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2006年8月 5日 (土)

佐藤家の選択(1)

あとがきで編集が、SFだなんだと云ったと書いてあったが、どこをどう読めばこれがSFになるのだ? 読めてないじゃん、ネタ? 理系っぽいからSFなのか? いや数学って厳密には理学じゃないし。ふんとにもう。でも、じゃあ、ファンタジーですかっていわれるとそれも違うと思うし、この物語っていったいジャンルでいうとなんなんでしょう。多分、娯楽。エンタテイメント。そういうノンジャンルなんだと思う。
自分の答えとしては「これはライトノベルというジャンル」なんじゃないかと考えている。最近、特に思うのだが、SFがジャンルであり手法であり哲学であるという輻輳的な構造を持っているのと同様にライトノベルもまたそれでひとつのジャンルなのではないか。そんな考えが頭から離れない。もっともまだ体系的に説明できるほど考えを詰めていないのだが、そういうみかたもあるかもというのは、ひとつの眼鱗だったのでちょいと触れてみた。が、それはそれとして。

本作である。いや予想外に面白かった。人物造形もストーリー展開も典型的なライトノベルなのだけれど、算法という大ネタの直球勝負で、ぐいぐい押しきられてしまった。高度な数学は、定理であり哲学であって故に単なるクイズの答えではなく真理の表出、イコール、チカラである。というのは直観として理解できるし、面白い。
典型的な人物設定といってしまったけれど、父親や妹、内弟子の「実は。。。」という広がりも、ああ、なるほど! とかなりいい感じの奥行きがあるように思う。また、多分、話の展開に無理がないのだろう。必要以上に広げず、こじんまりとまとめず、ちょうどいい塩梅。心地よい破天荒さってヤツなのだ。

あえていうべきとするならば、せっかく数字がらみのバカネタなのだから、もっと数字を前面に押し出してもよかったのではなかろうか。そのほうがきっちり3割5分1厘、バカさが際立つ蓋然性が高いと立証できるのだが。もっとも数学だから数字が必須ということはないし、むしろ証明とはロジックの組み合わせで数字がなくてもよかったりするのだけれどね。

もうひとつ、なにげに思いきりエロティックな表現がまぎれこんでいるのはいかがなものか。

ともあれ、かなり楽しませていただいた。次巻もそこそこ期待させてもらいます。

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