月館の殺人(上・下)
ミステリーマンガとしてきちんとストーリーも面白かった。本筋の謎では吹雪の山荘パターンの王道なのだが、マンガで叙述トリックによるミスリードの仕掛けもあり、楽しめた。(しかしネタがテツモノなのに時刻表トリックがないのはあえてなのか?)
しかし。自分としては作品としての構造的な部分に、より面白みを感じた。基本的に謎の提示とその解決という本格ミステリーは、再読に向かず作品としての寿命は短い。それを佐々木倫子ののほほんとした作風を加えることによって、コメディ性を高め、それによって「もう一度はじめから読もおっと」と思わせるわけだ。もちろん、それだけではなくテツうんちく、そしてテツの奇矯を絶妙にブレンドしたストーリーがあっての笑いでもあり、つまりは今回の企画大成功。という次第である。
しかし! 今回一番見事だったのはね。祖父江慎のとてつもない装丁だ。謎編と解決編で地紙の色を変える、おまけの黒紙に黒インキの印刷。カバーを外すと少年向け推理小説ハードカバーを模した意匠。恐るべし祖父江慎。まあこんなヘンなことする人はこの人くらいしか知らないので、奥付確認する前にあらかた予想できたけれどさ。
あと、殺人よりも盗みのほうがタチが悪いように思えるのは描き方のせいであろうか。テツだから?
月館の殺人 (下) 著者:綾辻 行人 |
月館の殺人 上 IKKI COMICS 著者:佐々木 倫子,綾辻 行人 |
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