神様のメモ帳
設定的だけを韜晦と諧謔を込めて説明すると、あとがきで作者が書いているとおり「オレたちゃ特攻野郎Nートチーム」(ちょっと表現変えてるけど)なってしまうのだが、実のところ、そんなおちゃらけた話ではなく、生きることが下手な少年達がいかにして自らのレゾンデートルを見い出すか、現実と折り合いをつけて生きることを覚悟するのかの物語となっている。云うならば成長痛の物語である。
それを縦軸とするならば、横軸となるのは、ドラマとしての物語。ストリートでのドラッグ事件に巻き込まれ解決しようとする、アウトサイダー達の探偵物語である、といえよう。
探偵役は詭弁と強弁を巧みに操るひきこもり美少女(ニート)であり、その助手役も(主人公は別として)有能なる変人(ニート)である。実際にはどうなのかは判らないが、読むかぎりでは、単なる役割配置、お約束のキャラ設定ではなく、しっかりと存在を主張している。簡単に云ってしまえばキャラが立っているということだが、文章力があるからそこなのだろう、と思う。
こう書いてしまうとこれから読む人への期待値のハードルをヘタに高くしてしまうようで、話半分に聞いてほしいが、テイストとしては、京極堂シリーズの変人大集合的な雰囲気とIWGPのストリートハードボイルドの雰囲気を併せもっているなぁ、と自分は思った。
まあ、そう感じた理由は、成長痛小説好きであるために贔屓目なところが出てしまったのかもしれないので、そりゃ云いすぎだろ、と思ってもらっていいです。
エピローグがやや冗長であること等については、判りやすい説明を書きすぎるライトノベル作話技術が重りになってしまっているのかなぁとも思うが、ここまで書ききれば充分でしょう。
面白い、と云ってしまうには我ながら若干の語弊もあるのだけれど、単純に読後の感想として面白かった。と云いたい。必読。
神様のメモ帳 著者:杉井 光 |
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