狼と香辛料(3)
3作目ともなるとだいぶ安定感も出てきて、安心して楽しむことができた。主人公と狼神とのビミョーな関係は毎回、実にいい雰囲気を作り出しているのだが、今作において、二人の距離/関係/気持ちが、いままでよりも変化しはじめている。つまりはプラトニックな関係から、もっとオトナの(笑)関係を意識し始めた。もちろん、一作目からそれはあったが、現実の問題として真剣に考え出したという意味である。まあ、個人的には安直に表層的なハッピーエンドにはして欲しくないので、このまま手を伸ばせば届くけれども、肩が触れ合う程には近くない、そんな距離感のまま幕を閉じて欲しいかなぁ、とは思ったりもするね。
話としては、株の取引、駆引きを主軸に据えていて、商人の物語にもまだまだ切り口はあるんだぞ、という作者の気合が感じられたな。なんとなく「波の上の魔術師」や「リスクテイカー」を思い出しながら読みました。もっとも、そんなに複雑な仕掛けでもないし、現代社会では違法行為すれすれのような気がするが、どうなんだろう? 自分は経済系はトンと詳しくないのでなんともいえないが。ファンタジー世界だからいいんだけどね。
あえて難を上げるなら、ホロの気持ちをめぐってのグダグダ感もないわけではなく、主人公の気持ちのゆれがそのまま文章のゆれに出てしまったかな、とも思うが、それは許容の範囲内かな。
というわけで、次巻も楽しみである。あるのかな?
おまけ感想。「狼」と「娘」って、けものへんとおんなへんの違いだけなのね。もしかしたらそんなあたりから、話を思いついたのかしら。と今更ながらに気づきました。
狼と香辛料〈3〉 著者:支倉 凍砂 |
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