川の名前
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ひと夏の冒険ものには弱いのです。それはそこに少年の成長の物語があるからなのですが、ともあれ俄然面白い!
タイトルだけから勝手に「少年達が川を遡上する冒険の話」なのかと思っていたのだけれど、全然違っていました。夏休みの自由研究という課題からペンギンの物語になるとは想像もつかないし、クライマックスの川下りの爽快なスペクタクルに結実していくとも予想も、あ、これは途中でそうなんだろうなと思ったけれど、ともかく、ワクワクとドキドキがつまった物語なのです。
小説における小学生とは、ということを考える。登場する子ども達は、子どもなんだけれども時として大人と同じように悩み考え行動する。だから小説という架空の世界の子どもとは実は子どもという設定のオトナでしかないのか、とも思うときもある。しかし、さらに思いをめぐらせれば、果たして大人は子どもよりもオトナなのか。実際に、自分の人生を振り返れば、子どもから大人までの時の流れは連続していて、あまり変化を感じてはいないのが正直なところなのだ。バカをやったり青臭い理想を振りかざしたり、あるいはヘンに達観したり、と、なんのことはない、昔の自分と今の自分は外見と肉体年齢以外対して変わっちゃいないと思うのだ。もしかするとそれは単に子どもの頃を忘れてしまっただけなのかもしれない。でも、大人と子どもには、経験による慣れ以外の差はあまりないんじゃないかな、と思っている。
だから、主人公キクの父親が大人的に登場してはいるが、実は単に歳をとった子どもなんだよな、と読んでいて感じた。それは作者もわかっていて、だからそういう描きかたをされているのが、(作者の考え方に)実に共感できたところでもある。大人に関してはもうひとつ。理解のある大人が絶対的に子どもにとって救いの神ではない(キクの父親や、獣医の鈴木、喇叭爺もだな)ような描きかたが、子どもだまし的でなくて、上手いなぁと思ったな。
読んでいて、自分が小学生5年くらいのときに近所の川をゴムボートで下ってみたいなぁと思っていたことを思い出した。自分もカワガキだったんだなぁ。
あと、は。TRネットの話とか、ペンギンについてとか、西遊記との類似性とか、いろいろいいたいこともあるけど、それは省略しておきましょう。
川の名前 著者:川端 裕人 |
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