« タビと道づれ(1) | トップページ | ミミズクと夜の王 »

2007年4月16日 (月)

幽霊人命救助隊

バカミスですなぁ。幽霊が人命救助という基本設定からして、かなりの暴投悪球打ち。そして、文中のそこここに散見されるスラップスティックなギャグやマンザイ的な言語ギャグ。いやぁ、バカだなぁ。ただそれが前面に押し出てきて作品全体のトーンは、普通(?)のエンターテイメント小説から逸脱はしておらず、(そりゃさすがに嘘くさすぎるんじゃないの?的)バカっぽさまでには陥っていない。そのバランスは上手いと思った。

物語としては自殺を食い止めるという大目的を刻々と追うという形式になっていて、その原因として、いじめの問題やうつ病など現代社会の課題を提示している。社会的要素を導入することによって、専門知識小説としての面白さが出て、内容にリアリティが増し(増してるかなぁ?)、かつ話がマンネリ単調になることを防ぎ、あわよくば読者への問題提起もできていて、これも上手いな、と思った。
ただその分、若干、教養小説っぽい印象にもなってしまっていて、その按配は難しいところだなぁと感じた。まあ、上述のバカ部分とで相殺というところだろうか。

ラストについては、概ね予想どおりの幕の閉じかたで、十分納得はしているのだけれど、ただ、個人的に「死」というものに対する概念として「永遠の別離」の他に「存在/記憶の忘却」があると思っており、実のところ後者のほうがより大きなウェイトを占めている。故に、このラストは、実のところハッピーエンドではないのだ。もともと死者が主人公なんだから、ハッピーな終わりかたなどないんだろうけれど、ね。逆にヘンにハッピーエンドにしたら、物語としてのバランスがくずれてしまうだろうとも思うのだが。なかなかベストな選択というものはないですね、ということだ。

とりあえず、読んで正解。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ←CLICK!

幽霊人命救助隊 Book 幽霊人命救助隊

著者:高野 和明
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« タビと道づれ(1) | トップページ | ミミズクと夜の王 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 幽霊人命救助隊:

» 幕末維新の謎 [幕末維新の謎]
幕末維新の謎について 西郷、大久保、勝、竜馬…英雄たちが駆け抜けた激動の幕末維新史。 歴史好きのあなたになら、面白くてためになること満載の教養講座です。 [続きを読む]

受信: 2007年4月16日 (月) 14時44分

» メインでやっているSNSがあるのでよかったら参加してください。 [マイフレンドになってださい]
マイフレンドが全然いません・・・招待するのでよかったらフレンド登録お願いします。 [続きを読む]

受信: 2007年4月30日 (月) 13時02分

« タビと道づれ(1) | トップページ | ミミズクと夜の王 »