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2006年12月17日 (日)

迷彩都市(1)~(2)

常々思っていたことに、推理マンガの作為性がある。例えば近代値少年や名譚亭湖南なんかを読むと特にそう感じるのだが、あまりにもトリック至上主義的、ハウダニット優先主義的ではなかろうか。逆説的にいうと、殺人の動機や心の動きなどはまったくおざなりで、陳腐な怨恨や金目当てだけで満足してしまっている。本来、殺人という心理的ハードルの高い犯罪に至るにはもっとそれなりにホワイダニットが必要なのではなかろうか、ということである。

(もっとも最近の犯罪は思った以上に簡単に人を殺しているが、命の軽さと上記の安易さとは違うベクトルで語るべきものだと思う)

と、そういう考えは基本的に変わりはしないのだけれど、実は最近少し変化している。本格推理として考えた場合、設定がどんなに無茶でも論理的に推理し得る犯罪というパズルが本格である、とするならば(実際にそうだと思う)、殺人の動機云々は副次的要素であって、さほどきちんと語られていなくてもいいのかもしれない、という考え方もできるのではなかろうか、と思うのだ。自分としてはその考えには賛同したくないので、とりあえずは本課題についてはペンディングとしたい。

で、それをふまえて。このマンガだが、推理マンガではあるんだけれど、それ以上に麻雀マンガなんだよね。連続殺人事件を食い止めるために捨牌から次の捨牌を推理する。という視点の物語は、よくよく考えればかなりトンデモない無茶な設定ではある。でも、これが面白かったりするのだからまた不思議。トリックと犯人については、かなり弱くて、その点ではかなり不満ではあるのだけれど、麻雀的推理としては実に読み応えがあるのだ。与えられた情報から真相を推理するというのが本格推理。故にこのマンガも本格推理マンガなのである。その推理する対象が「次の一手」的であってもね。

そして(警察小説というジャンルに対比させる意味での)警察マンガとしてもそこそこに機能していて、面白かった。キャラ造形はそのままでは独創的ではないのだろうけれど、麻雀というアイテムを全員に持たせていることでオリジナリティに転化できているしね。

それにしてもウンジャク先生でしょう! 眼鏡っ娘で、大酒呑み、制服キャラ、ヲタク、萌え要素の塊のようなヒトじゃあないですか。いやぁ、ねえ?

てなわけで、次回作を期待したいなぁ。

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