« ここは魔法少年育成センター | トップページ | 十三番目のアリス »

2006年8月21日 (月)

神様が用意してくれた場所

ミステリーには「日常の謎」というジャンルがあるわけですが、幻想小説のジャンルにおいても、そういう切り口があってもいいだろうし、現にあるよね、というのが最近よく思うところなのですが、本作はまさに「日常の謎」ファンタジーでした。まあファンタジーというやや手垢のついてしまった単語がふさわしいのかどうかは、別として、市井の人たちの日常の生活の中にある、ちょっとした不思議を切り取って、物語にまとめ上げる。しかも、都市伝説的にネタを放り投げて不安な感じで終えるのではなく、きちんと起承転結をつけた「物語」として表現する。そこに描くのは、不思議ではあるけれども、実は本当に描いているのは人の心の機敏である。これぞ、日常の謎の本質であろうと思うのです。

本作は、連作を通じて、さらに主人公のヒロインが、少しずつ成長していく姿も描かれており、読後の清涼感が実に心地よいものでした。

あえていうなら、最終話で、あからさまに能力を表現してしまうのは、どうかなとは思いましたが、それは些細な個人的な好みなので問題ではないでしょう。反対に一番気に入ったのは第3話のすれちがう話で、「不思議」と「日常」の差が実に絶妙で見事だなと思った次第です。

一応、ライトノベルレーベルで出ているのでカテゴリーはライトノベルとしましたが、実際は良質のジュブナイルでした。続編を期待してしまいます。

神様が用意してくれた場所 Book 神様が用意してくれた場所

著者:矢崎 存美
販売元:ソフトバンククリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« ここは魔法少年育成センター | トップページ | 十三番目のアリス »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 神様が用意してくれた場所:

» (書評)神様が用意してくれた場所 [たこの感想文]
著者:矢崎存美 神様が用意してくれた場所価格:¥ 609(税込)発売日:2006 [続きを読む]

受信: 2006年8月25日 (金) 12時13分

» 神様が用意してくれた場所 [STAIRWAY 2 HEAVEN]
矢崎 存美, Fuzzy 神様が用意してくれた場所 GA文庫の「神様が用意してくれた場所(著:矢崎在美  画:Fuzzy)」を読みました。  香絵が雑用バイトをしている日比野探偵事務所に、ある日舞い込んだ依頼は「あるはずのない道に消えた夫を捜して欲しい」... [続きを読む]

受信: 2006年8月30日 (水) 20時19分

» 『神様が用意してくれた場所』 [Cherryh's blog annex]
『神様が用意してくれた場所』作者: 矢崎 存美出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ発売日: 2006/08/10メディア: 文庫 とても気に入ったので、先に本家の方に先に書いてしましたしたが。 ぶたぶたシリーズで、知っている人は知っている作家の、ぶたぶたシリーズではない新作です。 私はこの方の本をぶたぶたシリーズしか知らなかったので、正直、さほど期待しないで読み始めたのですが、読み出したら止まらなくなりました。 高校を卒業し、探偵事務所で事務などの手伝いのアルバイトをはじ... [続きを読む]

受信: 2006年9月10日 (日) 00時37分

« ここは魔法少年育成センター | トップページ | 十三番目のアリス »