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2006年10月30日 (月)

女子高生、リフトオフ! ロケットガール(1)

面白かった! 正統派にして王道の(バカ)空想科学小説でした。波乱はあるけれど苦悩はない、あれよあれよという間に進むジェットコースター的展開は、なんとなくだが、映画「ウォーターボーイズ」などで展開される矢口作品のテイストにかなり近いものを感じたなぁ。もちろん、そんな“ありえねー”物語ではあるが、完全なるウソ臭さではなく、もしかしたらアリかも、と思わせるのが空想科学の真骨頂であり、それが上手く効いているのだと思う。

ライトスタッフの物語、現場でのプロの物語、って、グッとくるんだよね。ミールとのやりとりなんかは、軽く目頭が熱くなってしまいましたからね。まあそれがあんなバカな展開につながっていくのだから、腰砕けもいいところなのだけれど、それもまた味になっているから不思議だ。でもって、あのオチ。ひどい話(笑)

10年前の物語の古さを感じず、楽しむことができました。大満足。

もっとも10年たって古さを感じないってのは、現実世界での宇宙開発事業が遅々として進んでいないってことでもあるのかな。なかなかしんどいものはありますな。といいつつ、多少の変化としては、昔は那須田さんで軽いツカミだったところが、今だったら多分、若佐さんになるんじゃないの。ってところかしらん。

女子高生、リフトオフ!―ロケットガール〈1〉 Book 女子高生、リフトオフ!―ロケットガール〈1〉

著者:野尻 抱介
販売元:富士見書房
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2006年10月29日 (日)

ピーターパン・エンドロール

日日日は実は3名の合作なのではないか? というのが自分の推測なのだが、どうだろう。それほどまでに日日日の刊行スピードは速い。多作である。ビックリである。

さて、久しぶりの純文学(?)。やはり、ライトノベルよりもこちらのジャンルのほうが面白いなぁ。一貫した成長痛小説作家であるわけだが、それを超能力や怪物やアレコレやのフィルターをかまさないで、モロにドンと突きつけられてくる純文学(?)のほうが、力強く、読むものに迫ってくる。そういうことだ。

さて。本作だがネタ的には、あまりトリッキーではなく、主人公の抱える幾多の謎などはあっさりと推測できてしまう。まあミステリーではないし、ネタが判ったからといって描こうとしている不安や苦悩からくる心の闇の有様については、その魅力を(いや、これを魅力といってしまう自分の心に問題があるとは思うが)減ずることはない。

と思うのだが、いかがだろう。

ピーターパン・エンドロール Book ピーターパン・エンドロール

著者:日日日
販売元:新風舎
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八月の博物館

相性はどんなものにもあるもんで、瀬名作品と自分のそれは、あまりよくないんだよなぁ、とこれまでの作品を読んできた中で感じていた。で、今回もやはり、なんかなぁ、と思ってしまったのであった。著者は文章巧者ではないとは思うが、かといって何を書きたいのかがとっちらかっているわけではない。理路整然と展開されているし、入子構造もスムースだと思う。でもね、なんかなかなか読み進められなかった。苦手意識なのだろうか。

内容自体はけっこう面白い。どこでもドアを(空想)科学的に設定し、物語を構築している。途中、急に伝奇的スタイルに変貌していったのには正直驚いた(えっ、これってSFじゃなかったのね!?)が、それもまたよし。全編を通じて論じられる物語論については、けっこう頷けるところがあるので、自分としては、そうそう、という気持ちで読むことができた。

ともあれ、読むのにかなりの時間を要してしまったのは事実。他の読者はどのくらいのペースで読んだのかが、ちょいと知りたいよ、というのが今の正直な気分です。

八月の博物館 Book 八月の博物館

著者:瀬名 秀明
販売元:新潮社
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2006年10月25日 (水)

GA 芸術科アートデザインクラス(1)

GA。といってもロストテクノロジーがどうとか銀河の平和がどうとかいうブロッコリーな話ではなく、美術系学校に通う女学生たちのスクールライフ4コマである(うう、学校という言葉をこんなに重ねてしまうとは)。
4コマによるストーリーマンガである。単なるギャグマンガではなく、学生ならではのいろいろな喜怒哀楽がちょっとずつ滲み出てきていて、自分としてはそこに青春性を感じるし、それが萌えシロでもあろう。

まあ、はじめのうちは作者自身も試行錯誤していたのか、あまりキャラがたっていないのだが、中盤以降、役割分担が整いはじめてからは俄然面白くなっているね。5人という設定はもっとも安定した構造なのでまとまりやすいんだよね。

告白するとだね。美術系学校に対する羨望は、いまだに自分の中にあって、だから登場人物たちに単純に軽く嫉妬してる気持ちもあるんですよ。であるが故に応援したくもあるというアンビバレンツな気分を味わって読ませていただいた。

次巻が楽しみなマンガがひとつ増えました。

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ZOKU

久しぶりの森博嗣作品。あれれ、森博ってこんな感じだったかしら。もっと端正な感じだったように記憶してるんだけど。だって、これは、あまりにも、バカ小説だ!
いわゆるオフビート。冷めた饒舌がそこはかとない笑いとおかしみを誘いつつ、結果的に平和だなぁ、というほのぼのとした印象が浮かび上がってくる。ノーテンキでいいよね。結局、悪人が登場しないからなんだろう。
なんとなくだが、Xメンのプロフェッサーとマグニトーが頭に浮かんできた。つまり元気なジーサンの話ってところからの連想なんだろう。そう感じた人も少なくないんじゃないのかなぁ。

ダジャレとは違う世代間ギャップの言葉遊びが面白い。でも、30代と10代でそんなに断然してるかね?

ところで、エピソード1の途中くらいまで<ZOKU=族、TAI=隊>を意味していることに気がつきませんでした。我ながら最近、鈍くなってるなぁ。脳力が落ちてきているのかしら。悪戯でも企てて活性させないとダメかね。

ZOKU Book ZOKU

著者:森 博嗣
販売元:光文社
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せちやん 星を聴く人

一人の男の成功と挫折の物語である。その結末は実にほろ苦い。カタルシスがないのだ。歴史は繰り返すが如くの「せちやん」というキーワードがもたらす円環構造は、これからも続いていくだろう人類の営み(というほど大袈裟でもないが)を示し、そこに永遠を垣間見るのだが、しかし、せちやん自身は己の無常に呆然とするところで幕を閉じている。今まで自分が読んできた爽快な読後感のある川端作品とはあまりにも違うため、自分と本のあいだにどう決着をつければいいのか若干途方にくれた事は事実である。

とはいいつつ、そのリーダビリティに圧倒されつつ、読み進むことが実に快感であったこともまた事実。その点においては実に満足している。

せちやん 星を聴く人 Book せちやん 星を聴く人

著者:川端 裕人
販売元:講談社
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2006年10月21日 (土)

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編

強力なネガティブ(残虐と諦念)&ポジティブ(希望と挑戦)が渾然一体となった相変わらず日日日節炸裂。な話ですね。萌え設定を意識したプログラムライトノベルではあるのだけれど、饒舌な文章力と、成長痛的シンパシーによって、吸引力を醸し出している。いや、つまり、面白かったってことです。

表面上、ロボットの物語ではあるのだけれど、実際には、いつものとおり人間の物語でしかない。というか、常に人間の物語/生きる意味について、考えているのだろう。正直、ロボットである必要はない(本人もあとがきで言い訳しているけれど)し、SF的には設定が甘すぎるだろうけれど、それはこれが空想科学としての、センスオブワンダーを追求するための、SFではないせい。ライトノベルというジャンルの王道(でもないけれど)だからなのだ。

後半、話を急ぎすぎ、はしょりすぎのきらいはあれど、それはまた疾走感でもあるので、痛し痒しなんでしょうか。

それにしても日日日って、本当に肉体の損傷に対するこだわりがあるんだろうか。

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編 Book ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編

著者:日日日
販売元:徳間書店
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芸能グルメストーカー

グルメレポートのようで、そうじゃないのが、ね。美味いもの食ってそれを勝手にエロに結び付けて解釈していく様は、あまりにもバカっぽくていいね。

しかし、本郷さんって、マンガ俳優という肩書きだとは知りませんでした(笑)。

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芸能グルメストーカー Book 芸能グルメストーカー

著者:泉 昌之
販売元:コアマガジン
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2006年10月20日 (金)

動物園の鳥

ひきこもり探偵の物語ついに完結。面白かった!

なんだけど、これはどう読んでも推理小説ではないですね。ミステリーとしては弱い。謎の提示とその解明が一直線で、フェイクもフックもないというのはさすがにどうかと思いました。明らかに犯人らしい人物が犯人だし、細かい謎(例えば手帳)も謎になっていない。また、一堂に会して「犯人はお前だ」とやるのはいいが、その後、延々と続く、加害者も被害者もまとめてのホワイダニットは、謎の解明ではなく、登場人物のそれまで生きてきた中での瑕を吐露させるものであり、それはミステリーではない。

つまり。この小説は、完結編においてようやく、人々の物語へと変わることができたのたと思うのだ。1作目からミステリー部分については「弱い」ところがあるのは感じており、むしろ登場人物の関係性、成長の部分に、よりウェイトが置かれていた感触はあったのだが、ここにきてそれが物語としての主題としてはっきりと打ち出されたのだ。であるがゆえに、彼らの関係がエピローグ、そしてサービストラックにおいて、変わらず、かつ、変わったことが、心に響くのだ。

そんなわけで、非常に良質の「小説」だったわけですが、正直にひとつだけ吐露しておくと。みんな説教臭いぞ(笑)。

動物園の鳥 Book 動物園の鳥

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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2006年10月17日 (火)

のだめカンタービレ(16)

面白いのは確かなんだけどね。ここ最近、高値安定で、破格さが薄くなってきているのが、ちょっと気になるのだった。なんとなく普通の音楽ジャンルのスポ根系マンガになってしまっているような。もっと奇人変人大集合でなおかつスゴイヤツらの物語であってほしいのになぁ、と。つまりは天才バカたちの物語ってことだね。

ドラマ化、アニメ化、と好調なだけに、それらのポピュラリティを一掃するかのごとく、大暴走してほしいのだけれどね。マンガには。

のだめカンタービレ #16 (16) Book のだめカンタービレ #16 (16)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
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付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います

もっと叙情的なファンタジー、幻想譚を期待/予想していたのだが、思ったよりもかなりダークなテイストであった。死や殺人などが、平然とストーリーに絡んでくる。基本設定としての、大人向け(?)なドラ○もんの秘密道具の物語から、そして表題から想起されるのは、エピカルかるエバーグリーン的なテイストの物語であろうし、もっと簡単な表現をすれば「生きてるって、人って素晴らしいね」というような、賛歌(と書くと正直鼻白んじゃうけどさ)だと思うのだ。が、実際にはそうじゃないわけで、そのズレた感じは、人によっては違うなぁと思わせるところかもしれない。自分は、そう感じた。第4話の話はだから、おまけ的なエピソードなのだけれど、自分としては一番しっくりきた話でもあった。

これは(いいか悪いかは別にして)おそらく作者の資質なのだと思う。殺人話などに対して、あまりハードルがない、リアリティを持っていない、そういうことなのかもしれない。個人的には、ならばもっと、徹底的にダークファンタジーに徹してもよかったのではないか、と思うのだが、どうだろう。

でも、そこそこに楽しめたので、予断との差に折り合いがつけられれば、問題ないとは思う。

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2006年10月14日 (土)

世界は悪魔で満ちている?(2)

うーん、やっぱりなんか憎めないなぁ。どうしようもなくバカバカしい話なんだけど、己の怒りを誘わない。ジャンクフード? B級駄菓子? そんな感じ。ってどんな感じよ!?

多分、文体が小説の文体ではないのだ。登場人物に対して過度の感情移入を許さない、神の主観による文体なのだ。神の視点でなく、主観。ここ重要。試験に出るから記しつけとけよ。ハイ、先生。いや、そうじゃなくて。神イコール作者が、バカ話(ピンの漫談といってもいい)をしている。だからボケのボケたおしもあれば、かぎりなくツッコミつづけたりも自由自在。話を進めるというよりも、刹那的なウケをいかに表現するかに注力している。そんな感じ。

でもって。それってすごく自分の感覚に近いんですな。だから自分としては、バカエッセイ風のあとがきが一番ウケたんだけど、それって不本意かしら。とかね。

客観的には、好き嫌いがはっきりする(多分2:8くらい? もっと?)作品だし、小説として未成熟(青い果実ねっ、キャ~)であることも事実。でもライトノベルとしてはそれすらも許容するのではないか? 人によってはね。というわけで、益体もなくどうしようもないダメ話ではあるが、なんかいいんだなぁ、と思わざるを得ん。とそーゆーことだ。

世界は悪魔で満ちている?〈2〉 Book 世界は悪魔で満ちている?〈2〉

著者:相原 あきら
販売元:メディアワークス
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2006年10月12日 (木)

狼と香辛料(3)

3作目ともなるとだいぶ安定感も出てきて、安心して楽しむことができた。主人公と狼神とのビミョーな関係は毎回、実にいい雰囲気を作り出しているのだが、今作において、二人の距離/関係/気持ちが、いままでよりも変化しはじめている。つまりはプラトニックな関係から、もっとオトナの(笑)関係を意識し始めた。もちろん、一作目からそれはあったが、現実の問題として真剣に考え出したという意味である。まあ、個人的には安直に表層的なハッピーエンドにはして欲しくないので、このまま手を伸ばせば届くけれども、肩が触れ合う程には近くない、そんな距離感のまま幕を閉じて欲しいかなぁ、とは思ったりもするね。

話としては、株の取引、駆引きを主軸に据えていて、商人の物語にもまだまだ切り口はあるんだぞ、という作者の気合が感じられたな。なんとなく「波の上の魔術師」や「リスクテイカー」を思い出しながら読みました。もっとも、そんなに複雑な仕掛けでもないし、現代社会では違法行為すれすれのような気がするが、どうなんだろう? 自分は経済系はトンと詳しくないのでなんともいえないが。ファンタジー世界だからいいんだけどね。

あえて難を上げるなら、ホロの気持ちをめぐってのグダグダ感もないわけではなく、主人公の気持ちのゆれがそのまま文章のゆれに出てしまったかな、とも思うが、それは許容の範囲内かな。

というわけで、次巻も楽しみである。あるのかな?

おまけ感想。「狼」と「娘」って、けものへんとおんなへんの違いだけなのね。もしかしたらそんなあたりから、話を思いついたのかしら。と今更ながらに気づきました。

狼と香辛料〈3〉 Book 狼と香辛料〈3〉

著者:支倉 凍砂
販売元:メディアワークス
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2006年10月10日 (火)

アンダカの怪造学 笛吹き男の夢見る世界

第2章といっても、さほどに新展開になったわけではない(でもないか)。相変わらずの内省と外活を繰り返す、いまどきのライトノベルではあるが、書き続けることで文章チカラも高まり、安定して楽しむことができた。

日日日のネーミングセンスは、作者自身あとがきでも述べているとおり、かなり恣意的で確信犯的な言語遊戯であり、あまりにもバカバカしくて逆にたまらなく好きなのだが、今回のヒットはやはり已己巳でしたね。

アンダカの怪造学〈4〉笛吹き男の夢見る世界 Book アンダカの怪造学〈4〉笛吹き男の夢見る世界

著者:日日日
販売元:角川書店
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そらトびタマシイ

まさに五十嵐大介ならではのフォークロア系不思議な話が詰まっている。いまさらその魅力についてどうこう語るのもおこがましいので、マストバイとだけ。

個人的には「すなかけ」にモーレツに揺さぶられました。

それにしても、ものを食べることに対する情景の切り取りかたが上手いよなぁ。

そらトびタマシイ Book そらトびタマシイ

著者:五十嵐 大介
販売元:講談社
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働きマン(3)

またもや泣けた! 自分も働きマンの一人として。進むべき道が見えづらい昨今。ああ、そうなんだよ、という共感を得まくりである。今回は特に、管理職話がかなりグッと胸に突き刺さったですね。
それにしてもJIDAI編集部は、プロフェッショナルな組織でうらやましいよ。いろいろ問題はあるにせよやる気のある職場はいいよなぁ。とグチッてみたよ。自分も仕事で癒されたいってもんだ。

働きマン 3 (3) Book 働きマン 3 (3)

著者:安野 モヨコ
販売元:講談社
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2006年10月 6日 (金)

家守綺譚

読んでまず連想したのは、幻想譚の先達である漱石の「夢十夜」や足穂の「一千一秒物語」だったが、そこまで風景の切り出し的な話ではなく、起承転結的なつくりにはなっている。しかしそれらはさりげなくの範囲で作為的なドラマは設けていない。ひとつひとつの話は特段にドラマチックではなく、日常と非日常が混在する世界の描写でとどめられている。また、そのような世界が許される時代背景(おそらく明治、大正だろうか)に置くことで、さらに物語としてのリアリティを生み出しているのだが、それらをあからさまに明示するのではなくあくまでもさりげなく背景として溶け込ませる。

物語のジャンルとしては、マジックリアリズムとなるのだろうが、魔法というよりは、幻想、仙界や神代という世界との連続であり、つまり八百万的、原日本的な風景である。繰り返しになるが、これら世界観を成立させるための仕組みとして、ドラマチックな物語を背負うのではなく、普通の淡々とした生活を表することで、より親和させている。見事だなと思う。

さらに、そのような普段どおりの生活を描きつつも、一冊すべてを読み終わると、そこには現実の社会を生きていくことに対する覚悟、あるいは龍之介の「杜子春」的な成長(というとうがちすぎか?)が浮かび上がってくる。ゆえに読み終わると単なる幻想譚を読み終わった満足以上の、別の読後感を味わうのだった。

個人的には、解説にも書かれていたが、たぬきの恩返しのエピソードに、かなりウルウルきてしまった。人が持つ無意識の善意に対して、ああ、と思うのだ。

家守綺譚 Book 家守綺譚

著者:梨木 香歩
販売元:新潮社
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2006年10月 4日 (水)

マリア様がみてる 大きな扉小さな鍵

インターポールが重い腰をあげたな・・・(byルパン)

話が大きく動き出しやがった。いや、いい加減動き出さないとダメでしょうみたいなところまできてたからね。溜飲は下がったっす。でも。進展はしたけれど、解決は全然してねー。とんでもなくヒキまくり。まさに! 寸止め海峡! もう早く、早く、次をくれぃ。頼む、早くぅ! はぁ、はぁ。。。 と祐巳ジャンキーっぷりを脳内発揮する自分なのでありましたとさ。

と、バカっぽい感想を書いてみたが、気持ち的にはそんな感じです。端的にはド直球のライト百合小説なんですが、しかしそんな表面的な萌え要素がいいんじゃなくて、自分にとっての「マリ見て」とは、これまで何度も繰り返し云ってきてはいるが、(エロティシズムとは関係ない)姉妹愛や友情の関係性のよさにあるのですよ。簡単な言葉に置き換えれば「お互いを想いやる心」であり、故に生まれる「信頼関係」であるわけね。
今回は一番の懸案事項である<祐巳×瞳子>だけではなく<瞳子×乃梨子>や<乃梨子×志摩子>、<瞳子×部長>、さらに<祐巳×優>といった、今まで秘められていた様々な想いが交錯し、話は否応もなく盛り上がっている。表面的な(同人誌的な、か?)誰と誰をくっつけて、というような茶化し的な遊びではなく、もっと、こうなんというか、それぞれがいろいろと想いを抱えながらも相手を如何に思いやるかといういう切なさ、愛おしさ。それに読む側も感化されてしまうというわけだ。それを萌えと云うんだよ、といえばそのとおりだけど、つまりは、手垢のついた安っぽい「萌え」という言葉で括って欲しくないんだよ。と。まあそれすら勝手な言い分だね。

しかし、ドリルの抱える闇って結構深いものだったんだなぁ。「マリ見て」って結構、そんなことで悩んでるんかい、みたいな肩透かしがあるけれど、今回はかなりシリアスだったね。深刻であればあるほど、クライマックスが近い予感もある。早く大団円を読みたいような、読みたくないような、今はそんな気分ですね。

それにしても暴走超特急の由乃さんは往時の面影は1ミリも無くなっちまったなぁ。でも、今のキャラのほうが好きなんだけどさっ。

マリア様がみてる (大きな扉小さな鍵) Book マリア様がみてる (大きな扉小さな鍵)

著者:今野 緒雪
販売元:集英社
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2006年10月 3日 (火)

The MANZAI (1)・(2)

活き活きとしていて面白かった。マンザイという話芸を文章で表現しようとすると、なにかしらの無理があるのだけれど、本作については、比較的上手く処理されているように思った。もっともマンザイ自体を直接に表現しているのはワンシーンしかなく、あとは日常の会話でのボケとツッコミ。これが軽妙でよろしいんだな。シリアスな場面なのにボケてしまう有様が愛おしいぞコノヤロー(笑)。
笑わせるための場、舞台上での芸を描く場合、「ここは面白いシーン」であるという前提のせいでハードルが高くなってしまい、なかなか笑えないことが往々にしてあるのだが、本作ではそこらへんを上手く回避しているな、と思うのだった。2作目に至っては、本来ハイライトとなるべき舞台のシーンをばっさりカットしているしね。そのため、この作品が描くべき、描こうとしている、少年少女の健やかなる成長の物語になっていると思うのだ。いいね。

The MANZAI 1 Book The MANZAI 1

著者:あさの あつこ
販売元:ジャイブ
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The MANZAI 2 Book The MANZAI 2

著者:あさの あつこ
販売元:ジャイブ
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影踏みシティ

叙情派ですねぇ。日常に不思議が紛れ込んでくるファンタジーは好きですな。一編いっぺんが長くなく、ちょっとしたエピソード、風景の断片を切り出したようなつくりになっています。だからその分、物語としての盛り上がりや食い足りなさがあるのは仕方ないのですが、別にドラマティックだからいいってわけでもないですからね。

そんなわけで、面白かったことを前置きにしつつ、不満を述べてみると、だ。話や雰囲気が古いんだよね。一応、現代(平成だな)を舞台としているにもかかわらず、端々に古臭さを感じる。家出少年が放浪の旅に出るという設定からはじまって、その理由が家族の不和(しかも現代的な屈折がない)だったり、旅先のエピソードも大時代的だし。ユーレイのファッションセンスも80年代。台風のネーミングも昭和風だし。
それらの引っかかりは作品の出来不出来とは関係ないのだけれど、だからこそ「ん?」と思ってしまうのかもしれないね。

影踏みシティ Book 影踏みシティ

著者:あらい りゅうじ
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