戦う司書と追想の魔女
武装司書シリーズの作話手法とは、大雑把に括ってみると、事件の発生から解決まで一直線。伏線やミスリード等複雑なストーリー構成にはしない(それが物語としての速度感を生んでいる)。その分、登場人物の行動の動機や過去を入れ子構造的に挿入し、それをもって物語の深みとしている。それは「本」によって過去・記憶を知るという、本シリーズの根幹をなすアイディアから導かれる必然でもあるのだろう。そしてこれまではその手法が上手くいっており、主となる事件の進行をあまり妨げることなく話に広がりを生み出していた。と思う。
だがしかし、本作ではちょっと入れ子がややこしすぎて勢いを殺してしまったところがあるのではなかろうか。登場する武装司書2名が結局のところ「物語」に対するかませ犬であり、その死が犬死でしかない。という大きなエピソードが、話を盛り上げる上で上手く機能していないように思う。
本作は、これまで曖昧であった謎をいくつか開示し、武装司書と神溺教団との最後の戦いというシリーズの起承転結の承。スターウォーズでいえば「帝国の逆襲」。話を進めるためにいろいろな設定を示していくための段取り進行が多くなるため、だれるところがあるのは、やむを得ないのかもしれない。
しかし、例えばヴォルケンというキャラクターが今回必要であったとは思えないし、もう少し整理することで散漫な印象をフォローすることもできたのではなかろうか、と思わないではない。
とはいいつつ気に入っているシリーズなので、次巻には期待しています。
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戦う司書と追想の魔女 著者:山形 石雄 |
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