天使が開けた密室
注意! 文中に謎に関するいくつかの真相について言及しております。
話としては、(失礼な云い方かもしれないが)可もなく不可もなく、といったところでの楽しさだった。
読み始めてなんとなく「のれないなぁ」と感じてしまったせいかもしれない。そう感じた理由は、ひとつは主人公があまりにも単純というか、ようするにおバカなせい。みえみえの詐欺にあっさり引っかかるのはちょっと現実味に乏しいように感じたのだ。それがキャラだから、といってしまえば、まあそうなのだけれど、ね。
もうひとつは性格の悪い登場人物が多くてげんなりしたこと。上述の詐欺師もそうだし、コンビニオーナーや葬儀社の社員、病院の士長、どうしてこんなに捻くれた因業キャラばかり揃えるかなといった感じである。まあこれもストーリーを進めるために必要なキャラだったことが後段判ってもくるのだけれど、ストーリーを進めるために現実的ではない設定を導入するのは(こと現実味のある本格推理としては)いかがなものか、と思うなぁ。
と、小言はここまで。以下、誉めます。(謎自体は犯人は謎が提示された時点で推測できたのだが)謎の解決に至って、ようやく冒頭のモノローグとのリンクに気づいたのだった。思わず読み返して、そういうことだったのか、とかなり目鱗状態となった。密室ミステリーの中に組み込まれた叙述ミステリー。という程、大仰ではないけれどもかなり心をつかまれました。あえていうなら、エピローグで探偵役が自分のミスリードに気づくがそのエピソードはなくてもよかった。真相は神の視点、つまり作者と読者のみが知っているという構造にしておくほうが余韻がより強調されると思うのだが、いかがだろうか。ともあれ、その一点だけでも読んでよかったと思ったのだった。
天使が開けた密室 著者:谷原 秋桜子 |
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