モノケロスの魔杖は穿つ
設定は面白いと思うんだけど、小説としてはどうも好きになれない。作者が定めたルール/世界を成立させるために登場人物が振り回されている。人物造形が手薄な感じだし、存在自体にコマとしての意味以外をみていないように思えるのだ。物語なんていうものは多かれ少なかれそんなもんなんだけれど、本作はそれが度を越しているように自分は感じた。作者自身もゲームという言葉を使っているように、国対国というゲームを進めるためにキャラクターというコマを動かしているのだな。
文体も暗喩だらけの腹の探り合い的交渉会話ばかりで思わせぶりではあるが、自分としては、それは独りよがりな自慰行為のような気がする。
組織や集団の戦略/攻略/交渉というようなストラテジー系小説が好きなら楽しいのだろう。自分もけして嫌いというわけでもない。しかし、そればかりを押し進めてキャラクターをなおざりにするのはいかがなものか、と思う気持ちのほうが強い。こう書くと自分がキャラ萌え重視のように思われてしまうかもしれないが、そうではなくて、キャラクターが物語に対してアイデンティファイされていないのが小説のあり方として好きじゃないということである。
といいつつ、次の展開は気になるので次作も読むと思う。
モノケロスの魔杖は穿つ 著者:伊都 工平 |
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