狐笛のかなた
ファンタジー。なんだけれども、今現在、ファンタジーという言葉から連想される物語とは少々趣が異なっている。(解説にもあるが)実際、剣と魔法は(広義の)ファンタジーの一ジャンルに過ぎなかったのだけれど、「指輪物語」やそこから派生したD&D、さらにドラクエ等のRPGによって、ファンタジー・イコール・北欧神話的叙事詩というイメージが強くなってしまっている。「ハリポタ」移行、若干の広がりができているが、しかしゲーム的な要素は強いように思う。
もっとも、日本の状況においては凡百のマンガやライトノベルは、実は娯楽としての広義のファンタジーをフォローしているのだが、そこには逆に「萌え」をはじめとする様々なサブカル特有のオプションがついてきてしまっていて、なかなかこれぞ日本のファンタジーといいづらい(気恥ずかしいから)のだろう。
脱線してしまったが、本作の作話フォーマットは実は、けっこう狭義のファンタジーなのであった。だから上述のファンタジー云々の別には当てはまらないのである。にもかかわらずファンタジーといいにくいのは、やはり「和風だから」につきるのかもしれない。そしてオリエンタリズム好きの自分としてはなんとも嬉しいかぎりなのであった。
常套句になってしまうが、魅力的な登場人物、切ない物語の展開とその結末、突出した新機軸はないが、一気に読ませる筆力がすばらしい。絵が目に浮かぶのだ。桜の咲く山の風景とか、妖狐の変化ぶりとか、ね。多分、アニメ向きなのかもしれない。観てみたいなぁ、と思います、本当に(ただし、○ブリ絵はノーサンキュー!だけど!)
狐笛のかなた 著者:上橋 菜穂子 |
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