つきのふね
青春小説という言葉から連想させる「さわやかさ」や「すがすがしさ」、「希望」や「未来」といったポジティブかつ陽性のニュアンスが自分としては好きではない。むしろ苦悩や苛立ちこそが、青春期の人物を中心とした小説こそが、自分にとっての魅力ある物語なのであるが、それを、青春小説という安直な言葉で表現すると自分の求めるものとのギャップが生じてしまう。ゆえに自分は、そういう痛みをもつ小説を、成長痛小説といいたい。
で。本作は、まさに成長痛小説だった。悩みを抱えた登場人物たちがその悩みをどう折り合いをつけていこうとするのかを模索していく物語である。そこに直接的な救いはまだないのだけれど、いつかは。という予兆をもったエンディングは、クライマックスの盛り上がりも含めて、非常にウェルメイドなくせにソリッドなテンションを持っている。それが自分には響くところがあったのだろう。本気で涙ぐんでしまった。
つきのふね 著者:森 絵都 |
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