世界の中心、針山さん
なんとなくノーマーク、というか食わず嫌いだった成田作品。今回ちょっと読んでみようかなという気になって、挑戦してみたのだけど、ああ、なんともったいないことをしていたのだろう。もっと早いうちに読んでしかるべきであったぞと、反省することしきりである。つまり。ものすごっつい面白かったのである。
なにより文章に力があるのだ。吟味された言葉を選んでいて、よくあるライトノベル的な甘さはない。かといって軽妙さがないわけでもなく、非常に読みやすいのである。おそらくは登場人物の行為行動といった外面と、登場人物の心の動きといった内面を、どう書き込むと読者にきちんと伝わるのか、ということを先天的に知っているのだろう。
単純なおのまとぺに頼らず、言葉で伝えることを基本としていることも好感度アップのポイントであろう。このことが逆に、話が盛り上がるパートでおのまとぺ的な表現を挿入した際の効果を増幅させているのだ。しかもタイポグラフィカルな描きによって書かれた文字による認知だけではなく、絵づらの直感による情報となっている。
物語作話技術として(いい意味で)非常にセオリーにしたがっている。具体的には「魔法少女」を例にあげるが、これは明らかに泣かせるための常套手段だよな、と思うわけだ。しかし、なまじ読ませる力があるからぐいぐいページを繰ってしまい、故にまんまと泣かせるポイントに“はまる”のである。正直泣きました。
事ほど左様に手を変え品を変え、お題拝借的に物語が進む。最終話ですべての出来事が収斂し、決着する。その見事さ。いや、本当になんでいままで読まなかったのだろうね、自分。
世界の中心、針山さん 著者:成田 良悟 |
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