仔羊の巣
日常の謎を読み解いていくミステリーとしては完成度が高く、安心して楽しむことができるシリーズだと思っている。今回も本当にささいな謎(それは概ね人と人とが関わりあって際の誤解などなのだが)に焦点が当てられていて、実は人間関係の機微をミステリーの形式を借りて表現しているだけのように思うこともある。その意味において、本作品はいわゆる「本格ミステリーではない」のかもしれない。
ストーリー構造としてちょっと思ったのだが、複数の謎がひとつのエピソードの中で交錯して最後に大団円を迎えるって、実にドラマ的(特に思い出したのは「ジョン&パンチ」だったりする)だということだ。
それにしても、登場人物が全員、本音をぶつけあえる関係を構築しているということに、ウソ臭さを感じている自分がいる。実際に架空の話だからそこに描かれている姿はひとつの理想的な人間関係だということは事実なのだが、そんなに自分を他人にさらけ出す、本心を話す、なんてことしないでしょう? 普通。もしそれが現実においてもあることなのだとしたら、と、自分を省みてしまいかなり愕然と孤独と焦燥を感じてしまいました。ネガティブ指向だなぁ。
仔羊の巣 著者:坂木 司 |
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント