神様が用意してくれた場所
ミステリーには「日常の謎」というジャンルがあるわけですが、幻想小説のジャンルにおいても、そういう切り口があってもいいだろうし、現にあるよね、というのが最近よく思うところなのですが、本作はまさに「日常の謎」ファンタジーでした。まあファンタジーというやや手垢のついてしまった単語がふさわしいのかどうかは、別として、市井の人たちの日常の生活の中にある、ちょっとした不思議を切り取って、物語にまとめ上げる。しかも、都市伝説的にネタを放り投げて不安な感じで終えるのではなく、きちんと起承転結をつけた「物語」として表現する。そこに描くのは、不思議ではあるけれども、実は本当に描いているのは人の心の機敏である。これぞ、日常の謎の本質であろうと思うのです。
本作は、連作を通じて、さらに主人公のヒロインが、少しずつ成長していく姿も描かれており、読後の清涼感が実に心地よいものでした。
あえていうなら、最終話で、あからさまに能力を表現してしまうのは、どうかなとは思いましたが、それは些細な個人的な好みなので問題ではないでしょう。反対に一番気に入ったのは第3話のすれちがう話で、「不思議」と「日常」の差が実に絶妙で見事だなと思った次第です。
一応、ライトノベルレーベルで出ているのでカテゴリーはライトノベルとしましたが、実際は良質のジュブナイルでした。続編を期待してしまいます。
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神様が用意してくれた場所 著者:矢崎 存美 |
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