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2007年2月28日 (水)

クリア・ヴォイス

なんとなく好感の持てる話だった。なんとなく。アイディア的にもストーリーテリング的にも物凄い吸引力があるわけではなく、突出したところがあるわけでもない。しかしステレオタイプの平凡な物語というほど、凡庸ではなく、相応のオリジナリティはある。つまりは、いろんな意味において非常に素直な話で、そこがよかったのだろう。この物語のように、職業小説というか、(探偵という特殊な)仕事を通してちょっとだけ成長していく物語は、ヘンにトリッキーであったり、屈託していたりするのではなく、ストレートにシンプルに語っていくことが似つかわしい。それに上手くはまったということなのだろう。

根幹となるアイディアについては、実のところちょっと「?」なところがあって、国が歌手を育成保護するという設定にやや無理があり、それが物語上、様々な事件に展開していく中で、なんでそんな大事になっていくのかがずっと引っかかったまま話が進んでいく。翻って考えれば、きっとそれまでの大仰な事件が成立しなければならない真相があるのだろうと、容易に想像できてしまうのだが、そのへんの語り口としての処理の仕方が、いまひとつ読み手として不安な心持のままクライマックスまで引っ張られてしまった事に対して、もうワンクッション、フェイクをかませてほしかったように思う。が、それはちょっとないものねだりだろうか。

ともあれ、(ラストのすがすがしさも含めて)好感が持てるジュブナイルだったと思う。

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クリア・ヴォイス Book クリア・ヴォイス

著者:飯田 雪子
販売元:ソフトバンク クリエイティブ
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2007年2月26日 (月)

モノケロスの魔杖は穿つ(2)

結論から云えば、全然楽しめなかった。前巻を読んだときもいまひとつピンとこなかったこともあり、何故そう思ったのかを検証してはみたのだが、そのときのキャラクター不在、環境設定に関する頭でっかちな構成によるもの、という感想は、的外れではないと今でも思う。しかし、なんのことはない、文章構成力というか、安定性というか、ようするに書きっぷりの問題なのだった。

まず、登場人物の表現。リアリティがあるとかないとかいう前に、キャラクターが安定していないのだ。感情の変化レベルでは説明できない思考/嗜好/志向のブレが大きすぎて、場面ばめんでまったく違う人物になってしまっている。唯一、ブレの少ない魔術師ですら不安定。おかげで読み進めていくのが非常に難しい。この不安定さは文章構成においても発揮されている。重くて硬い文体で進んでいたかと思いきや、急にライトノベル的ボケやおちゃらけた文章が登場してきて、それまでの文章としての流れを分断してしまう。また、隠匿された町からいきなり海に舞台が移るが、エクスキューズもなにもなくけっこう(悪い意味で)驚いた。以上、すべからく本として「読まれる事」を意識しているのかどうかという、根本まで邪推してしまう。
事程左様な感じで、結果、スムースにストーリーを追う事が(少なくとも自分とっては)かなりつらく、よってせっかく面白げな世界観や場面設定を展開しているにも関わらず、それが生きてこない、伝わらないのである。書きたい事とそれを実際に書き表す事のアンマッチがあるのだ。

この作家の本質は、戦略と交渉なのだと思う。あるいは策謀史観、世界を法則によって理となすタイプの作家なのである。その点については非常にユニークであり、面白いなぁとは思うのだけれど、如何せんそれを文章に具現化するのが得意ではないのではなかろうか。直接作文するのではなく、設定等を考え、提供する側にまわるほうが生きるのではにないか、とも思う。

繰り返しになるが、この独特の世界観は面白い。ヘンに形而上学的、あるいはオカルティズム的で、非常にユニークである(大雑把に括ればエヴァ的とも云えるか)。もっとその設定をしゃぶりつくしたいぞ、とも思う。しかし、(申し訳ないが)そのために文章として表現されたものに対してイラつくのも不本意だと思う。

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モノケロスの魔杖は穿つ 2 (2) Book モノケロスの魔杖は穿つ 2 (2)

著者:伊都 工平
販売元:メディアファクトリー
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2007年2月24日 (土)

capeta(13)

例によって物語途中なので簡単に。

相変わらず熱い物語継続中。といいつつも、今回は次巻の因縁のレース激突に向けての前振り的な感じで、秘めた熱さといったところだろうか。前巻からちょっとだけ時間が進んで絵づらも若干歳とった絵になっているのも面白かったな。

ところで、曽田マンガの特徴は前にも書いたと思うが「天才が才能を開花していく」ところにある。努力はあるけれど、平凡な人間が天才になるのではなく、あくまでも、生まれながらの天才がその才能を発揮する術を学んでいく、というもの。それはけして主人公カペタを指すだけではなく、ノブについてもいえるのだ。いや、いえるべきなのだ。が、今回、ノブは秘めすぎて全然活躍してないんだよね。自分、ノブ推しだったりするので、そこがちょっと悲しいのであった。

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capeta(カペタ) 13 (13) Book capeta(カペタ) 13 (13)

著者:曽田 正人
販売元:講談社
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2007年2月22日 (木)

ハロリア!

話題の平成の黒船、リア・ディゾンの写真集である。昔何かで読んだことがあるのだが、男性(に限らず?)偶像(異性という意味)にあこがれる際、自分から遠い距離の容姿を選ぶ、という仮説がある。例えば、昔の日本人だったら外国人、特に金髪碧眼など日本人ともっとも離れた存在を求める。しかし時代が進むにつれ、外国人がそんなに遠い存在ではなくなってきてからは、それぞれからの等距離であるハーフに美しさや憧れを感じるようになった。というそんな説であるが、これを読んだとき、ああ、そうだかもなぁ、とかなり納得した記憶がある。

世界の距離が、現実世界、仮想世界含めて、非常に近くなっている現在、そして趣味嗜好の多様化が極限まで広がっている現在、においては、実のところ憧れの距離感というものは個々人の中にしか存在せず、ゆえに共通項としてのアイドルというものは存在しにくいのは事実だろう。しかし、その中においても最大公約数的な偶像素というものは残っているように思う。

さて。リアである。現在の人気は、実は東洋の血が入っているための西洋でも東洋でもあるという容姿にあるのではなかろうか。と思うのだった。同じことがベッキーにも云えるのだけれど、容姿としての西洋風東洋というのはやはり今でも強い吸引力を持っているように思う。
といいつつ、そんなこんなで現在の自分は、実は東洋人顔、日本人顔に一番惹かれるのだけれど、それは一周しちゃったから、なのかもしれないなぁ、と思うのだった。

さて、以上はあくまでも容姿的な点に関してのお話なのであった。情報量の爛熟した現在社会においては、アイドルとは実は外面だけではなく内面、どういうキャラクターであるかが重要なポイントだったりするので、上記仮説がくずれていった理由はそこにもあるように思う。

あ、写真集自身の感想は、なんかハロプロの写真集みたいでした。個人的には洗濯かごに入っている猫みたいな写真が一番のお気に入りです。
あと、話は変わるが、リアの口元って、やぐちに似てると思うのだけどどうでしょう?

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リア・ディゾン写真集「ハロリア!Hello! Leah」 Book リア・ディゾン写真集「ハロリア!Hello! Leah」

販売元:集英社
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2007年2月20日 (火)

世界平和は一家団欒のあとに

超人家族の非日常的日常という設定は実にライトノベル的である。先行例としてなにがあるのかといわれると、急には思いつかないのだが(「Mrインクレディブル」とか?)、おそらくこのような設定が堂々と語られることができるのは現在ではライトノベル(あるいはマンガか)でしかありえないのではなかろうか。しかし、そのようなベタな設定ではあるが、物語の展開やテーマは、実はしごくストレートな家族の物語であった。多分に内省的になりがちな物語は、ある意味(もうひとつの潮流の)ライトノベル的ではあるのだけれど、設定の破天荒さと同様のテンションではない。そのギャップさが自分にとっては非常に魅力的であったのだった。
設定の奇想っぷり、バカっぷり。しかし語り口やテーマは直球。そういう話が好きなのだ。オレツボストライクなのも仕方のないことなのである。

あえて云うなら、クライマックスが動的にも静的にもちょっと腑に落ちないところはあったりするのだけれど、シンプルにしてストレート、かつナイーブな文章が、上手くはまっていたので、よしとしましょうか。

ライトノベルの大きなカテゴリーとして「セカイ系」がある。世界を守る。世界の敵を倒す。という設定において、世界イコール登場人物の手の届く範囲、主観敵把握としての世界であるという、実にナイーブな世界観を指すと、自分は解釈しているのだが、さて、この物語においては、超人家族という設定上、世界を守るという行為を行うわけだが、ここでいう世界は、「セカイ系」の世界ではなくて、リアルな世界(イコール地球であり宇宙である)というところが、逆に面白いなと思った。本来、世界という言葉が指す意味が一周回って元に戻ってしまったというところだろうか。

まとめとして、この物語はキャラもそれなりに立っているが、物語としてこれできれいに完結している。これ以上、広げると単なるキャラ小説に陥ってしまう。だから、続編などの色気を出さずに、1冊で完。と美しくまとめてほしいなぁ、と切に願うのであった。

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世界平和は一家団欒のあとに Book 世界平和は一家団欒のあとに

著者:橋本 和也
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2007年2月19日 (月)

扉の外

ゲーム化された閉じた空間での心理サスペンスといえば、映画だったら「CUBE」が連想される。本作も基本的にはその系譜に入るのだろう。とはいうものの、すべての謎を設定に支配されており、その解決あるいは脱出がクライマックスになるのかな、と思いきや、第2章で話は違う様相を帯びてくる。具体的には、閉鎖された室内から、別の世界への広がりがあり、設定との闘いから、プレイヤー同士の戦いへと変わるのだ。個人的にはその展開はそれまでの個々の登場人物の心理劇から、よりストラテジックにゲーム化された世界となっていて、ライトノベル的だし、ちょっともったいないなと思わないでもないが、まあそれはそれで面白かった。

全体的な基調としては主人公のクローズドサークルに対する忌避感と脱出にある。茶化し気分込みで云えば「この支配からの卒業byオザキ」というところなのだが、それはそれとして、冒頭からドロップアウトしてしまうためにトリックスターにならざるを得ず、ゆえにサークルに小波が立ちまくる展開となり、構成としてはなるほどと思うところではある。(だたし、現実問題としてそんなに短慮な行動をするとは思えないという気持ちもあるが)

エンディングのアンチクライマックスは、もう少しストーリーテリング的にきっちとした決着があってもいいのでは、という気持ちと、状況のみあれば物語は成立しているというという気持ちもあって、正直自分でも微妙ではあるのだけれど、判りやすくオトサナイという心構えはけっこう気に入っている。

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扉の外 Book 扉の外

著者:土橋 真二郎
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2007年2月15日 (木)

狼と香辛料(4)

4作目ともなれば、書き手も読み手も安定してきており、安心して楽しむことができるというものであろう。剣の登場しない、商売業界が舞台となる異世界ファンタジーであるが、よくこれほどにネタのバリエーションがあるものだなぁと感心する。今回は、契約内容にかかる違法不当な要求への組織対応といったところだろうか。これまでが主人公ロレンスに直接降りかかってきた困難とその解決というパターンだったのだが、今回はトリックスターというかトラブルシューターというかそういう役割となっており、婉曲的に主人公の商人としての成長が現われているとみるのはうがちすぎだろうか。

そんな横軸に対して、ヒロイン(?)ホロとロレンスの関係という縦軸は相変わらず、チビチビと近づいていくような、いかないような、という微妙な仲で、それがよいと云えばよいし、しかしじれったいといえばじれったい。お互い搦め手会話だからねぇ。

作者が考えている最終的な物語の終着点は(希望的観測はできるし、順当な落としどころのセオリーも想定できるが)まだ見えないが、大きな流れとしては起承転結としては承も中盤には来ているあたりだろう。そろそろ大きな動きが出てもいいのではなかろうか。もっとも、本作で終了となっても、それはそれで成立しているような気もする。

次の展開が楽しみではある。

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狼と香辛料 (4) Book 狼と香辛料 (4)

著者:支倉 凍砂
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2007年2月14日 (水)

のだめカンタービレ(17)

のだめ、今回も好調。必要な登場人物は出つくし、物語の終着点もなんとなく予想ができるまでになってきた。いよいよ物語の折りたたみにかかったというところだろうか。

ま、話の途中なので、簡単な感想だけにするが、TVドラマがかなり秀作だったせいでマンガを読むときに気持ちが引きずられるかなぁと思ったが、意外とマンガはマンガとして読んでしまいました。

あと、千秋のツンデレっぷりに微笑ましさを感じましたねぇ。

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のだめカンタービレ #17 (17) Book のだめカンタービレ #17 (17)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
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2007年2月13日 (火)

逃亡日記

ビッグマイナー吾妻先生のマンガじゃない、日記(正確には日記ですらなく対談である)シリーズ。失踪日記前後の顛末やデビュー当時からの諸々を語っている。が、しかし。その語り口たるや、饒舌とは真逆の極北、ブッキラボーにも程があるという感じで、それが対談本としては非常に新鮮であった。あくまでも活字で表現されているという限界があって、実際にはもっとほがらかおおらかな感じだったのかもしれないけれど。でも、なんとなく素の作家の姿が出ているようで面白かった。あまり饒舌な作家っちゅーものなんか胡散臭いしね。

ところで、面白いなぁと思ったのは、ふたりと5人に対する作家のスタンスで、相当に嫌だったのだろうと、文面から推し量れるのではあるが、しかし、自分は好きだっただよねぇ。それもかなり。なんかあの「ちったかたったたー」みたいなノーテンキな艶笑譚の雰囲気が子供ゴコロにフィットしたのであろう。実際、かなりヰタセクスアリス的な作品かもしらん(もちろん、コレだけじゃあないけれど)。作品をどう解釈するかは読者の仕事だからね。作品と作者と読者の関係ってそんなもんなんだろうねぇ。

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逃亡日記 Book 逃亡日記

著者:吾妻 ひでお
販売元:日本文芸社
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2007年2月11日 (日)

スプライトシュピーゲル(1)

そして、かくして、もうひとつの、シュピーゲル。ですわーーーー。

オイレンよりさらに読みにくい文体。記号修飾だけではなく、ルビ修飾までも。正直キビシイっす。追いきれないっす。ストーリーはそれなりに面白いのかもしれないけれど、楽しめるまでに身体がついていかないっす。歳? 歳なの!? 一話はさほどに長くはなく、本当にひとつのエピソード(というよりも事件か)が発生し出撃し撃退する。というだけで、伏線もフェイクもない。そういう意味ではすごくストレートな構成なんだけどね。まあ、慣れればそんなにつらくもないんだけどね、ってオイレンの感想でも同じ事いってたな、自分。

物語的にはやや時代を遡っての物語ということになるのだろうか。ただ、より権謀術数色が強くなっている気がする。それも単に話を(意図的にだろうとは思うが)膨らませようとしていないせいで、少女たちの後ろでおこっている事件が目立つせいかもしれないね。

またSFスーツじゃないってのもマイハート=↓。それはどーでもいいか。

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スプライトシュピーゲル 1 (1) Book スプライトシュピーゲル 1 (1)

著者:冲方 丁
販売元:富士見書房
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2007年2月10日 (土)

東京夜話

自分が思っていた、いしいしんじという作家は、ほんの少し現実とはズレた架空の街を舞台にした寓話を描く人という印象だった。しかし、この作品は現実の東京を舞台にしている。そして現実の中にひっそりと紛れ込んでいる非現実、それもあからさまなまでの幻想を描き出している。それはまるでトライライトゾーンや世にも奇妙な物語タイプの作話であり、だからなのか読んでいてすごく既視感があったのだった。あ、だからといってよくなかったのではなく、むしろ幕の内弁当のような楽しさがあったのだった。

一言で云って若いなぁ、という読後感であったのだが、そう感じる理由は、どの話も、現在のさらっと不思議を語るいまいしんじと比べると、かなり文章技法のテクニックに走っているせいであろうか。もちろん面白いのだけれどややテクニックが目立ちすぎている(それが悪いわけでも失敗しているわけでもないのだけれど)せいで、作者のがんばりを意識してしまうのだ。まあ、それも込みで面白いのだけれどね。
とにかく、幻想的であったり人情噺であったり随筆風であったりと、手を変え品を変え読者を楽しませてくれることは事実だ。いや、実のところ書いている作者のほうが楽しんでいたに違いない。そう思わせる作品であった。作者自身が自分の中をいろんな引き出しガサガサあさっては宝物を見せてくれているような気がする。

もともとこの短編集が、東京の街を題にしてのお話というお題拝借的な構成であることで、こういう形になったのかなぁ、とも思うなぁ。物書きってそういう軽いしばりというか、ハードルがあると燃えるんだよね。逆に書きやすいというか、ネタを転がしやすいというか、決まり事をを基点としてバリエーションを広げやすいというか。ヨーヨーが手に固定されているから逆に勢いよくいろんな方向に投げては戻ってくる。そんな感じ? うーん全然判りにくい喩えだね。こりゃ。

自分はダッチワイフの物語(新宿)のファンタジーとホームレスの物語(浅草)のドラマ、そしてアングラバーの物語(田町)の祭りに、ぐっときたが、読む人によって、そして読むタイミングによって、ヒットするエピソードは変わるのだろう。そして、おそらくは繰り返し読んでも楽しめる話であろう。

それはそういう本である。

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東京夜話 Book 東京夜話

著者:いしい しんじ
販売元:新潮社
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2007年2月 9日 (金)

オイレンシュピーゲル(1)

自分=基本的に、フェティッシュ/ビザール→SFスーツと呼称。いわゆるキャットスーツともいうね。が、好きなわけで。とりあえず、その絵づらに萌えておけ的な部分はある。もちろん、直接的なイラストという意味だけではなく、文章で描かれた絵づらも含めて。
改造戦闘少女という設定に対する吸引力=万民が持つものであるという前提。そういう読者に対するサービスを前提とした物語。そのサービスを成立させるため、勤労児童という設定×大衆支持を得るための方便=世界観のエクスキューズを構築。と。それは作中の方便ではあるが、メタ的に読者に対するほう便にもなっているわけ。

ところで、全体の設定としては、機械化人間、文化コンタミ都市、エスピオーナージ的サイバーアクション、というわけで、単純に云いきってしまえば士郎正宗のエピゴーネンであり、それを、ライトノベル的装飾を施して、プレゼンスされた、と。面白きゃいいっさね。とは思う。

それにしてもこの文体は読みにくい。自分は表現方法に関しては意外とコンサバで、書き手の作為を不必要に意識させない文章のほうが好きなのである。まあ、この文体が奏でる意図についてはわかるのだけれど、だからといってさくっと読みやすくなるもんでもないし。読みにくさが、ストーリーを追いにくくしているかなぁ。と思った。

まあシリーズとして続くわけだし、身体が慣れれば読みやすくなるのかなぁ。

全然関係ないけれど、シュピーゲルって云われると自分的には「キャプテンウルトラ」か「のだめ」をどうしても頭に浮かんでしまっていかん。

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オイレンシュピーゲル 1 (1) Book オイレンシュピーゲル 1 (1)

著者:冲方 丁
販売元:角川書店
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2007年2月 8日 (木)

どろろ(1)~(3)

自分は手塚マンガって実はこれまでそんなにきっちりと読んでいないのである。当時は他に面白いマンガがあってあえて手塚を読む必然性がなかったし、今は今で、他の時代を切り取っているマンガのほうにより面白みを感じているし、元々懐古趣味がないということもあるし、機会を逸し続けていたわだ。まあBJ程度は立ち読みはしたけれど。そんな程度。
で、今回映画公開記念(映画は傑作でした)として、あらためて手塚を回顧することにした。

うーん、面白いと云えば面白いんだけれどねぇ。やはり当然だけど、その古さは否めない。作話技法としては単純な時系列の羅列で、事件の変遷もぶつぎり。大きな物語のうねりもなく、尻切れトンボ的ではある。もちろん、この作品が描かれた時代においてはこれは最先端であったのであろうということも判るのだが、ちょっとね。

それはおそらく映画を観た後の感想だから、という部分はあるかもしれない。ここで映画版について語るのは不本意なのでさらっと触れる程度にしておくが、映画が人物設定や各種アイディアの時代に対するモデファイがかなり成功しているので、その分、牧歌的かつ散文的なマンガは荒っぽく感じてしまったのかもしれない。でもそれって後出しジャンケンだし、それをもって比較しちゃいけないんだよね。

本作に限らずだが、スターシステムってマンガとしては個人的にはあまり賛同できないなぁ、と思っている。他にも各種楽屋落ち的な遊びの部分も多いわけだが、これらはストーリーに没頭することを拒否する部分でもあるのだ。自分が意外とコンサバなのかもしれないけれど、かっちり作品の世界として閉じていてほしいと思うわけだ。

というわけで、手塚再確認の旅、第一弾は、手塚的なものとはなにかという結果になった。第2弾はいつか? もう作品は決めているのだ。乞うご期待(?)

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どろろ (1) Book どろろ (1)

著者:手塚 治虫
販売元:秋田書店
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どろろ (2) Book どろろ (2)

著者:手塚 治虫
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どろろ (3) Book どろろ (3)

著者:手塚 治虫
販売元:秋田書店
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2007年2月 7日 (水)

銀星みつあみ航海記(1)

冒頭、世界設計の解説で、宇宙に広がった人類が星間戦争をしていて云々と語られるわけである。正直、げんなりするわけである。前々から述べているとおり自分は架空戦史モノは大嫌いなのである。単に舞台を未来や異世界に移しただけでそこにセンスオブワンダーなぞないと思っているのである。命や平和を弄ぶ安直なシミュレーション小説などノーサンキューと思っているのである。
自分の期待していたのは、熱線銃を片手に水着のような宇宙服で宇宙を飛び回る明快スペオペなんだけどなぁ、と心の中で思いつつ読み始めたのだった。

結論。読まず嫌いっていけないんだなぁ。一気読みに面白かった。宇宙船乗りの心意気の物語、ライトスタッフの物語なのである。ネタとしてはあまりにも使い古されたアイディアではあるが(作者自身、章題にも使っているとおり)、そこに描かれる「プロ」達のありようについては、ちょっとグッときた。いや、告白すれば、だ。第一のタンホイザーゲート進入のシークエンスには本気で目頭が熱くなったのだ。ま、全編そんな感じで話が進むわけで、そりゃ読んでいて熱くもなるってもんです。

作者は、そんなに文章巧者ではないとは思う。状況や設定を登場人物の説明科白で処理するのは、あまりあからさまだと鼻白んでしまうのだが、そのようなさりげない表現力については意識していないようだ。(これは自分のまったくの直感なのだが)上述のようなエピソードを連ねてエモーショナルな物語に仕上げていくタイプの作家は往々にして、このような文章を書く人が多いように思う。まあ人それぞれ、なのでそれが欠点と云うつもりはないが、ちょっと感じたので触れておく。

というわけで。なるほど、それは面白い作家なのかもしれないと思った次第である。「でたまか」も人から勧められていつつ、タイトルのちゃらっぽさと冒頭の読まず嫌いがあったのでなんとなく気が引けていたのだが、ちょっと読んでみてもいいかしら、と思う今日この頃である。

追記。タンホイザーゲートって一般的な固有名詞化しちゃってるんだけど、どうなんですかね。別に他作品の引用がいかんとは思わないけれど、「トップ」みたいな引用だらけの作品ならまだしも、オリジナルの世界観の中に紛れ込むのは、お遊びが過ぎるような気がしないでもない。(でも本当に一般化しているのであるならば、それは自分の知識不足なのでどなたか教えてください)

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銀星みつあみ航海記 LOG.1 (1) Book 銀星みつあみ航海記 LOG.1 (1)

著者:鷹見 一幸
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2007年2月 5日 (月)

猫ラーメン(1)

ネコ好きとしては、そしてバカマンガ好きとしては、たまらないマンガですよ。ネコのラーメン屋なんつーネタでどこまで話を広げられるかという野心作。なんちって。大将と常連田中さんの強ボケと弱ツッコミに微苦笑しつつ、なんとなく癒されていくのであった。

ただ、そんな手放しで「くぅ~っ」ときている自分ではあるが、単純に大将キター的なとろけ気分だけではなく、実はちょっと読んでいてつらかったりもするのだ(じゃあ手放しじゃないじゃん)。

自分はどうも、いたいけなる者、邪気無き者が努力しつつ、それが空回りしていて成功していないというような状況に出会うと、切なくつらい気持ちに襲われてしまうのである。例をあげれば、近所の床屋さんが子どもを喜ばせようと店の扉に大きく動物の絵を描いたはいいが所詮は素人仕事であまり可愛くなく誰からも見向きもされていない、とか。そういう感じ。つらいんだよ。街を歩いてたりするとけっこう実際に出会っちゃうんだよ。
自分どれだけナイーブなんだよ。と我ながら思うところもあるのだけれど。勘違いの努力が報われていない、報われようもない、というのは、切ない。ほんに切ない。

といいつつ、このマンガはそこまでつらいという程でもないのは、空回りしている当の大将が全然凹んでいないというか、むしろさらに輪をかけて勘違い上等な暴走をしているせいであろうか。それはギャグマンガの基本であるのだが、それが救いになっているように思う。

ともあれ、しかめつらしているネコの大将が逆に可愛い猫ラーメン。ちょっと食べてみたいよなぁ(あ、ここは「みたいよにゃぁ」と書くべき?)

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猫ラーメン 1 (1) Book 猫ラーメン 1 (1)

著者:そにし けんじ
販売元:マッグガーデン
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2007年2月 2日 (金)

君に届け(3)

前2巻までの友情の物語から、風早くんをめぐる恋愛ものがたりへの移行は、必然ではあるけれど、自分としてはちょっと寂しい気もする。貞子がいて貞子が変わっていくことで、まわりもまた変わりはじめる。成長していく。そんな物語であってほしかったかな。と少しだけ思う。元々、前回までのやのちづとの盛上がり自身、風早がいたからこそおこったコンフリクトではあったし、そこで張られた伏線(という程でもないか。くるみちゃんの事だ)が展開されていくのは当然なのだ。

しかし、このままフツーに貞子と風早のピュアラブ(笑)が成就していくさまを追うというのは、王道という名のステレオタイプな少女マンガでしかなく、せっかくキャラクターが生き生きと動き出しているこの物語にはちょっと勿体ないと思う。

といいつつ、面白いんだけどさっ。

ところで、付録のさわこ守り。霊感ないつーてるキャラなんじゃねーの(笑)? どんだけ霊験あらたかか、つーんだよっ。

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君に届け 3 (3) Book 君に届け 3 (3)

著者:椎名 軽穂
販売元:集英社
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2007年2月 1日 (木)

月も代わって推しおきよ

えー、今日も諸般の事情(ええ、酒ですよ)により読書感想はお休みです。

硬軟取り揃えて血を吐きながら読み続ける悲しいマラソンを独り続けているわけですが、それもこれも本が好きだから、貴方がスキダカラ(byチャンドンゴン。古いっ!)、なわけですよ。でもどんな好物でも毎日食べ続けていれば、さすがに今日は食べれません、というような日もある。感想書く気にもなりませんよ、という日もあるわけです。

そういうときは、あれですね。読まない。書かない。何もしない。いったん距離を置くことがけっこう効果的ですな。そうすることで、また身体が活字を受け付けるようになるのだから不思議なもんですよ。

これって、本に限ったことじゃないのね? 人と人との関係も一緒だね? メリハリ、これが大事。(今、いいこと云った、自分)

というわけで、月に1回くらいは本を読まない数日があるんですが、これって普通だよね。

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