただ、熱狂的にはならないし、なれないんだよなぁ、ということ。

と、そんな心情吐露は以上です。

写真集としては、20代から30代への微妙な変化を愉しむことができるクロニクル的1冊であろう。着エロ、コスプレ好きにはかなりたまらないのでは? とかね。

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ほしのあき2002-2007 ”超A級保存版” Book ほしのあき2002-2007 ”超A級保存版”

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うさぎの映画館

※注意! 本筋とは関係ありませんが作品の謎に触れる記述があります。

非常に丁寧につくられた青春小説(ってまた恥ずかしい形容を使わざるを得ない)でした。ジュブナイル小説ですよ。と、そういうカテゴライズでもいいのだけれど、まあ分別することにあまり意味はないから、それはそれ。

特に大きな事件が起こることもなく、不思議な出来事が発生することもなく、ごく普通の少女が、ちょっとしたきっかけで、自分の過去と向かい合い、そして明日に進んでいくことを確認する。そういう話である。
ライトノベルというエンターテイメントにおいて、ここまで平凡で日常の描写だけでいいのか? というくらいのなんにもなさ、ではあるのだけれど、しかしそれは叙事がないだけであって叙情は十分すぎるほどあるのだ。つまり、登場人物達の心情を丁寧に追いかけることで、語りかけるタイプの小説であると云うことだ。

現実において、謎や不思議などはそうそう起こるものではないというのは誰もが承知しているところであり、そういう日常を切りとる小説というもものあってしかるべきである。それは本来、少年少女向けの小説という若さという特権を持つ者達に発信されるべきカテゴリーにあり、そして、かつてはそういう小説を受ける枠があった。
しかし、現在のようにライトノベルという、よりドラマチックな(あるいはカリカチュアライズされた)、娯楽小説ジャンルに市場を席巻されてしまっている中で、本作のような良質だけれど「普通の物語」に対する受け皿な、かなり少なくなってきている。なくなってしまったといってもいいかもしれない。もっとも自分が知らないだけなのかもしれないけれどね。

ともあれ、そういう意味においても(?)、このようなタイプの物語がもう少し増えるといいなぁ、と思うわけである。

今回の、ラストのサプライズだけは、ちょっと驚いた。ああ、そうか、なるほどね。といった感じである。冒頭から、若い女性をいくら信頼するにたる人物だろうといって、それなりの年齢の男性におまかせってゆだねられる父親像が想像つかず、それが読む上で引っかかりになっていたのだけれど、なるほどそういう真相があったのか、伏線として生きていたのか、と、最後の最後でミステリーとその答えというフォーマットでの開陳があり、これにはやられた。心地よい驚きである。

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うさぎの映画館 Book うさぎの映画館

著者:殿先 菜生
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2007年5月28日 (月)

苺ましまろ(5)

毎度毎度ぼんよりしたマンガだなぁ(ほめ言葉)。なんの事件も起こらない、平凡な日々であることの幸せ。みたいな感じ? まあ本当にこれが平凡な日々といいきっていいのか、というと、実際はちょっと違うのだけれど。美羽みたいなんがいたら、そりゃアナタ、平凡とは程遠いんじゃあないでしょか。とも思うし。第一、近所の小学生をはべらせて悦にいってる女子校生が平凡ともいえないし。

まあ、そんな感じ。まったり。

しかしタバコはやめたほうがよい。ちゅーかダメ!絶対!

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苺ましまろ 5 (5) Book 苺ましまろ 5 (5)

著者:ばらスィー
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2007年5月24日 (木)

ヒャッコ(1)

基本的に元気なマンガは楽しい。登場人物たちが暴走すればするほどに、読んでいて「うーむ、これが若さか。。。」と一人ごちてしまう。いや、いい意味で。

学園ドタバタ群像コメディは、そのはじける若さ、青春の輝きだけで傑作足りえる要素を持つのだ(うーん、こっぱずかしい単語を並べ連ねてしまったが、つまりはそういう要素と効果について表現したいわけで、サブイボ立たない云いまわしがあったら教えてほしいっす)。

で、本作。登場人物がなんとも生き生きとしているのがいい。キャラ的に誰もひとりとして鬱屈してなくて、基本的に全員バカ! であるのがいいのかも。だって、うじうじしてないでしょ。多少の濃淡はあれども基本的には売られたケンカは買うぜ、べイベ。ノリが大事だぜべいべ。みたいな感じがただよっていてね。いいよね。
反面、そのせいで、キャラがビミョーにかぶってたりもするのだけれどね。特に第1話2話あたりは多少の混乱があるように思う。ま、それはご愛嬌。ある程度、回を重ねていけば役割分担ができてくるので、問題はないだろう。

あと、絵がいい。一見、さほどに上手いとも思えない(失礼!?)のだが、実は、線の走り具合や、構図のとり方が絶妙なのである。萌え的な絵ではないので、そういうのを求めちゃうとちょっと違うかとも思うが(といいつつそんなに流行からズレているわけでもない)、アップよりもロングの絵をきちんと描いてくるのは、それだけの画力あってのことなのだ。

ノーマークの表紙買いだったので、手に撮った自分をほめてあげたい。お薦め小雀。

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ヒャッコ 1巻 Book ヒャッコ 1巻

著者:カトウハルアキ
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2007年5月22日 (火)

バニラ

導入部である第1章あたりを読むかぎりでは、ガンマニア臭がこれでもかというくらいに漂ってきているのだ。こういったディティールの書き込みは、好きならばこそということは判るが、こと物語として読む場合、突出したこだわりの文章はそこだけ浮いてしまって微妙にヒクものである。だが、本作については、読んでいるうちにそれも気にならなくなっていったのだった。つまりそれだけ話に引き込まれたっていうことだ。

テーマとしては「俺たちに明日はない」や「テルマ・アンド・ルイーズ」に代表される作品群に分類される破滅型の物語である。やむにやまれぬ事情により犯罪を犯し、警察に追われ、そして。。。というパターンのそれだ。物語としての展開はある意味セオリーどおりで、だからクライマックスに向けて話が進むにつれて、ふたりの楽観的な未来は到底想像することができず、だから「美しき死」に向けて一直線に話が流れている。ふたりの愛が完結するには「死によって幕を閉じる幸福」しかないだろうと、そうしか思えない。そんな結末が必然として感じられる程度に筆力があるということなのだろう。
さて。だから、そんな必然で終わるしかないという気持ちが一番強く感じているのだが、しかしそれでいいのか? ご都合主義の大逆転でもいいし、無様な生への執着でもいい。なんでもいいから、死ではない幕の引き方になってほしいという気持ちも想うのだ。死は美しいかもしれないが、唯一無二の回答であるべきではない。そう想うのは、実のところ主人公達に感情移入をしまくっているせいなのだ。本来の自分はそこまで他人の生に拘泥していない。そんな自分を変節させるほどの吸引力があったわけだ。

客観的に考えれば主人公はやはり犯罪者である。だが主観的視点によって主人公達の想い、心の動きが丹念に書き込まれているため、読者は(つまり自分は十分に感情移入するはめになり)、また警察側も単なる敵役ではなく、己の正義を貫くために冷静かつ情を持って対応する組織としてフラットに書かれており、純粋な悪人が存在せずボタンのかけ違いによる犯罪の悲劇という気持ちで読むこととなる。故にラストの感動につながるのだと思う。

物語の結末として、みっともないほどに愛することを選択し、自分の期待はいいほうに裏切られる。それは甘いなという気持ちもあるが、そのくらいの救いはあってもいいのだろうな、とも思う。

設定的には、別に日本である必要性はなく、現時点でも銃の所持が認められている国の現在の物語としてもよかったのに、とは思った。が、それではあまりにも生々しく、架空であることによるエクスキューズがないといけなかったのかなとも思う。実際、銃による犯罪が多発している海の向こうの国の話を聴くにつけ、必要以上に強力な殺傷兵器が普通に手に入る有様には疑問があるし、それを是とする世界はいかんだろうとも思う。だからこそ架空の日本が舞台である意味はあるのかもしれない。と同時に、警察機構や、家族関係等の主人公の心の動きを成立させるための設定として、日本であることもあるのだとも思う。

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バニラ―A sweet partner Book バニラ―A sweet partner

著者:アサウラ
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2007年5月15日 (火)

とめはねっ!(1)

とりあえず、舞台が鎌倉ちゅーことだけで、ワンランクアップ。ビバ鎌倉!である。(といいつつ、鎌倉の高校イコール七里浜高がモデルというのも、絵づら的には納得することはするが、しかし、ちょっとありがち過ぎで芸がないのでは(スラムダンクしかり)と思わないでもないが、まあいいや)

自分自身、ここ数年、筆字書きに対してはけっこう興味があって、たまに筆を持ったりもする、そして「う○ち」とか「酔いどれ」とか「モー○ング娘。」だとか、腰抜けな言葉を紙に描いては愉しんでいたりするわけだが、そういうお遊び的な「書」っていいじゃないですか。
まあ、遊び字は自由で楽しいという言は、裏返せば書の基本ができていないことへの云い訳でもあるのだけれど、素人としてはあくまでも遊びの範疇なので、そんな程度でもいいさとも思っていたりする。
といいつつ、きちんとした字を書きたいなあと思う気持ちもあって、「道」的な精神論にならない程度に技術を磨くのはアリだよなぁ、と思うのだった。世の中も最近、書に対してスポットがあたり出していて、まさに今、旬!のマイナージャンルだよねぇ。マイナーっていえちゃうとことがなんともはや、だが。

今回の学園マンガとしては、ウォーターボーイズ系列のマイナージャンルスポ根系青春群像劇コメディ(相変わらず長い名称だ)であり、そういうジャンルに愛を感じる自分としては非常に楽しみなのである。
河合克敏のよさは、サークル活動の日常が楽しげである点である。帯ギュのときも、試合よりも文化祭などでのワイワイとしたバカっぽい学生ノリの遊び風景のほうが面白かったしね。そういう意味で、モンキーターンももちろん面白かったし楽しんで読んでもいたが、しかし、やはりもっとも「作家の資質が活きる」のは学園モノであろう。と、今回読んであらためて感じた次第である。

といいつつ、正直なところ河合克敏はスロースターターな作家でもあり、キャラをつかんで話にドライブがかかるまでに若干の時間がかかるのも事実。だから、今回の1巻では、それなりに面白いものの、顔見せ興行的な印象もあって、個々のキャラ立ちにまでは至っていない。もっとも、その予感はあって、例えば顧問の先生や、審査員のジーサンなどは、今後、キーパーソンになりそうな予感はある。同様にキャラが不安定で筆が走っていないところもあって、書き慣れていくまでにもう少し時間をください、ということなのかもしれない。

いずれにせよ、相変わらずいいネタをチョイスする河合センセイ。今回も期待しています。

ところで、柔道部の3バカ登場にはホロリ。

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とめはねっ! 1 (1) Book とめはねっ! 1 (1)

著者:河合 克敏
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2007年5月14日 (月)

冬の巨人

一気読みの面白さであった。もっともそんなにボリュームのある本でもないということもあってのことだが、文章構成が昨今のようなトリッキーさがなく、ストレートに物語を追うことができたせいであろう。
また、その物語についても、適度な速度感を持ちつつ、しかし日常的な風景を中心に描くことで、ヘンに勢いだけをつけて異世界ファンタジーの世界自体を主役に、し得ていると思う。そうなのだ。ファンタジー小説とは本質的にその世界(という設定)こそが主役となるべきものなのだ。戦士や魔術師などといったステレオタイプの借物の設定でゲームの追体験を縮小再生産することではない(まあ、それでも面白ければいいんだけど、往々にしてショボイ結果になることが多いからね)

不満がないわけではない。第3章までの巨人のアルミのようにゆっくりとした話の進み方、世界の摂理の解き明かし方に比べ、怒濤の展開となる第4章以降については正直、勿体ないというレベルではないくらいにあまりにも駆け足にすぎる。
世界の崩壊と再生という物語を、ヘンに修飾せず純粋な形でまとめようとしているのか、とも思うが、しかし、おそらく普通に描くつもりであるならば、3倍くらいの量が必要だろうに。

基本的に物語は、「どうしたか」だけを描いており、「なぜそうなったのか」という謎解きは巧みに排除されている。だから、レーナという重要なキャラであるべき人物についても謎の存在のまま、最後まで象徴として機能するのみである。第一、巨人とはなにかという根本的な謎についても、いっさいが不問なのである。あとがきで本人が書いているとおり、寓話としての機能としては十分に働いている。逆に寓話として成立させるために謎は謎のままとしているのだといえる。作品としても必要最小限で完結させているのもそのためだろうといえる。
とはいうものの、巨人の背に広がる移動都市という、とんでもない、しかし非常に魅力的な架空世界は(移動する都市という部分で云えばプリーストの「逆転世界」などがあるが)、非常に独創的かつ魅力的である。もっとその世界を知りたいと思う気持ちは当然で、かなり勿体ない。贅沢にアイディアを消費しているなぁと思う。

といいつつ、そんな世界の再生をテーマかつ結論にもってくる以上、ストーリーとしてはあまり広がるものでもなく、そういう意味では、このような収束が必然だったのかもしれない。

ともあれ、お勧めである。

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冬の巨人 Book 冬の巨人

著者:古橋 秀之
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2007年5月11日 (金)

天使の飼い方・しつけ方―本編には一部ファンシーな内容が含まれております。

これは、どう? うーん、正直云って辛かったなぁ、読むのが。

ようするにステレオタイプのツンデレ系ラブコメライトノベルで、しかも作品のテーマ(?)である、主人公の暴走空まわりっぷりが、書割で活きてない。ストーリー上の空まわりではなく、文章として空まわりなのだ。ちょっとねぇ。
結局、この手の話は、登場人物を如何に活き活きと描ききるかが大事であって、表層的な書き方だけではダメなのだろう。テンションがオーバードライブする感覚を、感覚として捉えて表現する。これはけっこう文章力がないとキツイ。実はハードルが高いのですよ。

そんなわけで、キャラがたってないドタバタラブコメというのは致命的でしょう。ね。 という主観的な感想を思うのでした。

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著者:淺沼 広太
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2007年5月 9日 (水)

新釈 走れメロス 他四篇

森見節あふれる短編集。といいつつ、DT色満載の感じのやけに多いいつもの文体ばかりかというと、さらっと書いた短編もあり、様々な新たな顔が見ることができたともいえる。まあ、自分としてはモリミらしさを愉しみたいなあと思っていたところであり、そういう意味においては「山月記」と「走れメロス」が白眉だなぁとは思った。
短編集、といっても登場人物は斉藤なる人物を核に、主役になったり脇役端役になったりしながら登場して、作品全体の大きなまとまりを作っている。舞台時代も基本的には同じの連絡短編集であり、もっと云えば前作(?)「恋せよ乙女」と同じであり、本作だけでみてもひとつの大きな物語として読むこともできるし、また森見ワールドを形成しているともいえる。

(関係ないけれど、実は自分はワールドって作家を括る言葉が嫌いなのだ。なんか安っぽい感じがするし、そんな安直に括ってどうするとも思うからだ。でも、他にいい表現がないのでしかたがないんだけどね。ワールドって云って云いのはディオだけじゃん(うそです))

でもやはり基本的には元の作品に対するオマージュでありパスティーシュでもありモチーフでもあるという他に立脚して構築された物語であるためか、どことなく同人作品的な見かたがあったりして、それは悪いわけではないんだけれど、まあ作品自体の力としてはやや弱いのかなぁとも思うのであった。云いかえると余技的な感じとでもいおうか。その分、作者の力が抜けていていいという云い方もあるが、そもそも森見作品に方に地下欄はいった作品なんてないしねぇ。

で、結局自分はどうだったんだよ、ということだと、楽しかったっす。と。

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新釈 走れメロス 他四篇 Book 新釈 走れメロス 他四篇

著者:森見 登美彦
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戦う司書と荒縄の姫君

とりあえず一区切りということで全体を見返してみると、当初、「恋する爆弾」において、ジョジョ的超人バトル物語のフォーマットで時間テーマ的なラブストーリーという叙情を切りだされたせいで、それが本質なのかと思ってしまったのだが、1冊目はやはりイレギュラー的な作品で、この物語の本質は、叙情ではなく叙事であった。
その後、やっぱり普通の超人バトルかよ、と思ったところもありはしたのだけれど、実はそれもまたミスリードでだったことに気づく。まあ表面的な表現は超人同士のバトルではあるのだけれど、実際に描きたいのは「超人」ではない。組織間の戦いである。そして組織間の戦いは個々の戦闘ではなく、いかに仕掛けを構築していくかであり、それらをいかに回避し出し抜いていくかである。云い換えると、身体等の動きを文章でトレースするのではなく、トラップ(伏線)とその結果を描く、つまりは物語そのものを語ることに他ならない。つまりはストーリーテラーとして普通に当然のことをしているということなのだが、実際それが行なわれていない作品も多く、だからこそ際立っているのだと思う。

世界観の面白さとして、異世界でありながら適度に発達した文明という、ないわけではないがあまりポピュラーではないユニークな世界、そしてその根幹にある「本」。この独創においておそらく、他のライトノベルの追随を許していないと自分は思う。まあ本の設定については、前作「追想の魔女」で指摘したとおり、ヘンに入れ子構造をつくり配置を誤ると時性体を混乱させてしまうことと、真相は実はこうだったという過去を単に提示することに終始してしまうという、ふたつの危険性を孕んでいる。今のところ大きな失着はないので、さほど心配はしていないが、ともあれ新たなアイディアを自在に使うためにはもう一工夫ほしいかなといったところだろう。

読んでいていつも頭の片隅に想い描かれていたのは実は「ジャイアントロボ・ジ・アニメーション」なのであった。武装司書と新溺教団との最後の戦いという全編クライマックス構造と、バカバカしいまでの超人能力(今回はくじら使いボンボにビックリした)の設定に、かなり近しいものを感じている。いずれの作品も、ありそうでない作風。という点でも似ているのかもしれない。

ともあれ。主要な人物が入れ替って(?)繰り広げられるであろう新展開の次巻。非常に楽しみである。

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戦う司書と荒縄の姫君 Book 戦う司書と荒縄の姫君

著者:山形 石雄
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2007年5月 8日 (火)

邪眼は月輪に飛ぶ

 相対する敵役フクロウの禍々しさ、主人公の真直ぐな精神。どこをとっても藤田和日郎節! 面白し! この手の伝奇的アクションモノは、マンガにせよ小説にせよ世の中にあふれまくっていて、それはジャンルそれ自身が面白さを持ち強さを持っているからではあるのだろうけれど、しかし、だから、かなり飽和状態であることもまた事実。そんな中、そのはしり(でもないのだけれど)である「うしおととら」の作者はやはり一味違うのであった。

 やっぱり、絵の力なのだろう。流行とは逆行する独特の絵柄は、おそらくこの手の話だからこそ成立すると思う。この手の話においてもっとも効果的に機能するともいえる。空を舞い、毒をまき散らすふくろうの絵。その一枚の絵の持つインパクトだけで、このマンガは成功している。と自分は思う。

 作者がふくろうを悪者にして云々というあとがきを書いている。確かに自分もそう思うのだが、ふくろうは賢者のイメージが強く、悪意ある獣として似つかわしいかという気持ちもないわけではない。しかし、アイヌにおいては、ふくろうは神の一人だし、そこから連想される、「荒ぶる神」としての存在として「ふくろう」を配置することは、説得力のある設定だとも思う。作中でも、意図的に災いをもたらしている悪意としての存在ではなく、台風や地震のような天災的なもの(を人間が逆にこじらせてしまった)として描かれており、アニミズム的に非常に納得できるのではないだろうか。

「そして物語は続く」的なラストが自分としては好きだ。そして、せっかく一冊のまとまりとして完成・完結されているのだ。その余韻を続編にはつなげないでほしいなぁと思う(でも出たら読んでしまうんだろうなぁ)。

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邪眼は月輪に飛ぶ Book 邪眼は月輪に飛ぶ

著者:藤田 和日郎
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2007年5月 7日 (月)

Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパーク(7)

もはや定番。安定して楽しめるストリート系ハードボイルド短編集。という以外にいいようがない。

マンネリ化しているといえばそのとおりである。話が単調といえばそれもそのとおりである。でも、よく知ったヒーロー(マコっちゃんやタカシやサル)が、協も活躍している様を知るということの楽しさは、実際に面白いんだからいいじゃねーか、というところはあるのだった。実際、1冊を一日で、とゆーか、数時間で読みきってしまうくらいの読みやすさと面白さであるのだから、しかたない。

今回、ちょっと気にかかったのは(否定的な意味ではなく)、文体としてのマコトの独白がなんか馴れ馴れしいというか甘いというか、そんなゆるさが出てきていること。ひいては作者の気持ちの変化でもあるのだけれど、どんな理由であろうか。

この物語にもいずれ決着をつけるときがくるであろう。それはマコトたちが大人(精神的には大人だが社会的にはモラトリアムだから)になったときであろう。それがいつかは判らないが、そのときにどういう結末とするのか、楽しみではある。

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Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7 Book Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7

著者:石田 衣良
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2007年5月 6日 (日)

愛 am BEST

大塚愛はいい! と、いまさらな科白ではあるが。
自分と大塚愛の出会いは(すごく普通で申し訳ないが)「さくらんぼ」である。デビュー曲ももちろん知ってはいたが、「愛ちゃん萌え~(と云う感じとは実際は違うのだけれど)」となったのは、さくらんぼの「ぃぇい!」にあることは正直に告白したい。もともとガールズポップ系が好き、アイドル好きとしては、このようなアゲアゲのアッパー系の曲にはまんまとはまってしまうのはしかたのないことであろう。
大塚愛は実際には、アップテンポの曲よりもスローバラードの曲のほうが多かったりもして、しかもいい曲が多かったりして、実はオトナなアーティストなんだよなぁ、とも思ったりもして。とかいいつつ、たまにハジケるオバカな曲にまたまたくらっとだまされたりするのだ。ああ。

ベストで通して聴くと、そんなアーティストとその時々の自分自身の想い出とが混在して、ああいろいろあったよなぁと思うことしきり。
やはり一番の想い出は「さくらんぼ」で、まあ、あまり具体的には書けないのですが、告白すると、当時、自分はとあるオトナ系の某イベントに行く機会が多く、そのときによく使われていたのですよね。そんなこんなで、ヘンな刷り込みができているのかもしれません。ま、人生いろいろで、いーじゃん。

ちなみに実は自分として一番グッと来ている曲は最新曲の「CHU-LIP」なのですが、それは収録されていないのでした。残念。ベストではなくそれはそれで買えっチューことですかね。

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Q&A

恩田陸はストーリーテラーである。(多少の偏向はあるものの基本的に)ジャンルフリーのエンターテナーで、だからそれぞれの好き嫌いはあっても飽きることはない。

今回は基本的にサスペンス系のミステリーといっていいのだろうか。事件的にはサスペンスといっていいだろう。だが、単なるそれではなく、事件はすでに終了しており、多視点からの供述による真相の判明という「藪の中」的展開で、そんなテクニカルな語り口、表現手法で無理やりねじ伏せられた感がある。
はじめは、普通に書いたらそれなりによくあるパニック系ミステリーを質疑応答形式で書くことで、謎が少しずつ違う視点からほぐれていって最後にすべてが明らかになって完結かなぁ、と思っており、事実そのとおりでもあったのだが、中盤以降、物語は主題となるスーパーマーケット事件の真相だけではなく、当初の事件を狂言回し的にそこにまつわる登場人物たちの別の物語を語りだす。それは、あるシチュエーションをモチーフとした連作短編集の味わいにも近い。さらに後半になると、事件の話を聞きだすインタビュアー達自身の物語へと変化していく。
最終的には、おそらく事件自身と、事件にかかわった者達の物語の完結とは、ややずれたところにある少女の物語、しかもスーパーナチュラルな要素が唐突に表出する(それは唐突ではあるが破綻ではない)。
読み終わってみれば、物語としても作話技法としても実にテクニカル。翻弄させられた。

恩田陸は元々の作品から叙情的なホラーミステリー系、あるいはSFミステリー系を得意とする作家のイメージがあり、社会的集団劇というよりはよりパーソナルな文章の書き手のイメージがあったのだが、本作品のように社会的(あるいは組織犯罪的ともいうが)ミステリーを書くようになったのだなぁ、と思うと引き出しがどんどん増加しているのだなぁと感慨深い。しかも多作家だしね。

まあ、本作はけして王道の書き方ではない。技法重視、叙述的確信犯な作品である。それを堪能すればよし、なのだ。

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Q&A Book Q&A

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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2007年5月 2日 (水)

チーズスイートホーム(4)

相変わらずチーはかーいーなー。というネコ好きのためのマンガであります。たしかにコネコってああいう行動ばっかするからなぁ(例、箱に入って出られない。高いとこに上って降りれない 等々)。うわ~ん、ネコ好き回路がオーバードライブだよ。

ネコ、飼っちゃおうかなぁ。と、ついやっちまいそうな気にさせるのでした(ま、飼わないけどね)。

ちなみに、自分はひぐま猫が一番の推しだったので、もう出番がないのかなぁ、と思うとチーと同様なんか物悲しくなってしまうのでしたとさ。

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チーズスイートホーム 4 (4) Book チーズスイートホーム 4 (4)

著者:こなみ かなた
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