はじらい吸血鬼
自分の読書領域を広げるつもりで読んでみる(と云い訳しつつ)。
官能させられる、という一義的な役割については、これはこれでそれなりにアリか。とは思うが、ビジュアルで攻めてくるエロスが氾濫する昨今、文字によるエロスは単純なエレクションを目的とすべきではないかな。
そんな興奮するとかしないとかよりも官能小説の構造論について、興味深かった。つまり「初体験・年上・未亡人・人妻・多人数プレイ・同性愛」といった、行為に関するティピカルな要素がほぼもれなく描かれているのはバリエーションを入れていかないとページが埋まらないからなのかニーズに対するサービスなのかという設計構造についてであり、また、主人公がさえないデブが突然降ってわいた幸運(不運?)により急にモテキャラになる男性中心の充足願望主義的構造である。まあ、官能小説とはすなわち単純に娯楽主義的小説であることが必須であろうから、それも当然なのだ。
(男性願望充足主義的というのは最近のライトノベルでも氾濫していて、自分としては正直云って好きじゃないんだよね)
この本を選んだのは「吸血鬼」という多少なりとも、エロだけじゃなかろうという枠の広がりを期待してだった。その意味においては、ごくほんの少しだが、吸血鬼という種に対する解釈と、終末小説的なエンディングにおいて、描かれており、さらに、男は結局、身近な快楽に負けてしまうのだなぁという弱さがあり、なるほどねぇ。という愉しみかたはできたな。
しかしタイトルには偽りありだ。全然、恥らってねえじゃん(笑)。
はじらい吸血鬼(ヴァンパイア) 著者:睦月 影郎 |
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