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2007年1月15日 (月)

クレオパトラの夢

恩田陸という作家はノンジャンルだなぁ。とあらためて思った。
本作はエスピオナージ色の強いハードボイルド探偵小説で、事件の内容自体の面白みというか本格ミステリー小説的な謎は、正直弱い。もちろん、それはこのジャンルにおいては欠点でもなんでもない。それは、主人公(探偵役)がいかにして事件の真相にたどりつくか、そしてどう処理したか、という、行動を楽しむ物語であることが目的であるからだ。
それを楽しむために、幾多の解釈や推理はちりばめられ、ゆえに、登場する人物すべてが怪しくみえ疑心暗鬼になりながら行動していかなければならないという主人公の暗中模索を読者も味わっていくことになる。
(というような作話構造が主眼であるために、例えば、全員が共謀していました。とか、余命幾ばくもない設定でした。とか、秘密の小部屋がありました。とか、本来の推理小説では、あまりにもベタで禁じ手の設定があったとしても、それはそれ。と、云えるのだろう)
物語としての結末自体は、大山鳴動して鼠一匹的であるのだけれど、それもまたこの手の作品にはふさわしいように思う。

物語をぐいぐいと読ませるリーダビリティの高さは、作者の筆力の賜物ではあるが、それをミステリーやSFやファンタジーといった様々なジャンルにおいて実現させ得るモティベーションとして、本質的にキャラ主導ということがあるのではないかと思う。
恩田陸という作家は、ストーリーテラーであるため、作品中にあからさまに表現されることはないし、また、なまじ物語の発想の面白さがあるため目立たないが、自キャラ萌え的な要素が非常に色濃くあるように自分は感じている。
ということは、作品のアイディアよりも、キャラクター重視の作品にしようと思った場合、本作のような、スピンアウト的な、あるいは探偵というキャラクターを強調するような物語になるのかなぁ、と思うのだった。にもかかわらず、トータルでの一定の質を保つというのはすごいことなのだ。

ともあれ、キャラありきで物語を紡ごうとしていくことによって、結果、マルチジャンルで節操なし作家となってしまっているように思う。まあ、自分としては、いつも手を変え品を変え面白い作品を読ませてもらってありがとう。ということで全然問題はないのだ。

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クレオパトラの夢 Book クレオパトラの夢

著者:恩田 陸
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