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2007年4月24日 (火)

イニシエーション・ラブ

注意! 文中に作品の本質に触れる書き込みがあります。未読の方は要注意。

驚愕のラストというふれこみ事前情報が多すぎたせいで、読む前からかなり構えてしまったのであった。
例えば。「主人公が女性だった」あるいは「老人だった」はたまた「すべては妄想だった」、エトセトラエトセトラ。とにかく「これまで積み上げていた物語は一体なんだったよフザケルナ卓袱台返し的どんでん返し」を、半ば期待してしまったところもあって、そういう意味において、なんだ、普通じゃんか、と思ってしまったのだった。
確かに、時間軸をミスリードさせることによる叙述トリックで、読み終わり、なるほどそうかと、まんまとだまされたのは事実で、このエピソードは実はこうつながり、こう動いていたのかという確認するために、読み返すのも一興だろう。そうしたい気持ちはよく判った。

しかし、だ。それはそうとして、だ。自分は、とてもじゃないが再読する気にはならなかった。少なくとも、今それをするにはあまりにもキツイなと思った。これは作品のよしあしが理由ではない。本作で描かれている男性の身勝手、女性の打算が、自分にとってあまりにも生々しくイタイ内容であったせいだ。ある意味ホラー小説といってもいいかもしれない。
ここで自分の真情や過去をを吐露することは、そんなに面白いものでもなかろうから、省く(思わせぶりと云わば云え、だ)。誰しも絶対に傷はあるはず、だから判っていただけると思う。
ひとつだけ具体的なナイフを例示するなら、ヒロインが主人公に「たっくん」というニックネームを付けた理由に思い至り、そしてそれが主人公のうっかりした発言より前であったことに気づいた時点で、背筋が寒々とした。そういうひとつひとつの純愛的エピソードの裏に隠れた真実。それが現実なのだ。そしてそんな経験は二度とゴメンだ。

そんな生々しい感想を持ったということは、翻ってみれば本作が見事にリアリティのある作品であることの証明となるのだろうか。

いずれ、自分がそんな過去もあったね、と振返ることだできるくらいに老成したら、再読することもあるのかなぁ。

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