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2007年1月31日 (水)

仕切るの?春日部さん(3)

(すべて褒め言葉ですよ)
まああまりにもバカバカしいマンガだし、続こうが終わろうがどーでもいいっちゃどーでもいいんだよ。作品が変わっても作風は、絶対変わらないだろうし、とりあえずこの登場人物達をいじるのはおしまい。ってくらいの程度ですわな。

でもこのDTマインド溢れる大バカな下ネタオンパレードは大好きなので、また次のくだらないマンガを期待します。時代的にエロカワイイとかエロカッコイイとか、頭にエロがついていることがクールなわけで、エロバカラシイとか、エロクダラナイとか、エロイヤラシイとか、そういうもともとある下ネタギャグを新造語であたかも新機軸っぽくジャンルわけすると、御珍古新、じゃなくて、温故知新的に時代のニーズにジャストフィット。みたいな。なに云ってるのか自分でも判ってませんが。

ま、てな感じですかねぇ。

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仕切るの?春日部さん 3 (3) Book 仕切るの?春日部さん 3 (3)

著者:竹内 元紀
販売元:角川書店
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2007年1月30日 (火)

となり町戦争

面白かったのだが、なぜか釈然としない気持ちもある。それは物語全体を包む虚無感であるせいかもしれない。諸々のやりきれなさに自分もあてられてしまったのだろう。ここで描かれているものは、となり町との戦争というカリカチュアライズされたメタファーとしての外圧が、本人の意思とは関係なく、与えられ、そして奪っていく、その非情さにある。と、自分は思った。結果として主人公の人生になんの変化が残ったわけではないが、そこに救いは無い。

例えば、地方行政に司法権があるのか。条例は刑法を上回るのか。など、戦争にまつわる行政の動きはあまりにも現実とはかけ離れていて、リアリティは皆無である。上述のとおり、リアルなシミュレーションをこの話は求めてはいない。故に「きまりごと」という名の暴力なのである。自分はそのような強制されることを極端に嫌っているので、だから読んでいて、物語としては淡々とした静謐なイメージであるにもかかわらず、腹立たしく気持ちが揺らいだのだろう。

結局、孤独であることしか、生きる術はない。ということか。

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となり町戦争 Book となり町戦争

著者:三崎 亜記
販売元:集英社
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2007年1月28日 (日)

さくらの境(3)

告白しますが、自分はちゅーが大好きです。それも「大人のキス」ではなく、「ちゅー」のほうが好きなのです。そりゃ、ディープな大人キッスもするときもあるけどさ、それは、よりオトナな行為へのステップであって、くちづけという行為自体で完成されたものではない。それよりは、ちゅーのコミュニケーションとしての完結性のほうがステキじゃん。と自分は思うのです。くちびるとクチビルが触れるときの柔かくてしっとりしたあの、はにゃ~ん、となる感覚が大好きなのです。ああ、いったい何を云ってるんだ、自分? まあ、いいや、とにかくそういうことです。

冷静にみれば、口唇周辺には触覚神経が集中しているから。とか、生物的な理由で解釈できてしまうのだけれど、そんな左脳的理解ではなく、単純に「ちゅー大好き」という右脳的把握でいーじゃん、と思う次第です。

で。本作における、ささちゃんとふたちゃんのちゅーの姿が自分的には、ああ、そうだよねぇ、とほのぼのする萌えポイントになっているわけですよ、とそういうことが云いたかったわけですよ。相変わらず(いい意味で)ぼーっとしたマンガではありますが、それが癒しであるよ、ということです。

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さくらの境 3巻 (3) Book さくらの境 3巻 (3)

著者:竹本 泉
販売元:メディアファクトリー
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ロケットガール(3) 私と月につきあって

今回も波瀾万丈かつストレスフリーの空想科学小説でした。今回は「月への旅」という大ネタであるため、段取り設定は大きく。しかし人物の動きのような展開は小さく。ということになり、作品全体を包むムードにおいてちょっと?な感じもあったのだが、それは些細な感触。ライトスタッフの物語として堪能しました。

そう、この物語が好きな理由は、(もちろん基本設定における軽やかなアイディアの飛躍を前提として)科学的論証による思考実験としての魅力であることは前にも書いたかと思います。それはまさにセンスオブワンダーのひとつのありようであり、つまりはド直球のエスエフなんだってこと。SFであることの心地よさがここにはあるのです。
(ラストの月の水に関するエピソードなどは、これぞSFじゃん!、とかなり涙モノでした、いやマジで)

もうひとつは登場人物の魅力で、それは女子校生だからの「萌え」などではなく、ヒキーキ乗りのプロフェッショナルとしての自覚と覚悟を持っているライトスタッフに対する「燃え」です。その真摯なリアリズムに対して心が動かされるのだ、ということです。

ともあれ、外形に侮ることなく読み、そして楽しめれば、よし。なのです。

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私と月につきあって Book 私と月につきあって

著者:野尻 抱介
販売元:富士見書房
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2007年1月27日 (土)

ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド(1)

本屋で作者が誰なのかも確かめず表紙買い。あらためて確かめたら環望でした。云われりゃまったくそのとおりで、なんで気づかなかったのか少々自己反省しました。まあ、知ってたちゅーても1冊持ってる程度なんですが、自分のマンガ選択GUNはR18系は通常のマンガよりもハードルがかなり高めで、実際ほんの数名程度しか追っていません。で、本作の作者はその予備軍的ポジションだった、というわけです。実際には作品数も多い作家なんですが、自分はマンガに関しては比較的出会い頭を大切にしてるためか、本屋にないとそれまでになってしまいがちなんですよねぇ。

と、本作とは関係ない前置きでしたが、さて。
まだ1巻なのでこの先は判らないですが、とりあえずヴァンプ租界という発想は面白いと思いましたね。主要人物に人間がいないというのも新味でしょうか。通常、吸血鬼マンガの場合、(それが愛であったり憎であったりというバリエーションはあれど)基本的に人間と吸血鬼の関係性を基軸に物語を構築されていくのですが、本作は、あくまでも吸血鬼社会の物語となっている。そこらへんがどのように展開していくのかはちょっと楽しみです。
まあ、物語としては浅いかなぁという感想も実はあるんですが、それは今後次第でしょうか。

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ダンスインザヴァンパイアバンド 1巻 (1) Book ダンスインザヴァンパイアバンド 1巻 (1)

著者:環 望
販売元:メディアファクトリー
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ちなみに持っていたR18マンガはこちら。

コネコッ!! Book コネコッ!!

著者:環 望
販売元:竹書房
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2007年1月26日 (金)

吉田電車

一見、ぶっきらぼうでバンカラな文体で書かれた紀行文(奇行文か?)でありながら、実はかなり小心者のぼやき的随筆なのであった。適度なボリュームで、読んでいてなんとなく小気味よい感じが心地よい。これが何巻も続いたりするとマンネリで飽きてしまう気もするが、1冊完結というのは簡潔でよいですなぁ。

個々中味について感想するようなものでもないので、とりあえずは、普通に面白かったぞ。とだけでまとめたいのだが、そうそう!そうなのよ! と思った点が2か所だけあるのでそこに触れておく。

ひとつは、観光地などにあるアイツ、記念写真のためのアレの呼びかただ。世間的には「顔はめ」派と「顔出し」派に分かれており、どうやら「顔はめ」派の方が主流っぽいのである。んがしかし、吉田戦車は「顔出し」派。よし、同志なり! まあそれだけの話しだがな。

もうひとつは、Tシャツについてだ。かつてのTコレクターとして、妙にファンシーキャラデザインであったり変にカッコよさげデザインであったりするTシャツは「違う」という気持ちがある。もっとシンプルに既存のシンボルなどをそのまま活かしてくれよ。と思っていたのだが、吉田戦車もそういう考えであるらしい。よし、同志なり!! まあしかし風香(「よつばと!」の)なみなセンスだがな。

以上だ!

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吉田電車 Book 吉田電車

著者:吉田 戦車
販売元:講談社
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2007年1月25日 (木)

ボクの紫苑

なにかと話題の本田透作品。「ヲの品格」的(なんじゃそりゃ)に共感を持っており好意を感じつつ、初挑戦。なのだけれど、うーん、ゴメン。これはダメだ、自分の口にはまったく合わなかった。

物語設定しかりキャラクター設定しかり、ライトノベルの構造定式をそのままなぞっただけで、新鮮味がない。引用されるアイディアにも魅力がなく、また文章も上っ面を流れるだけで生きていない。
端的に云ってしまえば「すべからく底が浅い」ということに尽きるのだろう。もう少し、文章として、また設定や状況として、なぜそれを描かなければならないのか、ということに対する自己認識が甘い、というか意識していないように自分は感じた。
例えば作話技術的に、ボケとツッコミの設定が曖昧だったりするところなどはもっと整理すべきだったのではなかろうか。スタンスが定まらないことでキャラも立たないし、よって吸引力も生まれていない。自分はそう感じた。性格設定に筋を通せば、もっと自然に話しも会話も形骸ではない実のあるものになるのではなかろうか。

曰く、ボクデレ小説とあるが、それが成立しているとも思えない。どんな萌え設定を書こうとする小説だったとしても、ギミックに魅力がなければ成立しないのである。もしかするとやりようによっては面白くなる素材なのかもしれないが、少なくともこのままではどこにも萌えシロは見出せないです。

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ボクの紫苑 Book ボクの紫苑

著者:本田 透
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2007年1月24日 (水)

へうげもの(4)

連載途中なので、簡単に。

相変わらず面白い。いよいよもって戦ぶる物語から数寄者への変化をとげる主人公、古田織部(名前も変わったし)。その生き様かっちょえーのである。変人だけどね。直球の物欲やほのぼのとした夫婦愛にはにゃとする読者(自分)であった。今回、笑いに対する感覚(そのものに対して笑うのではなく、一歩引いて構造に対して笑う)が描かれていて、面白かったですね。そうそう、そうなんだよ、って感じ。

作中に描かれる明智や徳川が、実に実直で誠実なのだが、しかし、魅力が感じられない人物になっているのがまた面白い。生真面目で野暮なんだよね、つまり。まあそういうふうに描いているからなんだけれど、実際、かつてはそういう人物こそが理想的であったのに、いまや破天荒上等だからねぇ。逆転しているよねぇ。

というわけで、次巻は夏。待てん!

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へうげもの 4 (4) Book へうげもの 4 (4)

著者:山田 芳裕
販売元:講談社
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2007年1月23日 (火)

神様のメモ帳

設定的だけを韜晦と諧謔を込めて説明すると、あとがきで作者が書いているとおり「オレたちゃ特攻野郎Nートチーム」(ちょっと表現変えてるけど)なってしまうのだが、実のところ、そんなおちゃらけた話ではなく、生きることが下手な少年達がいかにして自らのレゾンデートルを見い出すか、現実と折り合いをつけて生きることを覚悟するのかの物語となっている。云うならば成長痛の物語である。
それを縦軸とするならば、横軸となるのは、ドラマとしての物語。ストリートでのドラッグ事件に巻き込まれ解決しようとする、アウトサイダー達の探偵物語である、といえよう。

探偵役は詭弁と強弁を巧みに操るひきこもり美少女(ニート)であり、その助手役も(主人公は別として)有能なる変人(ニート)である。実際にはどうなのかは判らないが、読むかぎりでは、単なる役割配置、お約束のキャラ設定ではなく、しっかりと存在を主張している。簡単に云ってしまえばキャラが立っているということだが、文章力があるからそこなのだろう、と思う。

こう書いてしまうとこれから読む人への期待値のハードルをヘタに高くしてしまうようで、話半分に聞いてほしいが、テイストとしては、京極堂シリーズの変人大集合的な雰囲気とIWGPのストリートハードボイルドの雰囲気を併せもっているなぁ、と自分は思った。
まあ、そう感じた理由は、成長痛小説好きであるために贔屓目なところが出てしまったのかもしれないので、そりゃ云いすぎだろ、と思ってもらっていいです。

エピローグがやや冗長であること等については、判りやすい説明を書きすぎるライトノベル作話技術が重りになってしまっているのかなぁとも思うが、ここまで書ききれば充分でしょう。

面白い、と云ってしまうには我ながら若干の語弊もあるのだけれど、単純に読後の感想として面白かった。と云いたい。必読。

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神様のメモ帳 Book 神様のメモ帳

著者:杉井 光
販売元:メディアワークス
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2007年1月22日 (月)

夜は短し歩けよ乙女

野に咲く可憐なる花を見よ。

その花を手に入れんとすべきか、はたまた見つめたるのみで由と納得でき得るのか。我が脳中に渦巻く煩悩は、かくなる単純明快にして高邁深遠なる男女の命題に対して答えを見出すことができないでいるのである。否! あえて目を背けているのである。確たる根拠なく突撃ししかる後に撃退されることこそ人生への敗北。暴挙である。もちろん我が人生において勝利を収めたなどという誇らしげな記憶はない。だが、それは敗北に慣れたということと同義ではないのだ。

日々の生活は日常ではある。しかし振返ってみよ。酒精溢れる夜にて、物欲にまみれる市場にて、喧騒と暴走の学園祭にて、日常は非日常とともにあるのだ。いや、非日常とは自ら見出すべきもの、そこに彼の乙女がいることこそ我が非日常にして日常ではあるまいか。

所詮、妄想するリビドーと暴走するルサンチマンに彩られた我が半生を顧みるに、直接対決にはまだ早いのである、と。まずは婉曲かつ間接にことを進め、さらに距離を縮めていくことこそが勝利への近道である、と。具体的には、自分のことを意識してもらおう、と。ああ、なんと長期的展望に基づく戦略であろうか。
いやそれはかえって怪しげなる行為にはなってしまわないか。間違った方向へ失踪しているのではないか。常に、検証、常に反省。かようにして修正。ああ、人の心は判らない。自分の心も判るまい。なむなむ!

と、そんな物語である。

ジャンルとしては「文化際の前日小説」。(概念としての)おまつりの楽しさ、高揚感、幻想感(嘘くささとも云う)、が詰まっている。もちろん愛もね。

「おともだちパンチ」とか「ロマンチックエンジン」などの妄想造語も楽しい、DTマインド溢れる文章でつづられた愛と戦いの記録は実に愛おしく、かつ馬鹿バカしく、かつ羨ましいのであった。結果、大団円となることについて内心では賛否両論ではるのだが、ともあれ。必見、必読。

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2007年1月21日 (日)

コメントさん

本日も感想文はお休み。すみません。

ここのところ訳の判らないコメントが増えています。こまげに削除するようにしているのですが、あまり多いとさすがに嫌~んな気分になります。コメントってそんなに効果的なのでしょうかね? 皆さんはコメントを追うようなブログの見方をしているのでしょうか。自分はしないんですがね。あ、でも興味のがるときは概要だけはみるかなぁ。

ま、コメントやらトラバやら、性善説的に利活用したいもんだ。と、酔っているので気の利いたことも云えずに終了しますよ。

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2007年1月20日 (土)

ポチのウィニングショット

これは。。。 なんか。。。 あれだ。。。 読んでいてね。。。 いや、ダメじゃないんだけどね。。。 面白かったんだけどね。。。 でも、ね。。。 すごく気恥ずかしかったんだよ。多分、それは女の子一人称でわりとピュアな感情が垂れ流されているせいなのだろうか。文章も初々しいというか若いというか、あまりにも真っ直ぐで、薄汚れちまった自分には恥ずかしすぎました。と書いてはみたが落ちついて読めばそんなに純粋ラブな感じでもない。ライトノベル的レベルからすれば大人しい。ちょっと舞い上がっちゃったか? どうした自分?

さて、基本的にはマイナージャンルスポーツの青春ストーリーで、作者があとがきでも告白しているとおり、客観的に読めばかなり粗がある設定である。しかしそれを力技で一気に読みくだされたれたという感じだろうか。正直、スポーツ設定の独創性が小説としての焦点ではなく、主人公の気持ちの変化が主眼なので、そこらへんは大目にみてもかまわないといったところでしょう。これが続編を想定し始めると乱れが出るとも思うが、続編はないということで、まあよし。

実のところ、細かい不満はないわけではない。けれども、なんとなく初々しさに免じてまあいいかな、という気分なのですね。我ながらヘンな感じではあるのだけれどね。というわけで気楽にそこばゆくなれるお話として楽しめました。

ただね、主人公。男みるセンスないぞ。朴念仁や鈍感とかいうレベルじゃないっしょ? 弁当作らせてそれをなんとも思わず平然としている感覚(ある意味プチDVだぜ)は自分はちょっと許せないんだけどなぁ。恋するオトメってそうなの? ま、いいけどね。

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ポチのウィニングショット Book ポチのウィニングショット

著者:葛西 伸哉
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2007年1月19日 (金)

おんみつ蜜姫

活きのよい講談調物語、今回も絶好調。といった感じの、大ぼら時代活劇であります。お姫様の暴走っぷりが実に心地よい。基本的には古きよき(?)時代小説テイストなのですが、私服を肥やさんとする悪代官などは登場しません。物語としては実は現代的なのです。

自分は、いわゆる時代劇が嫌いです。水戸黄門や桃太郎侍なんか放送してくれるなよ、と思っています。と書くと過激発言っぽいですが、割と本気でそう考えています。
そのわけは、お話があまりにも定番お約束で発展がない。とかのマンネリ構造に対する飽きという点もあるんですが、本質的な反発は、物語の構成として、悪事の解決が巨大な権力によってのみ行われるいう点にあります。
「待ってました!的カタルシス」があるのは確かだし、だからこそ面白いというのは事実ですが、そのおかげで「問題が起こったときはエライ人が裁いてくれる」という心理的システムが、時代劇によって無意識下に根付いてしまって、ゆえに現実社会における課題解決に対して直接間接含め自ら解決する意思が働かない。端的にいえば「お上のいうことに間違いはない的思考」から発展しないのではないか、と思うのです。
もっとも、だからといって民衆の力が云々というプロレタリアート的発想も自分としては問題多々ありノーサンキューなのですが。
とりあえずそんなわけで、時代劇はよくないぞ、と。そういうことです。

そんな前置きをふまえて、この物語が面白いのは、必ずしも勧善懲悪の物語ではないという点です。国家間(藩ですが)の発展のための策謀陰謀渦巻く(?)のんきなエスピオナージ。目的達成のために悪事を働いているのではなく、権謀術数を働かせて(いないか?)、いかに出し抜くかというレベルの話ですね。だから暴れん坊将軍吉宗をはじめとする殿様連中も皆、けっこう打算的で計算高いわけですが、といって悪人ではないというところが面白い。あえていうなら尾張徳川が悪役なんですが、表にゃ出てこないしね。
しかもそれがストラテジー的ではなく、あくまでも活劇というベースで描かれているのがよいのですな。

ちゅーわけで、先に書いたような時代劇への不満は、あまり感じることもあかったというわけです。
と、屁理屈をこねてみましたが、要はあくまでもお姫様活劇として単純に面白かったということが云いたかったわけですよ。猫も大活躍だしね(ポイントはそこか!?)。次巻もご期待ですよ。

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おんみつ蜜姫 Book おんみつ蜜姫

著者:米村 圭伍
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2007年1月18日 (木)

本を読む環境について

本日は、新年会でほろ酔いにつき、冷静な文章が書けないので感想はワンパス。期待していた方がいるかどうかは判りませんが、とりあえずごめんなさい。

酒が入っているときに本を読む、というのは、しないわけではないのですが、正直、集中力と記憶力が極端に低下しているので、飲んだときは読まないほうがいいんですよね。ホントはね。
酒と活字。実はそんなに相性はよくないわけです。でも、例えばイケテルオトナ(うぷぷ)として、ひとりバーで、文庫本を片手にウイスキーなんぞをショットで飲む、なんて状況にあこがれないではない。ちゅーか実際、やってたりもする。でも、やっぱりあまり読んだ気にはならない。結局、(酒だけじゃなく)そういう自分に酔ってるだけなんだよなぁ。

実は酒とともに読むのは、小説よりは雑誌のほうがいいのかもしれない。でもそれってオシャレじゃない。なんとなくね。なかなかうまくいかないもんです。

本当はもう少しきちんと酒と本についてまとめたいけど、それはまたいずれ。

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2007年1月17日 (水)

アンダカの怪造学(5) 嘘つき魔女の見つめる未来

シリーズ途中なので、「物語」に対する感想はとりあえず完結してから、としますが、いよいよもって物語は佳境(かなぁ?)。どう折りたたんでいくのかが楽しみではあります。

今回読んで思ったのは、日日日という作家は、根本的に感情や意識といった個人のアイデンティティを語る派なのだなぁ、ということです。物語の主軸が叙事ではなく叙情である、というとかえって判りにくいかもしれないですか? 事件や事象、設定を描くのではなく、登場人物の心のありようを実は書きたいのである。ということです。
特にクライマックスのイベントが、外的にアクティブな動きではなく、アイデンティティの問答とであることでそれは鮮明になっているように感じましたね。

もっともライトノベル的、あるいは一般的な意味でのエンタテイメント的な叙事設定である、アンダカ戦争の動きや怪造学会の陰謀(?)も十分に独創的で面白く、非常にバランスのよい物語になっていっているなぁと思う次第です。

最後まで、一気に突っ走ってほしいですねぇ。

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アンダカの怪造学〈5〉嘘つき魔女の見つめる未来 Book アンダカの怪造学〈5〉嘘つき魔女の見つめる未来

著者:日日日
販売元:角川書店
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2007年1月16日 (火)

新・闇の声 潰談

久しぶりの新刊で、相変わらずの奇想奇談っぷりを堪能した。自分にとって伊藤潤二の凄さ(のひとつ)は、ストーリーテリングとして、最大の恐怖点をラストに持ってこないともすれば冗長ともとれる奇妙な余韻を描けるところにあると思っている。本巻で云えば「蔵書幻影」や「闇の絶唱」がそう。本来、落とすべきところに話が落ちていかない不安感、肩すかし感は、ちょっと他のホラー作家では見ない面白い個性だと思う。

もちろん、思いきりオチらしい場所で幕を閉じるホラーショートショートの基本のような「幽霊になりたくない」や「潰談」のような直球勝負な物語もあり、本当に千変万化なんだなぁ、と思う。ちなみに今回一番面白かったのは「潰談」だったりするので、上述の作話法が必勝法ではないことは付記しておきたい。

ともあれ、早く新作が読みたいと気長に待ちたいと思う。そしてそのときは伊藤潤二の絵のスリムだけれど肉感的な女性描写について語りたいと思う(じゃあ、今回書けばいいじゃん? いや出し惜しみですから)。

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新・闇の声 潰談 Book 新・闇の声 潰談

著者:伊藤 潤二
販売元:朝日ソノラマ
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2007年1月15日 (月)

クレオパトラの夢

恩田陸という作家はノンジャンルだなぁ。とあらためて思った。
本作はエスピオナージ色の強いハードボイルド探偵小説で、事件の内容自体の面白みというか本格ミステリー小説的な謎は、正直弱い。もちろん、それはこのジャンルにおいては欠点でもなんでもない。それは、主人公(探偵役)がいかにして事件の真相にたどりつくか、そしてどう処理したか、という、行動を楽しむ物語であることが目的であるからだ。
それを楽しむために、幾多の解釈や推理はちりばめられ、ゆえに、登場する人物すべてが怪しくみえ疑心暗鬼になりながら行動していかなければならないという主人公の暗中模索を読者も味わっていくことになる。
(というような作話構造が主眼であるために、例えば、全員が共謀していました。とか、余命幾ばくもない設定でした。とか、秘密の小部屋がありました。とか、本来の推理小説では、あまりにもベタで禁じ手の設定があったとしても、それはそれ。と、云えるのだろう)
物語としての結末自体は、大山鳴動して鼠一匹的であるのだけれど、それもまたこの手の作品にはふさわしいように思う。

物語をぐいぐいと読ませるリーダビリティの高さは、作者の筆力の賜物ではあるが、それをミステリーやSFやファンタジーといった様々なジャンルにおいて実現させ得るモティベーションとして、本質的にキャラ主導ということがあるのではないかと思う。
恩田陸という作家は、ストーリーテラーであるため、作品中にあからさまに表現されることはないし、また、なまじ物語の発想の面白さがあるため目立たないが、自キャラ萌え的な要素が非常に色濃くあるように自分は感じている。
ということは、作品のアイディアよりも、キャラクター重視の作品にしようと思った場合、本作のような、スピンアウト的な、あるいは探偵というキャラクターを強調するような物語になるのかなぁ、と思うのだった。にもかかわらず、トータルでの一定の質を保つというのはすごいことなのだ。

ともあれ、キャラありきで物語を紡ごうとしていくことによって、結果、マルチジャンルで節操なし作家となってしまっているように思う。まあ、自分としては、いつも手を変え品を変え面白い作品を読ませてもらってありがとう。ということで全然問題はないのだ。

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クレオパトラの夢 Book クレオパトラの夢

著者:恩田 陸
販売元:双葉社
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2007年1月14日 (日)

ねこのばば

好調しゃばけシリーズ。フツーに面白いし、それは周知でもあるので、あえて付け加えるようなことはないです。とりあえず、読んでくださいよ、と。妖怪は出るけど怖くないですよ、と。若だんなは病弱ですよ、と。そんなところでしょうか。

個々の感想だけ付け加えますが、やはり表題作「ねこのばば」は秀逸。自分がおネコ様派なので、猫加点があるのかもしれないけれど、冒頭の香袋の奇妙な怪異(?)をはじめとする些細な謎が論理的に収斂していく様は実にお見事。タイトルのダブルミーニングも美しく、さすがだなぁ。と思うのでした。

佐助の物語「産土」は、あまり詳しく書くとネタバレになるので難しいけれど、冒頭数ページを読み進む中で感じる違和感が最後で叙述トリックであったことに気づき、やっぱり上手いなあと思うのでした。途中まで上質の捕物時代小説だっただけに、そんなに大きなドンデン返しでもなのだけれど、そうきたかぁ、と思いました。

ただ冒頭第1話「茶巾たまご」は、伏線なのか書きミスなのか判らないゆるい一文(38~39頁)があって、それが気にかかりましたね。まあそんなに気になりはしませんが。

と、いうわけで、まだまだ続くシリーズです。楽しみですよねぇ。

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ねこのばば Book ねこのばば

著者:畠中 恵
販売元:新潮社
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2007年1月13日 (土)

真田十勇姫!

正直、自分のテンションが本書についていけるかどうか不安なまま、出オチ地口オチなタイトルのあまりのバカっぽさに一縷の望みを賭けて(?)トライしてみたんですが。。。。。空振り。
「女の子がたくさん登場して主人公の男の子につくす“だけ!”」という最近のライトノベル(に限らないけれど)の典型主流そのままの話でした。

これまで折につけ何度も主張(ちゅーか意固地に強弁)してるとおりなのだが、自分は「DT的発想による男に都合のいい話」が嫌いなのですよ。男に対しても女に対しても不遜でしょ? そして精神が閉鎖的でしょ? だから「ご主人様」的な話は、本当に許せない。のだけれどまあ、だからといって絶対に読まないというわけでもなくて、そこに作品としての独創性であったり高文章力であったりがあれば、もちろんきちんと堪能するし評価もするのです。

と、そういう前置きを書くということは、本作が(よくない意味で)フツーであったということです。ストーリーや設定も、ありがちなパーツを順列組み合わせで並べただけの感じ。最大公約数的パッチワークの刹那的娯楽小説は、あたかもとりあえず及第点であれという最近のハリウッドエンタテイメント映画の製造技法のような印象でした。
登場するヒロイン群も、年上のお姉様からロリ、ツンデレと、マルチ受け可能な取り揃えだけれども、書き分けはされておらず、単に設定上分けられているだけの様子。単に「各種萌え点配置しました」だけです。文章的にも、オノマトペ擬音が多い半面、地文が足りないせいか、状況がよく判らない。あるいはこの文章ヂカラが弱いせいで、ストーリーやキャラクターの個性が弱く感じるのかもしてない。

ま、敵味方が非常にゆるくて巨悪(あるいはラスボス的存在)が実は存在していない。というというノンキな雰囲気は結構面白いんだけれどねぇ。

残念賞ぅー。

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真田十勇姫! Book 真田十勇姫!

著者:馬場 卓也
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2007年1月12日 (金)

電車男

キタ──────(゚∀゚)──────!!

今さら、あえて語るべきこともない程のビッグネームであり、映画もTVももちろん観ていますが、本として読むのははじめてで、今回、この物語が本来持っていたドラマ化の際のデコレーションを排したコアな、あるいはシンプルな、そしてピュアなストーリーを再確認することができた。

まずなによりも普通に面白かったのである。一人の男性が愛を成就する2ヶ月間の悲喜交々、ネット住人のボケとツッコミとアドバイスがすごくいきいきと描かれている。ちゅーかすべてが生の言葉だから、なんだろうなぁ。でもって、誰しもが多かれ少なかれ経験している、片想い状況の悩みや不安、喜びがあるから、なんだろうなぁ。普遍的なんだよね、きっと。

これはさんざん語られていることではあるが、2ちゃん文学という新しい表現なのだな、とも思った。いまさらなので、どの点がとかの説明はしないけれど。ただ、それを成立させるための編集/演出がされていて、単純な生ログではいけなかったのではなかろうか、とは思う。

で、だ。
以下、極私的な獄死的な感想ですが。読み進むうちにマジ爆撃くらってしまい、本気で鬱になる漏れですよ。昔の不器用でイタイ想い出とか、最近のキツイ結末の記憶とか、そんなこんなのネガティブメモリーが走馬灯のように無限ループ(´д`)ですよ? 電車がまぶしすぎてモニターが見えないよ? オレなんかオレなんかオレなんかぁぁぁぁ....!! <(`д´)>うわぁぁ~~~ん。
いやいや、ほんに今さらだなぁ。
ま、そんな「クラワサレ」はあったのは事実ですが、電車もエルメスも住人たちもスゲエイイヤツで、応援したくなる気持ちも十分に判ったりもするのだなぁ(後日談で、ヲから全然足を洗ってない電車男にはトホホだが、と同時にオレ内好感度はうpしたよ)

と、そんなわけで(どんなわけだよ)、「物語」としてすごい引力(と破壊力)があることは確かですね。ともあれ、光あれ!(オレにだけ、な)

電車男 Book 電車男

著者:中野 独人
販売元:新潮社
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2007年1月11日 (木)

龍の館の秘密

前巻を読んだときも感じたのですが、けしてつまらなかったわけでもないし、実際面白く読みきれたのだけれど、なんとなく手放しで好きになれない。そんな隔靴掻痒的気分がつきまとうシリーズなのですよね。

それにはおそらくふたつの理由があって、ひとつは、なんといっても主人公にいまひとつ魅力を感じないところ。あまりにもおバカなのですよ。人見知りといいつつ無謀で考えなしに行動してしまうところとか、すぐに泣いて自ら解決しようとする意思が感じられないところとか、どうにも好感度が低い。脇を支える二人の友人、人脈超人のかのこや猪突猛進の直海の持つ、魅力的な破天荒さに比べ、あまりにもみるべきところがない。
別にワトソン役をきちんと果たさないといけないとは思いませんが、狂言回しにすらなっていないのがどうにも気にかかる。まあ、これはあくまでも個人的な好みの範疇の問題なので、それがいいんだ、という人もいるかもしれないけれど、しかしこれで気が殺がれてしまっているのは確かなのです。

もうひとつは、何度か言及している問題なのですが、トリックを成立させるために周辺の状況や気持ちの動きを、無理やり捻じ曲げてしまう過度の作為性について自分はかなり否定的なのですね。現実の常識からみて違和感があるからではなく、作品世界内でのリアリティを疎外する作話技術は、単に推理クイズでしかなく、物語として読ませる作品である、という前提から単純に逃げているように感じてしまう。それは嫌なのですね。
これは、パズルだから。ミステリーだから。という一言で始末していい問題ではなく、もしそういう状況を物語の中で成立させようとするなら、成立する世界観を構築すればいい。もし現実社会を模した作品であるならば、その世界観の中でのセオリーから外れるべきではないと思うのです。
云い変えると「Howdunit」や「Whodunit」と、「Whyduni」は常に並列であるべきでそれぞれ隷属すべきではない、ということです。

というわけで、以上2点のせいで、自分はこの作品に関していまひとつのめり込めなかったわけですが、これはあくまでも個人的な好みであるということは百も承知で、この点について許容できる人にとっては、軽快な青春ミステリーとして楽しめるとは思います。

ちなみに、本巻に収録されている短編については、多分に飛び道具的な設定と展開なのですが、短編であるが故にトリックのあざとらしさが緩和されていて(あるいはあざとらしさを含めて納得できる設定となっていて)、なおかつ主人公の暴走も微笑ましく、上記の個人的難点は払拭されていました。もしかするとこの作家は短編向きなのかもしれないです。

龍の館の秘密 Book 龍の館の秘密

著者:谷原 秋桜子
販売元:東京創元社
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2007年1月10日 (水)

もやしもん(4)

今回も回腸。じゃなくて開帳。じゃなくて快調。ではあるが話としてはちょっと抑え目か。主人公沢木の気持ちの問題の話がメインとなっているせいか、あまり派手な動きなないからかもしれない。というわりには部室棟大爆破みたいなことも起こってますが。

ところで、このマンガに登場する女性達ってノースリーブ率が異様に高いよねぇ。もうほぼ軒並み肩出し状態。あと、ボンデージファッションも多いけれどこれはキャラクター設定上か? いずれにせよ作者の趣味なのだろうか。ちなみに自分はノースリーブもボンデージも、ダ・イ・ス・キです。

もやしもん 4―TALES OF AGRICULTURE (4) Book もやしもん 4―TALES OF AGRICULTURE (4)

著者:石川 雅之
販売元:講談社
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PLUTO(4)

インスパイア&オマージュforテヅカ。ではあるが、やはり浦沢直樹のマンガなのだなぁ。と。話のつくりやテーマなどが、手塚治虫というよりは浦沢っぽいのだなぁ。具体的にどこがどうというように云い難いのだが、なんとなく雰囲気的に。今回、特にそれを感じた。

ようやく終着すべき点が見えはじめたあたり。まだまだ話はつづく。総括としての感想は物語としての完結を待って行なうつもりなので、今回はこんな程度で。

PLUTO 4―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (4) Book PLUTO 4―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (4)

著者:浦沢 直樹,手塚 治虫
販売元:小学館
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2007年1月 9日 (火)

蟲と眼球と白雪姫

注意! 文中に物語の根幹に関わる記述があるかも。

眼球抉子シリーズ完結。

最終巻は物語としてすべての決着をつけるために、かなり書き急いだ感もあり、正直、状況把握が厳しい印象は否めない。世界の終わり的状況であり、カタストロフを向かえているイメージは伝わるのだけれど、それはイメージとして、であり、具体的な状況として伝わることとは別なのだと思う。
これは自分の読み込みの足りなさかもしれないが、前作での状況(破壊の程度)が街という単位だったような印象がある。それが今回、いきなり世界(より具体的には、地理的な世界であり、人類という世界)の終わりといわれても、その「世界」の示すスケールに認識が追いついていないのだ。

前巻までに展開されていた、いわゆる異能超人戦闘小説というフォーマットは、(集団も含め)個対個であったわけだが、これは対世界を意味してはいない。つまり個のレベルから今回いきなり世界レベルへ作品を読む側の把握範囲が広がってしまったというギャップが、端折ってる感になっているのではなかろうか。

(実のところ、≪身の丈環境=世界≫という図式は、ライトノベルのメインストリームであるセカイ系そのものである。この寓話の根幹は、自己が認識し得る範囲をセカイとするという神の物語そのものであり、ゆえに本作は意図的に構造されたセカイ系小説なのである)

閑話休題。本巻単位では、そんな印象なのだが、それはそれとしてシリーズ全体として捉えた場合、環境設定としての終末神話は、実は、物語の根幹テーマではないのであった。本当のテーマは、あくまでも「生きることに対する意思とは。覚悟とは」。
クライマックスで語られる、この物語の真相である「胡蝶の夢モチーフ」は(まあ、今となってはよくあるテーマであり、驚くべきものでもないのだけれど)驚愕の事実などというものではなく、それをふまえ、世界は(あるいは、お前は)どう生きていくのか、あるいは生きていかないのか、ということが語られているのである。そこに作者の真摯な想いが表れているように思った。これは作者日日日の一連の純文学に描かれているテーマそのものであろう。

いろんな意味において、やはり全体的に若書きかなぁ、という気持ちもあるが、物語としてケリがついたことと、そこに込められた想いに対してひとまず拍手を送りたい。

ところで、今回読んで思ったのだが、作者が意図しているか否かは判らないが、「神と悪魔(本作では化け物)の戦いによる終末」という本作の展開フォーマットについて、デビルマンを連想せずにはいられない。もっとも、これはエピゴーネンであるとか再生産作品であるとかそういう問題ではなく、オリジナルとその後に続く類似作品たちによって繰り返し語られることによって、すでにひとつの物語ジャンルになっている、現在の日本のサブカルシャーリテラシーとして存在しているものなのだろう、と考えている。実は、そういった「以前・以後」という分岐点的作品となってしまった作品のひとつに「JOJO」などがあったりするのだが、このようなメルクマール存在問題については、感想文内ではなく、いつかどこかできっちりと検証したいと思う。

蟲と眼球(めだま)と白雪姫 Book 蟲と眼球(めだま)と白雪姫

著者:日日日
販売元:メディアファクトリー
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2007年1月 8日 (月)

メイド刑事3

いつのまにか身体が馴染んでしまったんだろう。なんかすごく面白く感じてしまっている自分に気づくのであった。テンションが高いところとか、安直なラブコメを排しているところとか、友情や仁義といった義侠に熱いところとか、基本的には原典の(ちゅーかはっきり「スケ番刑事」って云えよ、自分)フォーマットに忠実なのだけれど、それは現在のライトノベルのフォーマットからすると主流ではないのね。だから新鮮。なのかも知れない。
メイドっちゅー思いっきり飛び道具なネタではあるんだけれど、そのエクスキューズについては意外と(とっては失礼かもしれないが)真摯で、暴走王道好きな自分にはフィットしていたんだろう。

さて、今回登場のサブキャラクター。やぐキャラを上手く消化してると思うし、モデルの雰囲気を残しつつ上手くオリジナルなテイストにまとめていますなぁ。正直、やられた! と思いました。ちょっと自分でもいろいろと考えていたこともあって、そうそう、そういうことなんだよ、と賞賛半分羨望半分嫉妬半分(って足して1超えちゃってんじゃん)ではありますね。

メイド刑事 3 Book メイド刑事 3

著者:早見 裕司
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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評伝シャア・アズナブル <赤い彗星>の軌跡(上・下)

ヲタク系サブカルチャー分析本というジャンルは、商業ベースから同人ベースに至るまで玉石混合の状況の中、様々な露出がされている。特にその中でもキャラクター分析・評価というアプローチはファン気質を非常にくすぐるテーマであるためか、これまで数多く行なわれている。

さて、本書である。この本の素晴らしいところは、フィクションではなくあくまでも史実であるという一貫した視点で記されている点であり、故にファンブックではなく評伝足りえているということである。手法としても、評伝としての体裁を貫き通し、これまで多く既出した心理分析や名言集にはならないように気をつけているように思う。つまりは人物評としての伝記であることを固持できているのである。この架空を事実として捉える、捉えるだけではなく架空であることを否定する方法論により、本書は嘘学として成立しているのである。

面白いのは、ガンダムがTV版、映画版という微妙に内容の異なるいくつものバージョンが存在することを異説として表現していることである。現実世界においても時間の経過とともにいくつもの説が存在することはようある話なのだ。だからこそ、本書において異説が存在することで、逆にここに書かれている歴史があたかも史実であるかのような雰囲気を作り出しているのだ。これが例えばTV版だけを、あるいは映画版だけを原典とし、他を切り捨ててしまったらここまで歴史としてのリアリティはでなかったかもしれない。

自分はファーストガンダムについてはかなりはまった方だが、ゼータ以降はいまひとつ面白いとは思えずほとんど観ていない。だから、本書において、逆襲のシャアまでの概括ができたことについては感謝したい。
実のところ、本書後半(ゼータ中盤以降といってもいい)は、論旨構成が若干乱れてしまっているところはある。シャアという人物評が上手くころがっていないように感じた。あるいはこれは原典自体の混乱のせいで、まとめづらかったせいかもしれないが、もう少し整理してほしかったとは思う。
(もっともこれは、自分がゼータ以降、観ていない故の共感がないせいから、という見かたもあるのだな。しかし見なくなった理由が話として変に複雑化混乱化して面白くなくなったせいでもあろうし、表裏一体なのかもしれぬな。少なくとも、いまあらためて見直すべきときが来たと思いたい)※池田秀一の声で読んでください(笑)

評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻 Book 評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻

著者:皆川 ゆか
販売元:講談社
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評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻 Book 評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻

著者:皆川 ゆか
販売元:講談社
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2007年1月 4日 (木)

06年の総括パート3

06年の総括、最後はマイベストセレクションです。
もちろん、今の気分ではこうなる。ということなので明日、チョイスしなおすと替わることもあるだろうことを前置きしつつ、そして、カテゴリー内では順不同で読んだ順になっています。

本当はベスト5、とか、ベスト10、とか区切りよく選びたかったんだけどそこまで絞ることができませんでした。まあ、厳密な順位付けをするつもりもなかったので、いいでしょう。

ヨンダトップ5
-----------------
 トリツカレ男
 重力ピエロ
 夜のピクニック
 家守綺譚
 狐笛のかなた

文庫新書トップ7
-----------------
 陽気なギャングが地球を回す
 都立水商!
 青空の卵
 夏期限定トロピカルパフェ事件
 DIVE!!
 川の名前
 りえちゃんとマーおじさん

ライトノベルトップ12
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 神栖麗奈は此処にいる
 戦う司書と恋する爆弾
 狼と香辛料
 永遠のフローズンチョコレート
 だめあね☆
 メイド刑事
 涼宮ハルヒの憂鬱
 トリックスターズ
 制覇するフィロソフィア
 ジョン平とぼくと
 アンダカの怪造学
 ロケットガール


こうやってみると、読んでいるときにはけっこう楽しんでいたとしても、なんだかんだいってやっぱりハッピーエンドが好きだということを実感しますね。あと、大バカ小説も、かなぁ。

さて、昨年の総括は以上です。次のアップは、07年の感想です。乞うご期待(という程、何があるわけでもないですけれど。。。)

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2007年1月 2日 (火)

06年の総括パート2

次はカテゴリー別勝率です。メリハリある判別にしたかたので、あえて中間値をやめたせいで、辛口甘口ではあるかもしれません。また、今度は、シリーズものは1冊としてカウントしました。

-----------------------
        ×   ○   (勝率)
-----------------------
ヨンダ?   11  18 (62.06%)
文庫新書    6  35 (85.37%)
ライトノベル 22  39 (63.93%)
-----------------------

さて。
ヨンダとライトノベルはお試し買いや先物買い、ジャケ買いなどをモットーとしているところもあるので、やはり勝率は低いですね。ライトノベルに関していえば「あたり」作品についてはシリーズで読みつぐことになるので、冊数勝率はもう少し高くなるはず。

反面、文庫は自分が面白そうだと思った作品を読むのであまりはずれませんでした。ただ逆にみれば冒険していないということでもあるので、ここらへんはもう少し勝負してもいいかもしれませんね。

総じて、まあこんなところだろうな、といった結果でした。今年は、できれは平均的に7割5分超くらいでいければいいかなぁ。

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2007年1月 1日 (月)

06年の総括

謹賀新年2007。今年もそれなりに読んでいこうと思っていますのでよろしくご贔屓の程を。

さて、年末年始は読書も忘れて寝正月を敢行中。よって読書感想はありません。本当は未アップ本もあるのですが、それはそれ、これはこれ。
というわけで、昨年を振り返り今年を展望してみましょう、ということでございます。

まずは、総感想数。もちろん未アップ本は入っていません。それらは07年分にカウントしていく予定です。
また、純粋に読んだ数だけでみるので、シリーズモノは巻数分だけカウントしています。

2006年読書総数
------------
嘘学本       8
ヨンダ?     30
文庫・新書    49
ライトノベル   95
ハードカバー    7
少年・少女マンガ 19
大人マンガ    87
その他の本     9
CD・DVD等   1
------------
計       305

シリーズモノが多いだけあって(?)やはりライトノベルが多い。といいつつですが、自分の印象ではもっと読んでいたかな? という感じだったので、それ以外の文庫(ヨンダとそれ以外)と、あまり差がないのにはちょっと驚きました。というわけで、今年もこんなペースで読んでいけばいいのかな? ただライトノベルについては選眼力を高めてハズレ確率を減らしたいですね。

嘘学本については、そもそもの主旨でもあるし増やしていきたいです。ただ普通の新刊紹介では発見できないので自力で探索していくしかないのが厳しい。なるべくこまめに本屋まわりをしているのですが、なかなか難しいですね。まあがんばります。

てな感じで、全体的には今年も基本は文庫(ライトノベル含)を中心に展開していきたいと思います。

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