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2006年12月31日 (日)

戦う司書と追想の魔女

武装司書シリーズの作話手法とは、大雑把に括ってみると、事件の発生から解決まで一直線。伏線やミスリード等複雑なストーリー構成にはしない(それが物語としての速度感を生んでいる)。その分、登場人物の行動の動機や過去を入れ子構造的に挿入し、それをもって物語の深みとしている。それは「本」によって過去・記憶を知るという、本シリーズの根幹をなすアイディアから導かれる必然でもあるのだろう。そしてこれまではその手法が上手くいっており、主となる事件の進行をあまり妨げることなく話に広がりを生み出していた。と思う。
だがしかし、本作ではちょっと入れ子がややこしすぎて勢いを殺してしまったところがあるのではなかろうか。登場する武装司書2名が結局のところ「物語」に対するかませ犬であり、その死が犬死でしかない。という大きなエピソードが、話を盛り上げる上で上手く機能していないように思う。

本作は、これまで曖昧であった謎をいくつか開示し、武装司書と神溺教団との最後の戦いというシリーズの起承転結の承。スターウォーズでいえば「帝国の逆襲」。話を進めるためにいろいろな設定を示していくための段取り進行が多くなるため、だれるところがあるのは、やむを得ないのかもしれない。
しかし、例えばヴォルケンというキャラクターが今回必要であったとは思えないし、もう少し整理することで散漫な印象をフォローすることもできたのではなかろうか、と思わないではない。

とはいいつつ気に入っているシリーズなので、次巻には期待しています。

戦う司書と追想の魔女 Book 戦う司書と追想の魔女

著者:山形 石雄
販売元:集英社
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2006年12月30日 (土)

君に届け(1)~(2)

いやぁ、ピュアだね。すんごく、心が洗われる、というか、なんというか、甘酸っぱいような、そんな感じ。あ、甘酸っぱいといっても、色恋のせいではなくてね。友情とか信頼とか、そういう方面での、ですよ。読んでよかったなぁ。

しかし、登場人物皆、どっかずれていいるのだよね。一番まともなのが、やのちづヤンキースの二人だってのがこれまた面白いっすね(ちなみに自分はやのちん推しです)。

君に届け 2 (2) Book 君に届け 2 (2)

著者:椎名 軽穂
販売元:集英社
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君に届け 1 (1) Book 君に届け 1 (1)

著者:椎名 軽穂
販売元:集英社
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さよなら絶望先生(6)

相変わらず毒舌妄想系な唯我独卑を走り続ける久米田康治。時事を捉え毒づいてみせるその姿を、後の評論家達は「時代とネタ男」と称した。

いや、判りにくいダジャレを云ってみたかっただけです。すみません。

自分のネタ出しの手法と近い、ちゅーかいつも一歩先をいかれているんで(そりゃ、相手はプロだもんさ。一介の素人には敵いませんよ?)ちょっとしゃく(由美子)なのだ。

巻末カレンダー。ちょっと欲しいかもですよ。これが無邪気な、あるいは、確信犯なマンガ家だと、自家出版&コミケのパターンに走っちゃうんだろうけれどね。いや、実際に年末のビッグサイトで売ってたりして。

それはそれとして、自分もほーたいふとももにはドッキリですよ。

さよなら絶望先生 第6集 (6) Book さよなら絶望先生 第6集 (6)

著者:久米田 康治
販売元:講談社
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2006年12月28日 (木)

オオカミさんとおつう先輩の恩返し

いやあ、笑ったなぁ。ヘンにツボにはまっちゃったんだろうなぁ。簡単に云えば暴走で妄想なアッパー系ハイテンションスラップスティック部活小説。長い? でもそんな感じでしょ。

しかし、この作品。ひたすらに類型的でとことん典型的な、これぞまごうことなきライトノベルでございますよ、という話なのだ。自分は基本的に小さなカテゴリー内で閉じていてよしとする独創性のない話は嫌いなのですよ。今でもそういう本にうっかり出くわすと怒ってるしね。
なのに! このお話に関しては妙に気に入っているんだなぁ。馬が合うんだよなぁ。なんでだ? たぶん、勢いのいいボケツッコミの文章の流れとか、ヲタク心をくすぐる引用文体とか、そんな文章巧者的な部分に対してモロ自分好みのにくいあんちくしょう的なほのかな行為を、じゃなくて好意を感じているのでしょう? しかも巨乳だし? メイドでロリでツンデレなその日の気分でよりどりみどりだし? ダメ人間化してますか? そうですか。

ところで、これも普段の自分だったらマイナスポイントであるのだけれど、前作でも感じたモロにエロエロな設定。ホントにあまり好きじゃあなんですよ、ほら、自分、ピュアラブなもんで(アホ)? 手もつなげないチョー奥手なもんで(別のところはつながってますけれどね。。。。あ、もちろんハートのことですよ?)。でもねえ、ここまであっけらかんとモロに徹してくれちゃうと、それもまた味! そんな感じですかね。艶笑譚に目くじら立てるヤツはいないっしょ、みたいな。

正直なところ、イラスト加点があるというのは事実ですよ。絵の力ってやっぱり強いじゃあないですか。妄想励起力は強いじゃないですか。せっかく話がよくてもイラストがしょぼいと苗えるのはしかたのないことだと思うのですよ。でも逆に話が悪くても絵が救うのかっちゅーとそうでもなくて、それは実はけっこう難しい検証テーマだったりするのだけれど、今回はここまで。とにかく、このイラストはいい。

ちょっとだけチェックを入れると最終話で話がややマジになっているのは、自分としてはどうかなぁと思うのだ。いや、物語として終着を目指す以上、大きな流れを作り出す(具体的にはラスボスの設定)必要がいるわけです。それは物語に広がりを持たせる事にもつながり、作話法としては、けして間違いではないというか、当然すべきことだと思うのですよ。ただ、なんとなくだけど、ひたすらにおバカでノーテンキなドタバタの連続ということでもいいんじゃないのかねぇ、という気もしないでもない。そんな飛び道具だけの話があってもいいんじゃないのかなぁ、とも思うのです。でもそれは物語をグズグズでなしくずし的に「おしまい」としてしまうことであり、それは望むことではない。むずかしいところだねぇ。

オオカミさんとおつう先輩の恩返し Book オオカミさんとおつう先輩の恩返し

著者:沖田 雅
販売元:メディアワークス
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2006年12月27日 (水)

マリア様がみてる クリスクロス

祐巳とドリルの大きな物語は依然解決せず、今回も超強力な引きのまま次回持ち越し。うわーん、また蛇の生殺しだよ。といいながらも話は動いており、瞳子ファイト! とドリル推しの自分は大いなる親心で事の行く末を見守るのでありました。

しかし、今回はそんな大きな、そしてディープな状況を引きずっているせいかのかどうかは判りませんが、表面上のエピソードである、バレンタインの宝探しはちょっと浮ついていたかなぁ、あまりまとまっていなかったかなぁ。と思いました。まあ、生徒全員が甘いチョコの香りに酔った状態の話だからしかたないんじゃ? と好意的に解釈いたしますが。

ひどいなぁ、と思うのは由乃さんの扱いですかねぇ。巻を重ねるごとに(リリアン内での)評価が地に落ちて行くような感じがするんだけれど。まあ、自分脳内評価とは違いますけれどね。マリみてファンの方々のお気持ちも同様かしら?

今回のピンポイント攻撃は、冒頭の祐巳と祥子のチョコ交換のときの会話でしょ? やっぱ! ちょっとお前たち! 行きつくとこまでいっとるんちゃうか!? ちゅーぐらいのユリい科白。なるほどそうか、ツンデレとして祐巳セメ×祥子ウケだな! とか、そんな、あらぬ&いらぬ妄想をグルングルンさせてしまうのでした。とかそんなことばかり考えてるとですね、由乃さんから「一人で大人にならないでよ」とか注意されちゃうわけですねぇ。え? そういう意味じゃないって? すみません。(アホな感想だね、どーも)

マリア様がみてる (クリスクロス) Book マリア様がみてる (クリスクロス)

著者:今野 緒雪
販売元:集英社
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ジョン平とぼくと2 ジョン平と去っていった猫

自分がこの物語を気に入っている一番の要素は何か? と考えたとき、一番最初に思いつくのは、語り口の端正さではないか、と思うのだった。言葉の選び方が実に冷静かつ客観的で論理的。それは1作目のときから感じていたのだけれど、その印象は今回も変わらない。だからといって話がエモーショナルにあらず、ということではない。実際、今回の物語は実に、実に、せつない。

自分は、単純な別離というシチュエーションに対して泣きツボを感じない。もともと人はうつろうモノであり、例えば、死別という圧倒的に永遠の別離というレベルから、行き違いによる物別れまで、様々なシチュエーションがあるが、しかしそれは果たして悲しいものなのか? と思うのだ。
人はしょせん独りぼっちでしかない。だから安直な別れについて「悲しい」「泣ける」というのは、あまりにも安易な欺瞞と憐憫でしかないだろうに、と思う。悲しみなんかないだろう、と思っている。
だからこそ。
逆説的に、自分は、別れてなお想いが残る。つながりが残る。そういうシチュエーションにこそ涙するのだ。別れること自体が当たり前で普通にあり、そして、心のつながりなど実際にはあり得ない事が前提だからこそ、そうではないのだ。人はつながってるのだ。という「奇跡」があるという「幻想」に心を動かされるのだろう。

いや。自分はそういうことを云いたかったのではないのだ。この物語が、いかにシンプルな結びつきの物語であるのかということがいいたかっただけのだ。
おそらく、人間と使い魔という絶対的(?)な結びつきのある関係からできている物語だからこそ、関係性を意識せざるを得ない構成なのだろうなぁ。などと、そんな一歩引いた感想を持ちつつも、もっと単純に、「ああ。なんてせつなくて美しいおわりかたなんだろう」とそういうシンプルな感想を伝えたかっただけなのだ。

そりゃ、あんた、単に猫好きだからそう思っただけじゃないの。という自分へのツッコミもいれつつ。

ジョン平とぼくと2 ジョン平と去っていった猫 Book ジョン平とぼくと2 ジョン平と去っていった猫

著者:大西 科学
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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○本の住人(1)

キャラ設定的には、おもいきり「苺ましまろ」だよねぇ。でも面白いから許す。以上!

いや、それだけじゃ素気なさすぎですかね。でもそんな感じなんすよ。

自分的には幼女嗜好はないので「キャラ推し!」というような読み方はしてないんですが、一般にはどういう読み方をされておるのでしょう。ま、別に知ったからどうということでもないんですけれど。

○本の住人 1 (1) Book ○本の住人 1 (1)

著者:kashmir
販売元:芳文社
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2006年12月25日 (月)

天使が開けた密室

注意! 文中に謎に関するいくつかの真相について言及しております。

話としては、(失礼な云い方かもしれないが)可もなく不可もなく、といったところでの楽しさだった。
読み始めてなんとなく「のれないなぁ」と感じてしまったせいかもしれない。そう感じた理由は、ひとつは主人公があまりにも単純というか、ようするにおバカなせい。みえみえの詐欺にあっさり引っかかるのはちょっと現実味に乏しいように感じたのだ。それがキャラだから、といってしまえば、まあそうなのだけれど、ね。
もうひとつは性格の悪い登場人物が多くてげんなりしたこと。上述の詐欺師もそうだし、コンビニオーナーや葬儀社の社員、病院の士長、どうしてこんなに捻くれた因業キャラばかり揃えるかなといった感じである。まあこれもストーリーを進めるために必要なキャラだったことが後段判ってもくるのだけれど、ストーリーを進めるために現実的ではない設定を導入するのは(こと現実味のある本格推理としては)いかがなものか、と思うなぁ。

と、小言はここまで。以下、誉めます。(謎自体は犯人は謎が提示された時点で推測できたのだが)謎の解決に至って、ようやく冒頭のモノローグとのリンクに気づいたのだった。思わず読み返して、そういうことだったのか、とかなり目鱗状態となった。密室ミステリーの中に組み込まれた叙述ミステリー。という程、大仰ではないけれどもかなり心をつかまれました。あえていうなら、エピローグで探偵役が自分のミスリードに気づくがそのエピソードはなくてもよかった。真相は神の視点、つまり作者と読者のみが知っているという構造にしておくほうが余韻がより強調されると思うのだが、いかがだろうか。ともあれ、その一点だけでも読んでよかったと思ったのだった。

天使が開けた密室 Book 天使が開けた密室

著者:谷原 秋桜子
販売元:東京創元社
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2006年12月22日 (金)

酒のほそ道(20)

相変わらず、酒が飲みたくなるなるなマンガで、実際に飲みました。豚しゃぶで。ダメなオトナへまっしぐらですね。

今回、フィーチャーされている台北編には思いきり旅ゴコロと酒ゴコロを刺激されてしまい、ああ、夜市の屋台で酒三昧が呼んでるんだよぉ、と一人身悶えてしまったことをここに告白しておくのであります。

臭豆腐、ね。好きなんだよなぁ。うちの近所で食べられるところないかしらん。

Book 酒のほそ道 20 (20)

著者:ラズウェル細木
販売元:日本文芸社
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しずるさんと無言の姫君たち

相変わらず面白いのだけれど、短編集だけに物語構造についての考えが常に付きまとうのであった。

事件は単純に。それをミスリードさせるための修飾を散りばめる。それが「しずるさん」の物語構造である。なんのことはない、本格推理の基本なのだ。なのになぜに胡散臭さがあるのだろうか。それは物語として(別舞台も描かれつつも)基本的にはしずるさんとよーちゃんのいる病室だけで展開されるからだろう。このことにより物語は実に抽象的なものとなりし、事件は仮定・架空の思考実験に純化される。まあ、このこと自体、やはり本格推理のフォーマットであることの追証なのだけれど。

そして本当はこちらこそが推理小説らしからぬ印象を与えているのだが、つまりは推理の過程がない。のだ。あるのは結論と仮定。事実としてそうだったと論証されるのは作話としてそうなったと書かれているからであり、実証行為は伴っていない。ああ、これもやはり思考実験であることの説明だね。

ということは、しずるさんという物語は、本格推理のコアをそのまま文章化したものである、ということになってしまうのだが、それも違和感があるのであった。

この物語が大いなる叙述ミステリーなのかもしれない。と、ふと思ったのであった。つまり。しずるさんは現実には存在しない。心の病気であるよーちゃんの頭の中にだけ存在し、よーちゃんのお見舞いは実際には通院である。そんなことを考えたが、まあ、単なる思いすごしであろうさ。

しずるさんと無言の姫君たち―The Silent Princess In The Unprincipled Tales Book しずるさんと無言の姫君たち―The Silent Princess In The Unprincipled Tales

著者:上遠野 浩平
販売元:富士見書房
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2006年12月20日 (水)

トランスルーセント 彼女は半透明(5)

最終巻として、おさまるべきところに落ち着いたというところだろうか。主人公達のこれからについてどうなるかは具体的に示されていないが、それを暗示するのは、透明病夫婦のありようである。ある意味、病気の快癒という結果について、そんなに安易な解決でいいのか? という気持ちはあるけれど、まあピュアな物語としては順当だろう。

しかしね。ダメナオトナの自分としては、いろいろとイケナイ想像を膨らましてしまうわけですよ。透明なのに、とか、透明だから、とか、あらゆるバリエーションの妄想は膨らみまくりますよね。例示はしませんが、ダメオトナなら判るっしょ? そんなわけで、ある意味、己の純粋度合いに対するリトマス試験紙的マンガであったのかもしれませんね。

トランスルーセント 5巻―彼女は半透明 (5) Book トランスルーセント 5巻―彼女は半透明 (5)

著者:岡本 一広
販売元:メディアファクトリー
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2006年12月18日 (月)

殺し屋さん(1)~(2)

日本一の殺し屋が繰り広げるダジャレやシモネタの数々。特にシモネタはあまりのくだらなさとビジュアルのいやらしさが実に! もう! 己の精神的股間を直撃だ。とにかく、大バカなマンガだよ。リアル系4コマだからこそ、直球かつ飛び道具的な笑いを増幅させている。

自分は、実はいままでこのマンガの存在を知りませんでね。2巻の表紙に「ハッ!?」とするものを感じ、購入したわけですが、いや予想外。いい意味で。そんなわけでお気に入りのキャラクターはもちろん、無自覚にシモネタ発言を暴発させる乳の硬き、ぢゃなくて、父の仇女なわけですが、実はシェパードも好きですねぇ。

そんなわけでプチエロ好き、バカネタ好き、にはお薦めします。でも、まあ、あれだな。自分的には超オッケーなんだけれども、そんなに期待して読むようなマンガでもないですからね。

殺し屋さん 2 (2) Book 殺し屋さん 2 (2)

著者:タマちく
販売元:双葉社
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殺し屋さん 1 (1) Book 殺し屋さん 1 (1)

著者:タマちく.
販売元:双葉社
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2006年12月17日 (日)

よつばと!(6)

世の中にはいらないものなんて一つもないんだよ。

相変わらず面白いなぁ。いやいやいや。「面白い」んじゃあなくて、「いい」というほうが正しいかな。まあ笑えるのは事実で、1ページに1か所必ずツボが!? みたいなところはあるんだけれど、そのような要所要所のピンポイント攻撃よりも、全体をつつむ空気感、世界観、世代間、の関係性が、疲れた心をときほぐし癒しの効果を生んでいるのだ。(うん、今、いいこといった!>いや、全然いってねーから)

それにしても、5才児のトンデモネー発想によるバカ発言やバカ行動をここまでリアルに描いたマンガって、自分は知りませんね。あるいは、他のマンガはストーリーを展開するために、どうしても作為が必要になるのだけれど、よつばとってば、ストーリー進行はいらないから、その分、自由度が高いのかもしれないですな。

今回の発見どころはふーかが副会長だったこと。そして制服からのぞく太ももがナイスだったこと。台無し発言ですか? そうですか。。

Book よつばと! 6 (6)

著者:あずま きよひこ
販売元:メディアワークス
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迷彩都市(1)~(2)

常々思っていたことに、推理マンガの作為性がある。例えば近代値少年や名譚亭湖南なんかを読むと特にそう感じるのだが、あまりにもトリック至上主義的、ハウダニット優先主義的ではなかろうか。逆説的にいうと、殺人の動機や心の動きなどはまったくおざなりで、陳腐な怨恨や金目当てだけで満足してしまっている。本来、殺人という心理的ハードルの高い犯罪に至るにはもっとそれなりにホワイダニットが必要なのではなかろうか、ということである。

(もっとも最近の犯罪は思った以上に簡単に人を殺しているが、命の軽さと上記の安易さとは違うベクトルで語るべきものだと思う)

と、そういう考えは基本的に変わりはしないのだけれど、実は最近少し変化している。本格推理として考えた場合、設定がどんなに無茶でも論理的に推理し得る犯罪というパズルが本格である、とするならば(実際にそうだと思う)、殺人の動機云々は副次的要素であって、さほどきちんと語られていなくてもいいのかもしれない、という考え方もできるのではなかろうか、と思うのだ。自分としてはその考えには賛同したくないので、とりあえずは本課題についてはペンディングとしたい。

で、それをふまえて。このマンガだが、推理マンガではあるんだけれど、それ以上に麻雀マンガなんだよね。連続殺人事件を食い止めるために捨牌から次の捨牌を推理する。という視点の物語は、よくよく考えればかなりトンデモない無茶な設定ではある。でも、これが面白かったりするのだからまた不思議。トリックと犯人については、かなり弱くて、その点ではかなり不満ではあるのだけれど、麻雀的推理としては実に読み応えがあるのだ。与えられた情報から真相を推理するというのが本格推理。故にこのマンガも本格推理マンガなのである。その推理する対象が「次の一手」的であってもね。

そして(警察小説というジャンルに対比させる意味での)警察マンガとしてもそこそこに機能していて、面白かった。キャラ造形はそのままでは独創的ではないのだろうけれど、麻雀というアイテムを全員に持たせていることでオリジナリティに転化できているしね。

それにしてもウンジャク先生でしょう! 眼鏡っ娘で、大酒呑み、制服キャラ、ヲタク、萌え要素の塊のようなヒトじゃあないですか。いやぁ、ねえ?

てなわけで、次回作を期待したいなぁ。

迷彩都市 2 (2) Book 迷彩都市 2 (2)

著者:我孫子 武丸,中山 昌亮
販売元:竹書房
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迷彩都市 1 (1) Book 迷彩都市 1 (1)

著者:我孫子 武丸,中山 昌亮
販売元:竹書房
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2006年12月13日 (水)

ブレスレス・ハンター2

前作でもなんとなく感じていた違和感である、メンバー達の闘うこと(あるいは殺すこと)に対する過剰な適応ぶりはさらに拍車がかかってきている。殺戮と快楽の狭間で精神を常識域にとどめることの難しさ、その悲劇性、ドラマ性、それがこの作品におけるテーマであることが鮮明になってきたということだ。

通常ならば、肉親や愛する者の死に対するリアクションを物語のコアな推進力にするのだろう。しかし本作では一見そのようにみえて、その実、それはきっかけでしかないことに気づく。作者があとがきで触れているとおり、その状況下において人はどう壊れていくか、あるいは壊れないでいられるのか、ということが焦点なのだ。それはかなり痛々しい物語として感じる。そしてそれは成功なのだと思う。

自分的に一番、うひゃぁ、と思ったのは後半、STABメンバーがあっけなく死んでいくシーンで、あそこまで犬死をあっさり書いてしまうことに対して、強く心を動かされた。これは多分、自分自身のトラウマ(まあ自覚しているので本当の意味では違うのだけれどもね)なんだろうなぁ、と思った。

ブレスレスハンター 2 Book ブレスレスハンター 2

著者:葛西 伸哉
販売元:ホビージャパン
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狐笛のかなた

ファンタジー。なんだけれども、今現在、ファンタジーという言葉から連想される物語とは少々趣が異なっている。(解説にもあるが)実際、剣と魔法は(広義の)ファンタジーの一ジャンルに過ぎなかったのだけれど、「指輪物語」やそこから派生したD&D、さらにドラクエ等のRPGによって、ファンタジー・イコール・北欧神話的叙事詩というイメージが強くなってしまっている。「ハリポタ」移行、若干の広がりができているが、しかしゲーム的な要素は強いように思う。

もっとも、日本の状況においては凡百のマンガやライトノベルは、実は娯楽としての広義のファンタジーをフォローしているのだが、そこには逆に「萌え」をはじめとする様々なサブカル特有のオプションがついてきてしまっていて、なかなかこれぞ日本のファンタジーといいづらい(気恥ずかしいから)のだろう。

脱線してしまったが、本作の作話フォーマットは実は、けっこう狭義のファンタジーなのであった。だから上述のファンタジー云々の別には当てはまらないのである。にもかかわらずファンタジーといいにくいのは、やはり「和風だから」につきるのかもしれない。そしてオリエンタリズム好きの自分としてはなんとも嬉しいかぎりなのであった。

常套句になってしまうが、魅力的な登場人物、切ない物語の展開とその結末、突出した新機軸はないが、一気に読ませる筆力がすばらしい。絵が目に浮かぶのだ。桜の咲く山の風景とか、妖狐の変化ぶりとか、ね。多分、アニメ向きなのかもしれない。観てみたいなぁ、と思います、本当に(ただし、○ブリ絵はノーサンキュー!だけど!)

狐笛のかなた Book 狐笛のかなた

著者:上橋 菜穂子
販売元:新潮社
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2006年12月11日 (月)

戴天高校勝利部

いやこれは実にチャーミングな物語だね。なんかすごく読んでいて楽しいのだ。基本的には萌えとヤオイとバトルに彩られたノーテンキラブコメディという直球ライトノベルで、設定も物語も特に目だって目新しいわけでもない。しかし、登場人物たちが実にイキイキとしている。楽しんでいる。そしてそれを書いている作者もきっとノリノリ悪ノリで楽しんでいる。そんな気分がすごく伝わってくるのだ。

実のところ、イラストレター緒形氏に助けられている(いいイメージングが出来た)ところもあるのは確かなのだ。もしこれがいかにも萌ぇ~なラノベ絵だったら興醒めしてしまったかもしれない。でも、作者のキャラクター造形力は上手いなぁ、とは正直思いますですよ。ストーリーもライトノベル的萌えシロを意図的に仕掛けとしてちりばめているところなど、確信犯じゃなぁ、と感心したしね。一人称視点をドラスティックに変えてしまうのは個人的には「だったらはじめから三人称で書きゃいいじゃん」と思わなくもないのですが、それもまた意味あってやっているようでもあるので、それだけをもって判断をするつもりはありませんよ。だって、気に入っちゃったんだもん。というわけで、とりあえず、次回作に期待するところ大です。

ちなみに作品の位置付けとしてはヘンな部活小説ということになるわけだが、あらためて考えると、このジャンルは良作が産まれることが多いように思うなぁ。バカバカしい妄想が暴走しやすいからなんだろうか。いずれ考察してみたいテーマですね。

戴天高校勝利部 Book 戴天高校勝利部

著者:夏希のたね
販売元:集英社
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2006年12月10日 (日)

ラズウェル細木のラ寿司開店!!

酒のほそ道姉妹編とあるが、内容は180度違う。

テーマは寿司。寿司をいかに楽しむか、話のタネにするかをあらゆる角度からアプローチしていく。しかもその方法が、うんちくや店レポを中心とするのではなく、自分で実験してみようという、オトナのバカ実験的要素が強い。これが面白いんだよね。豪華ネタ自作太巻とか、穴子の温め直し方とか、(いい意味で)くっだらないんだけど、凄くいい。目鱗落ちまくる。

結局、酒も食い物も、遊びなんだよね。だから楽しいんだし、楽しまなきゃ損なんだよ。そんな楽しみ方を示しているところが、このマンガの肝であり、よさである。そういうことなんだろう。

後半の旅日記はまたアプローチが違っていて、端的に云えば、普通に面白い旅先の食べ物レポートマンガでした。ただ自分がアジア好きなので、行ったことのある街レポは懐かしく、まだ観ぬ街のレポートはあこがれをいや増してくれる。

ああ、酒が飲みてーなー(結局、酒かよ>自分)

Book ラズウェル細木のラ寿司開店!!

著者:ラズウェル細木
販売元:日本文芸社
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酒のほそ道(1)~(19)

前々から知っていたが、そしてたまに読んではいたが、この度、意を決して(?)19冊一括購入の上、一気読み。

ウソです。一気に読んでいません。読めません。途中途中やむなく中断します。なぜならば。。。。。

危険なマンガなんだよね。読んでいると必ず飲みたくなるから。いやホント、マジで。

酒マンガというジャンルにおいてそれぞれ役割があるとするならば、「夏子…」は酒造りの勉強、「レモン…」は酒へのうんちくと人情劇だろう。「よっぱらい研究・・・」は飲み手の醜態のリアルレポートだな。じゃあ本作は? そりゃあ飲兵衛の飲兵衛による飲兵衛のための共感ですよ。飲み手の視点からの「酒っていいよねぇ」という日々のドキュメンタリーであるわけよ。ほら、他人が美味しそうに飲んでいるのを見ると、飲みてーなぁ、って思うよね。このマンガはその連続であるわけさ。そりゃ季節折々につけ、理由があってもなくても、酒はいい。愉しいやね。

主人公岩間さんの飲み方のこだわりは、共感するところもあれば、違うだろぉ~、と思うところもあるが、結局美味しく楽しく飲みはじめてしまえば理屈なんか、関係ないかぁ、まーいっかぁ、となってしまうところは非常によくわかる。飲兵衛ってしょーがねーなぁ(自戒と笑)。

Book 酒のほそ道 19 (19)

著者:ラズウェル細木
販売元:日本文芸社
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2006年12月 5日 (火)

ぱいかじ南海作戦

相変わらずのシーナ節のヘンテコ小説ではあるのだけれど、現代の南の島を舞台にしたサバイバル(?)小説ということで、いつもとはちょっと勝手の違う感じはあった。
椎名誠の書く物語は、あやしい探検隊に代表される基本的にノーテンキなノンフィクションと、じっとりとした熱と湿と腐敗感(あるいは死)がまとわりついたフィクションとの、まったく相反する印象がある。今回はこれらがミックスされてしまっていて、南の島の破天荒な冒険譚、刹那的かつどーでもいーけんね的南国生活。とはなりえなかった。常にドロップアウトの(社会からのという意味ではなく、人としてのかなぁ)気配がつきまとっており、読んでいて、単純にワクワクドキドキできなかった。

もしかしたら、テント野宿生活なのに完全隔離独立の生活ではなく、常識社会に依存しているからそう感じるのだろうか。あるいは自分自身が、そういうドロップアウトに対してさほど羨ましさを感じないだけなのかもしれないけれど。南国島のノーテンキ生活自体は憧れてはいるんだけどなぁ。

ストーリー構成的に起承転結とはなっていないのが面白かった。序破急?違うか。

ぱいかじ南海作戦 Book ぱいかじ南海作戦

著者:椎名 誠
販売元:新潮社
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2006年12月 4日 (月)

強奪 箱根駅伝

面白かったといえば面白かった。でも、なんとなく一歩引いた目線で読んでしまい、正直ハラハラすることはなかった。

うまく説明できないのだけれど、語り口として、問題が発生しそれをどう解決するか。というハウダニットが弱いのではなかろうか。今、この問題を解決するために何をしなければならないのか。それに対してどう対処したのか。という観点における具体的な描き量が少ない。だから、なんとなく誘拐し、なんとなく要求が突きつけられ、なんとなく収束していった、というような印象になってしまう。そのせいで、読む側の熱の高まらなさにつながっているように感じた。

放り投げっぱなしの伏線も多く、主人公(?)都留と水野の関係、都留の過去、都留と幸田の関係など、重要なのだろうに、全然拾われておらず、クライマックスのレースシーンが盛り上がらないのもそのせいではなかろうか。

まあ、自分自身、駅伝に対してまったく思い入れがないというのが、はまらなかった一番の理由なのだろうけれど。だから、人の命とたかが駅伝だったらさっさと中止しちまえばいいじゃん、と思うしね。レースが、あるいはTV放送が、やめられないエクスキューズをきちんと書いて欲しかったなぁ。

強奪 箱根駅伝 Book 強奪 箱根駅伝

著者:安東 能明
販売元:新潮社
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お隣の魔法使い 不思議は二人の使い魔

ちょっと不思議な日常の物語を、些細なエピソードの積み重ねで描く。食い足りないという見かたもあるし、反面、それでいいのだなぁ、という気もする。あまり大きなこれは、といった感想もないのだけど、これはこれでいいのだと思う。

お隣の魔法使い 不思議は二人の使い魔 Book お隣の魔法使い 不思議は二人の使い魔

著者:篠崎 砂美
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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2006年12月 1日 (金)

プラネタリウムのふたご

いしいしんじという作家の資質として、手放しの明るさというものはなく、むしろ全編に満ちたアイロニー、哀しみの予感が常にそこにあるように感じていた。今回は特にそれが際立っており、実際、大きな哀しい運命が登場人物達に訪れる。

自分は悲劇性の高い物語はあまり好きではない。云い換えると、ハッピーエンドが好きなのである。そりゃ誰でもせめて空想の世界くらいは幸せな結末を迎えたいじゃあないですか。だからこそ悲劇的結末なんてあえて読みたくなんかないじゃないですか。それが基本的なスタンスなのですよ。

しかし。本作はだからといって読み心地がよくなかった、というわけでもないのですね。哀しい物語ではあっても、それを運命として淡々と描いているせいだろうか。あるいは国や時代を曖昧にした寓話的つくりのせいだろうか。宮沢賢治の童話、寓話に近しいのかもしれない。

プラネタリウムのふたご Book プラネタリウムのふたご

著者:いしい しんじ
販売元:講談社
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