« のだめカンタービレ(16) | トップページ | 芸能グルメストーカー »

2006年10月20日 (金)

動物園の鳥

ひきこもり探偵の物語ついに完結。面白かった!

なんだけど、これはどう読んでも推理小説ではないですね。ミステリーとしては弱い。謎の提示とその解明が一直線で、フェイクもフックもないというのはさすがにどうかと思いました。明らかに犯人らしい人物が犯人だし、細かい謎(例えば手帳)も謎になっていない。また、一堂に会して「犯人はお前だ」とやるのはいいが、その後、延々と続く、加害者も被害者もまとめてのホワイダニットは、謎の解明ではなく、登場人物のそれまで生きてきた中での瑕を吐露させるものであり、それはミステリーではない。

つまり。この小説は、完結編においてようやく、人々の物語へと変わることができたのたと思うのだ。1作目からミステリー部分については「弱い」ところがあるのは感じており、むしろ登場人物の関係性、成長の部分に、よりウェイトが置かれていた感触はあったのだが、ここにきてそれが物語としての主題としてはっきりと打ち出されたのだ。であるがゆえに、彼らの関係がエピローグ、そしてサービストラックにおいて、変わらず、かつ、変わったことが、心に響くのだ。

そんなわけで、非常に良質の「小説」だったわけですが、正直にひとつだけ吐露しておくと。みんな説教臭いぞ(笑)。

動物園の鳥 Book 動物園の鳥

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« のだめカンタービレ(16) | トップページ | 芸能グルメストーカー »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 動物園の鳥:

» 『動物園の鳥』 [Cherryh's blog annex]
『動物園の鳥』作者: 坂木 司出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/10/11メディア: 文庫 ひきこもり探偵シリーズ、第3弾にして、シリーズ最終作。 まあ、そういう終わり方しかないよね、というまっとうな終わり方。でも、いい終わり方なので、未読の方は、安心して読んで欲しい。シークレットトラックも、らしい。 語り手の坂木は、ひきこもりの鳥井に依存されながら、自分もその関係に依存していることを自覚し、自立することを決意する。だが、それは孤立することではない。人は互いに支えあ... [続きを読む]

受信: 2006年12月 2日 (土) 21時28分

« のだめカンタービレ(16) | トップページ | 芸能グルメストーカー »