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2006年7月31日 (月)

バッテリー

自分は野球が嫌いなのだ。それは日本の野球の持つ、特に高校野球の持つ、さわやかな汗、努力と勝利、というような上っ面だけの健康を売り物にしようとする態度が嫌いなせいなのだ。そしてそれはイコール、スポ根が嫌いということでもある。だから、世間において評判がよかろうと、読む前はかなり牽制していた点があったのは事実である。そして、読み終えてみて、読まず嫌いはよくないな、反省しなきゃいかんな。と思ったのもまた真実である。要するに面白かったのである。

この本で描かれているのは、努力と根性ではなく、才能ある者の孤高さと社会性との折り合いのつけ方について煩悶する、若さ故の葛藤の物語である。その登場人物たちの関わりあいを描く上での必須要件として野球があるのだろう。そう読み取った。

ただし、これ一冊では話はまだ導入部でしかない。第一、「バッテリー」というタイトルにも関わらず、バッテリーの物語にまで到達していない。早く続きを読まねば、というのが一番の感想である。

バッテリー Book バッテリー

著者:あさの あつこ
販売元:角川書店
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戦う司書と神の石剣

あまり他作品を読んでいないので、その認識がまったくの誤解なのかもしれないことを承知で語ってしまうが、戦う司書のシリーズが他の超人決闘モノと異なる点のひとつに個人のアクションではなく組織対組織に軸足あることだと思う。云い換えよう。(例えが古くてすまないが一般名称として認知されていると思うので)ウルトラマンに代表されるような個人対個人、あるいは、仮面ライダーに代表されるような個人対組織、による戦いではなく、組織と組織の抗争を描こうとし、その上に個々の戦闘があるという構造になっている。
自分の勝手な感想なのだが今回は特にそれが強かったような気がするのだ。それは話の発端が探索行からスタートし、それを妨害しようとする障害、組織間の暗躍などという展開が、エスピオナージの香りを醸し出していたからだ。というと云い過ぎだろうか? とにかく自分はそう感じたのだ。

もっとも中盤からミレポックとアルメの物語となっていき、当初の印象から大きくずれていってしまうのだが、それはそれで面白かったのでよしとする。そしてラストに再び冒頭の組織の物語へと回帰していくということで、2つのタイプの物語を楽しめたといえばよいのだろう。

設定上、そうならざるを得ないのかも知れないが「本」という存在が普通の探索をありえないものとしているのが非常に興味深い。つまり謎を捜査していく場合、当事者の本を発見すれば、ほぼ確実な真相を得ることができるのだ。よって調査はひとつひとつを積み上げていくのではなく、本を探すというその一点にのみにかかってくるのだ。また、作文のテクニカルな面でも、本を読むことで、過去にあった事象や他人の視点をそれなりに違和感なく描くことができるというメリットがあるように思える。そのような視点の移動や時間軸の移動は、あまり無自覚に書いてしまうと単に読者を混乱させるだけのだが、その点においてこの作者はうまく処理しているように思う。

エンディングにおいて新たな展開が暗示されている。おそらく次巻はまだ全然違うタイプのストーリーになるのではないだろうか。そのような常に変化していこうとする感覚は好きだ。というわけで、かなり期待している。

戦う司書と神の石剣 Book 戦う司書と神の石剣

著者:山形 石雄
販売元:集英社
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2006年7月30日 (日)

月館の殺人(上・下)

ミステリーマンガとしてきちんとストーリーも面白かった。本筋の謎では吹雪の山荘パターンの王道なのだが、マンガで叙述トリックによるミスリードの仕掛けもあり、楽しめた。(しかしネタがテツモノなのに時刻表トリックがないのはあえてなのか?)

しかし。自分としては作品としての構造的な部分に、より面白みを感じた。基本的に謎の提示とその解決という本格ミステリーは、再読に向かず作品としての寿命は短い。それを佐々木倫子ののほほんとした作風を加えることによって、コメディ性を高め、それによって「もう一度はじめから読もおっと」と思わせるわけだ。もちろん、それだけではなくテツうんちく、そしてテツの奇矯を絶妙にブレンドしたストーリーがあっての笑いでもあり、つまりは今回の企画大成功。という次第である。

しかし! 今回一番見事だったのはね。祖父江慎のとてつもない装丁だ。謎編と解決編で地紙の色を変える、おまけの黒紙に黒インキの印刷。カバーを外すと少年向け推理小説ハードカバーを模した意匠。恐るべし祖父江慎。まあこんなヘンなことする人はこの人くらいしか知らないので、奥付確認する前にあらかた予想できたけれどさ。

あと、殺人よりも盗みのほうがタチが悪いように思えるのは描き方のせいであろうか。テツだから?

Book 月館の殺人 (下)

著者:綾辻 行人
販売元:小学館
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月館の殺人 上  IKKI COMICS Book 月館の殺人 上  IKKI COMICS

著者:佐々木 倫子,綾辻 行人
販売元:小学館
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2006年7月29日 (土)

総統は女子高生

強化服美少女(巨乳)という、これはもういかにも売れセンを狙ったとしか思えないアイディアの、他愛もないバカっ話である。でもなんか憎めないなぁ、という読後感であった。それは主人公3人のポンポンと応酬されるバカな会話が、実にもうなんというか、ノンキでノーテンキで、微笑ましいからだったのではなかろうか。そこにあるのは、多分現実には(多分)ないであろう、幻想にして理想にして妄想の学園生活である。友情(とほんの少しのライトユリ的愛情)が、甘酸っぱく、ステキ。だからだ。多分。

文章力として、ストーリー展開が、飛び交う会話にひきづられていないというのはすごいなと思うのだ。この手の話は会話に気がいってしまうあまりストーリーを描くことが、上手くいかず、あんた何を云いたいの? となってしまうことが多いのだが、そのへんのバランスがいい塩梅で、無理がない。まあ、ストーリー自体がものすごく単純だからということもあるのだろうけれど、そういう見極めは重要だと思うのです。

てなわけで、かなり楽しんでしまったのだが、しかしね~。あのイラストは卑怯だ。というか恥ずかしいっす。萌えじゃなくて、エロでしょ? どうみても。あまりにもあざとくて、それはちょっと引いてしまったとです。いいんだけどね、別に。

総統は女子高生(仮) Book 総統は女子高生(仮)

著者:舞阪 洸
販売元:竹書房
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2006年7月28日 (金)

秘密の新選組(2)

歴史嫌いの自分にとって新撰組のイメージは、大河ドラマ「新撰組!」によってつくられたものがすべて。というわけでこのマンガに描かれている新撰組像は、ドラマの補完をしつつドラマを換骨奪胎するという、作者が想定している以上に破天荒な効果を生み出している(自分にとっては、ね)。

それにしても南蛮の秘薬で巨乳(一部違う)になってしまった新撰組の面々の繰り広げるドタバタではあるが、まったくの大ウソではありつつも史実と微妙にリンクする。
 例えば、山南と土方の確執が近藤をめぐる片想いの葛藤からくるきていたとか、沖田がいかにして壊れていったのか、とか笑える。それにしても、沖田に対するひどい扱いなどはいかにも三宅乱丈らしくていいね。いいね、っていうのもどうかと思うが。

どう続いていくのか期待大。

秘密の新選組 (2) Book 秘密の新選組 (2)

著者:三宅 乱丈
販売元:太田出版
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秘密の新選組 1巻 Book 秘密の新選組 1巻

著者:三宅 乱丈
販売元:太田出版
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2006年7月27日 (木)

BLOOD ALONE (3)

ヴァンパイアの少女と青年の奇妙な生活という、いかにもな設定だが、淡々とした微熱な恋ゴコロが雰囲気なのである。特に3巻目は全然話が動かない。ただひたすらに好き好き電波を出す少女とそれを全然意に介さない青年という話が続く。それもまたよし。いやらしいみかたをすれば、そして安直なジャンル分けをすれば、ツンデレラブなロリ系萌えマンガってことになっちゃうんだけど、そんなに単純じゃあるまい?

しかしね、刊行ペースと動かない話のおかげで設定やサブキャラをほとんど忘れてしまっているですね。これは自分が悪いのか。

BLOOD ALONE 3 (3) Book BLOOD ALONE 3 (3)

著者:高野 真之
販売元:メディアワークス
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2006年7月25日 (火)

うつうつひでお日記

なにもない日々の羅列だがそれはそれで面白い。なにより書評が一番面白いのだが、それはマンガとしてはどうか? なんちゃって。

まあ、あれですな。お笑いとか女の子とかSFとかとかとか、趣味主張において同じ血が流れているってことなんですかね。はまるツボが近いわけだ。だから、おお、わかるわかる、みたいな感じが面白かったのです。もっとも日常にあふれる不安感や焦燥感や怒りとかそんなところまで近いってのは自分的にヤバイか?

本当はドキュメンタリーじゃなくてフィクションを読みたいんですけれど、あまり催促などはせずのんびり待つこととしましょう。

うつうつひでお日記 Book うつうつひでお日記

著者:吾妻 ひでお
販売元:角川書店
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2006年7月24日 (月)

ザ・スライドショー 9&9.5

まあ判る人は判ると思うが、自分のポップカルチャー・サブカルチャーに対するスタンスにかなりの大きな影響を与えているみうらアンドいとうの大爆笑ネタトークイベント、ザ・スライドショーの第9弾である。みうらじゅん的なネタの動かしかたは、言葉の使いかたも含めて「違うんじゃん?」と思うところも多いのだが、それも含めてラブ&ピースな笑いで楽しめました。

初期の頃のバウ的な面白味の切り取りかたから、自己のアレンジによって笑いを構築していく、スライドを作りこんでいく形式に変化してきており、諸行無常を感じずにはいられないのであった。なんてな。
自分はバウ的なさめた感じ、間違いに対して笑ってやろうとする愛情と許容のなさにちょっと違和感を感じていて、だからこの変化は好ましいなぁ、と思うのである。

ザ・スライドショー9&9.5 DVD ザ・スライドショー9&9.5

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2006/02/24
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メイド刑事 2

作者の熱いファン魂につられての2巻目堂々発売だっ! というような印象でした。基本的にパロディ同人誌的なのだが、それはそれとして、大いなるマンネリ構造が味わい深いのですね。第1巻は、はじめての出会いなわけでお互い(?)身構えていたところがあるが、2巻目ということは、読者も(ちゅーか自分が)「こういう話」ということを納得ずくで買っているわけで、だから、設定だとかストーリーだとか根本的な部分についてイチャモンをつける筋合いじゃないし、気になることもなかったです。ただひたすらに(いい意味で)バカバカしい話を楽しんでやろうじゃあないか、と、好意的な心持で一気に読了でした。自分はメイドについて全然属性ついてないので、そういう点でもごく客観的に(?)いちエンタテイメントとして楽しんだってところもあるかもしれませんな。

まあ、あまりにも同じ話の繰り返しなので、これがずっと続くとなるとまた考えも変わってくるかとは思うが、とりあえずは面白かったっす。

ところで、冒頭の「この話は完全なフィクションで。。。」云々については、それ自体がジョークなのは承知しているが、映画や芸能関係などあまりにも現実社会の引用が多いので、すべて架空と云い切ってしまうには無理があるのではなかろうか、と思いました。

メイド刑事 2 Book メイド刑事 2

著者:早見 裕司
販売元:ソフトバンククリエイティブ
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2006年7月21日 (金)

お留守バンシー

西洋のモンスターたちのほのぼのでノーテンキな生活のドタバタコメディ、となれば思い出されるのはドボチョン一家やアダムズファミリー(これはちょっと違うか)のハンナバーベラ系アニメの一連の系譜であったりする。もちろんストーリー構築や展開上の技法などは、メディア表現上の相違はあるけれど、精神的な部分としてはかなり近しいように思う(でもないか)。

全体的に、良くも悪くもこじんまりとまとまっていて破格さは正直なところないのだけれど、雰囲気が心地よく、読後の幸福感が味わえる。キャラ萌え的に読む人も多かろうとは思うが、個々のキャラクターに対して思い入れをするというよりは、むしろその閉じた世界観を楽しむべき作品だと思いました。

お留守バンシー Book お留守バンシー

著者:小河 正岳
販売元:メディアワークス
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2006年7月20日 (木)

ecru

待望のなっち写真集、ゲェェェッットォォォーーー!!

とヲタク的に書くとキャッチーですか? 実際は別に熱狂しているわけでもないです。まあキライじゃない(だからこそ買ってるわけだし)んで、言い訳はしませんがね。今回はコケティッシュな雰囲気が出ていてよかったんじゃないでしょうか。水着フォトも満載だし。ただ自分的にはむしろ浴衣などの雰囲気写真のほうが好きかなぁ。グラビアアイドルというわけでもないし、お色気に頼るんじゃなくてもっと違う方向性でいいんじゃないかしらん、と思うんですよ。特に舞台が舞台だけだしね。

そう、今回の撮影地は、なんか見たことがある場所ばっかりで、それもそのはず、石垣島だそうで、ああ、やっぱり、どうりでね。と思うのでした。むしろ背景のほうに興味津々になっていたりして、実際。また、行きたくなっちゃったよ、八重山。

安倍なつみ 最新写真集『ecru(エクリュ)』  [DVD付] Book 安倍なつみ 最新写真集『ecru(エクリュ)』  [DVD付]

販売元:ワニブックス
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2006年7月18日 (火)

日本ふるさと沈没

徳間ってばこういう企画オムニバスコミックが好きだよなぁ、とため息をつきつつも、まんまと資本主義の手のひらで踊らされる自分。どちらも確信犯さね。

内容自体はパロディ&オマージュであり、とりたてて特にどうこう云うべきこともない。ファン気質にあふれた同人誌と思えばいいでしょう。とりあえず、寡作巨匠の鶴謙と米孝のマンガがひさしぶりに読めたというだけで幸せでした。

それにしても、鶴謙。。。 どこが日本沈没なんでしょうやら。自作オリジナルとどこが違うんだか。ちゅーか、あれだ。基本的に小松派なんだよな、作風が。

日本ふるさと沈没 Book 日本ふるさと沈没

著者:鶴田 謙二
販売元:徳間書店
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ブレスレス・ハンター(1)

本作品におけるキーポイントは、ブレスレスと幻銃という存在/アイテムに関するアイディアになるが、それ自体は既出作品と比較して新鮮味やオリジナリティがあるとは思わない。人外の魔物と戦う異能の戦士達というフォーマットから、良くも悪くも逸脱はしてない。しかしながら、文章力、読ませる力、があるため、なるほど面白い、と思うわけである。

幻銃と快楽との関係は、ヲタク的にみれば「アクエリオン」のパクリ的に思うところもあろうが、心理学の世界における銃と男性のシンボルとのメタファーという理論をそのまま描いているだけのことである(もっとも自分自身はその説に対しては、あまりにも単純で浅いだろうと思ってはいるのだが)。結局、意思や心情を形にするという設定は、魅力的な定番ということなのだろう。

さしあたり、数巻つきあってみたいシリーズではある。

ブレスレス・ハンター(1) HJ文庫 Book ブレスレス・ハンター(1) HJ文庫

著者:葛西 伸哉
販売元:ホビージャパン
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2006年7月17日 (月)

川の名前

注意! 文中に本作の重要なエピソードについて記載しています。

ひと夏の冒険ものには弱いのです。それはそこに少年の成長の物語があるからなのですが、ともあれ俄然面白い!

タイトルだけから勝手に「少年達が川を遡上する冒険の話」なのかと思っていたのだけれど、全然違っていました。夏休みの自由研究という課題からペンギンの物語になるとは想像もつかないし、クライマックスの川下りの爽快なスペクタクルに結実していくとも予想も、あ、これは途中でそうなんだろうなと思ったけれど、ともかく、ワクワクとドキドキがつまった物語なのです。

小説における小学生とは、ということを考える。登場する子ども達は、子どもなんだけれども時として大人と同じように悩み考え行動する。だから小説という架空の世界の子どもとは実は子どもという設定のオトナでしかないのか、とも思うときもある。しかし、さらに思いをめぐらせれば、果たして大人は子どもよりもオトナなのか。実際に、自分の人生を振り返れば、子どもから大人までの時の流れは連続していて、あまり変化を感じてはいないのが正直なところなのだ。バカをやったり青臭い理想を振りかざしたり、あるいはヘンに達観したり、と、なんのことはない、昔の自分と今の自分は外見と肉体年齢以外対して変わっちゃいないと思うのだ。もしかするとそれは単に子どもの頃を忘れてしまっただけなのかもしれない。でも、大人と子どもには、経験による慣れ以外の差はあまりないんじゃないかな、と思っている。

だから、主人公キクの父親が大人的に登場してはいるが、実は単に歳をとった子どもなんだよな、と読んでいて感じた。それは作者もわかっていて、だからそういう描きかたをされているのが、(作者の考え方に)実に共感できたところでもある。大人に関してはもうひとつ。理解のある大人が絶対的に子どもにとって救いの神ではない(キクの父親や、獣医の鈴木、喇叭爺もだな)ような描きかたが、子どもだまし的でなくて、上手いなぁと思ったな。

読んでいて、自分が小学生5年くらいのときに近所の川をゴムボートで下ってみたいなぁと思っていたことを思い出した。自分もカワガキだったんだなぁ。

あと、は。TRネットの話とか、ペンギンについてとか、西遊記との類似性とか、いろいろいいたいこともあるけど、それは省略しておきましょう。

川の名前 Book 川の名前

著者:川端 裕人
販売元:早川書房
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2006年7月16日 (日)

チナッティー ホノルルと神田の関係

見どころは尻。と断言できるほどのヒップを魅せることにこだわったつくりになっています。単に五月蝿い小娘的キャラの若槻千夏ではありますが、写真上では割とコケティッシュで、そのギャップの楽しさもあったりします。もっとも自分としては着ぐるみフォトに一番渦きましたよ。フェチだなぁ。

買っておいてなんだけど、若槻千夏は嫌いじゃない(じゃなきゃ買ってない)が、別にファンでもないので、単に好きなアイドル写真集(まあ、若槻がアイドルかという本質的な問題もさておいて)としてではない写真集の構造論的な見かた捉えかた(例えば、どういう順番で写真を配置するとストーリー性を想起できるか、とか)で楽しんでしまいました。

若槻千夏―チナッティー/ホノルルと神田の関係 Book 若槻千夏―チナッティー/ホノルルと神田の関係

著者:藤代 冥砂
販売元:ソニーマガジンズ
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ARIA(9)

相変わらずの、異世界ビジネスファンタジー(なんじゃそりゃ)として安定して楽しんだ。特に何かが変わっていくわけでもない定番的な心地よさ。例によって小っ恥ずかしいンだけど、この話に関しては許せるのが自分の中での不思議?

しかし、もみ子といいいガチャペンといい、かなり季節を重ねて齢も進んでいるかと思いますが、相変わらずシングルのままですなぁ。そういう意味では後輩ちゃんもか。そして、アリア社長っていったいいくつなんだ(というよりも火星猫の寿命ってそんなに長いのかよ!?)という新たな疑問が。

ARIA 9 (9) Book ARIA 9 (9)

著者:天野 こずえ
販売元:マッグガーデン
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トランスルーセント 彼女は半透明(4)

話としては相変わらず面白い。ちゅーかまだ幼い二人(あるいは三人)の恋模様が胸ギュン系だよね。
というのが全体的な感想だけど、重箱隅的ツッコミとして、やっぱこの作家は絵が上手くないよなぁ、と思う。気持ちに技術が追いついていないというかね(随分と偉そうだな、どうも)。別にだから悪いというわけではなく、それが味でもあるのだけど。

で、ガンダムヲタク的な絵や話の遊びがあまりにも多すぎて、それはさすがにちょっと引く。自分自身ガンダム世代ではあるし、やってみたい気持ちは判るが、パロディでもないのに自分のオリジナルに対して、ファン心理丸出しな作品にしてしまうのって、ちょっと違うんじゃないのかなと思うのです。

閑話休題(?)。しかし透明であるという設定は実にエロティック。というか意図的にそうしているのだろうが、物語のピュア性に対してそれはかなり扇情的でもある。本来並立することのないそのギャップこそが萌点なのかもしれない。透明であることを端的に描くためには裸であることが一番という表現上の理由もあるだろうが、それにしてもしずかは裸であいることが多いのでは? 他人から見えないからといって、中学生がそんな大胆でどうなのよ、と思ったり思わなかったりするし、そんな彼女に裸でしょっちゅう抱きつかれていてもなにも感じていない唯見の鈍感なんだか奥手なんだかバカなんだか、になんだかなぁと思ったり。そんな汚れた自分を振り返ってみたりする。

ま、最後に。当然ではあるが大河内さんのほうがキャラとしてはたってますよねぇ。でも自分が一番好きなのは大河内親衛隊(十把一絡げ)です。

トランスルーセント 4巻―彼女は半透明 (4) Book トランスルーセント 4巻―彼女は半透明 (4)

著者:岡本 一広
販売元:メディアファクトリー
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さよなら妖精

注意! 本文中に作品の本質に対する言及があります。

確かに面白かったのだが、世間で云われている程には感情を揺り動かされることはなかった。

多分、この話の泣かせのキモとしては、ヒロイン、マーヤの死によって訪れる主人公守屋が取り返すことのできない別離にあるのだろう。しかし、まず冒頭で「母国がユーゴである」と紹介された時点でそこにある悲劇は前提となっていること、そして、自分にとっては死は悲劇のツールにはならないこと(死それ自体は別に悲しくないし、泣けない)、そしてだから、マーヤというキャラクターに対して思い入れが抱けなかったのだ。だからそれで? という感じで最後まで読んでしまったため、切なさとか悲しさとか、そういう叙情的な感情の動きを得ることができなかったのだ。

で、そんな余条件を差っ引いてしまえば、この物語のもっとも大きな謎となる「マーヤの母国はどこか」に対する追求の有様は、なんのことはない与えられた言葉から選択肢をロジカルに除外していくというパズラーなのである。ひねくれた見かたをするならば、パズル系本格ミステリーをいい話風に仕上げるために死というイベントを導入したというイヤラシイ話といってしまうこともでき、「これは作り込んでいるだけなのだなぁ」と醒めてしまった、ともいえる。

それがいい読み方なのかは別にして(いや多分、悪い読み方だろうとは思うが)、それがこの作品に対する自分の思いである。もちろん、人物造形もエピソードも見事でリーダビリティが高く、本として楽しめたのだけれど、感情的にはそんな感じであった。

それにしても米澤穂信作品には、登場人物が「観察者(傍観者)」であることに対しての自己卑下的な設定が多い。探偵役は必然に観察者でなければならないという構造的な設定と、物語(あるいは人生)のなかでの他者への関わりあいへの義務(欲求)の相克からきているのだろうか。
しかし、自分は観察者であることに対してなんら不満もないし、むしろそうありたい、他人に関わりあいたいとは思っていないので(よく人と出会うことが好きですなどと云う奴が多いがそのなんと偽善的なことか)、なんでそんなことで悩むか? と思わずにはいられない。まあ若さ故の悩みなのだろうかね。

さよなら妖精 Book さよなら妖精

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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2006年7月14日 (金)

池袋ウエストゲートパーク(6) 灰色のピーターパン

相変わらず面白いっちゃ。基本的にぃ、短編集だもん、ワンアイディアを勢いで一気にクライマックスまで持っていくという構成でぇ、めっちゃ速度感感じるしぃ、それがIWGPのスピードになっているんだと思うなり。ま、その分、深さには欠けるもんね、なんて思っちゃったりもするけれどぉ、まあ、IWGPに叙情など求めちゃいないっちゃ。これはこれでいいなりよ。マコッちゃん、かっこいーんだからぁ。

とかいっちゃってるけれどぉ、お話としてよかったのは、話のふくらみ方が大きかった第4話「フェニックス計画」なんだもん。で、やはり、単にキングやサルや礼にいが単発で出てくるんじゃなくってさぁ、それぞれがそれぞれの思惑の中で、活躍するという展開のほうがマジ面白いとってことなんだと思うなりよ。てことは、ここらで一発、長編で読んでみたいってことなんかもしれないっちゃね、自分としては。

しかし、マコッちゃんも、えらく薀蓄なキャラになってきたっちゃ。クラシック好きは単なるアホなヤンキーあがりと一味違う特徴なんだろうけど、ちょっと鼻についてきてるなりかも? それだけではなく、今回はマンガのみならずライトノベルにまで手を出していることが判明しちゃったしぃ、いよいよもって、キャラが違う方向に向いているような気がするなりぃ。
まあアウトサイダーもヲタクサイダーも含めてのサブカルチャー(を懐に抱いている池袋)の真ん中にいる、という設定からすれば、それもアリか、なのかもなりよ。ねぇ、ジェシー。チュ。

灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉 Book 灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉

著者:石田 衣良
販売元:文藝春秋
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DEATH NOTE (12)

注意! 本文中に結末に対する記述があります。でも連載で大露出してますけど。

映画やアニメとこれから盛り上がり出すにも関わらず完結。もっともこれ以上続けようにもただひたすらにライバルインフレの繰り返しになってしまい、もう続けられないだろうという気もする。むしろもっと早く幕を引くべきだった(本当ならL編で終わってもよかったのに)のでは、とも思わないでもないが、まあこのタイミングなのだろう。

キラとニア&メロの対決は、結局キラの読み負け(ま、キラが負けた時点でこの話も終わりだけどな)で、頭脳戦としてはあまり完成度が高くない。しかもそこに至るまでの登場人物をバタバタと消していくのも慌ただしく、インフレの整理としては当然の結果でもあるのだけれど、これではまるで打ち切りにあったマンガのようである。いや、実際にそうなのか?

自分としては、アンチクライマックス的にキラ勝利、そして新世界の樹立というディストピア的結末のほうがよかったな。十歩引いて、キラ敗北、そして死亡なら、天国でも地獄でもなく場所とは死神になることだった。みたいな終わりかたになるのではなかろうか。そしてやはりキラは人を裁きまくるのだ。いずれにせよ、ダークだ。

実は、Lはやはり死んでいなくて、ニアとメロを咬ませ犬にしてキラをあぶり出そうとしていたのではないかという気持ちが最後まであったんだよな。L編の結末ってやっぱり不自然だったし。

そんなわけでダークファンタジーにしてピカレスクロマンにして心理戦の推理劇は、終了した。

DEATH NOTE 12 (12) Book DEATH NOTE 12 (12)

著者:大場 つぐみ
販売元:集英社
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2006年7月13日 (木)

世界は悪魔で満ちている?

ライトノベルっぽいようで、実際にはちょっと異質な文体なのが面白かった。神の視点のボケツッコミを内包している、いや、前面にフィーチャーされているといってもいい。読みはじめは少々戸惑ったが、慣れるとかなり面白い。いや、実際、これは文章巧者だと思う。普通の物語にはミスマッチだけど、このようなバカ話にはあっているといえる。

じゃあ、これはどんなお話なのよってことになると、実はこれが、あってなきが如しで。天使と悪魔が混在している社会という設定を前提にしているが、なおがつそれがストーリー全体にあまり絡まない。絡んではいるのだけれど、それが何かを解決するとか、何かがどう変わるとか、そういうの一切なし! 結局、何のことはない。変化球ツンデレラブコメなんだよ。
クライマックスも、え? これがオチ? みたいな感じで、主人公マコっちゃんの正体(たぶん脱天使だよね)とか悪魔集会とか、そういう設定の展開については一切ない。まさにアンチクライマックス主義。違うか。

でもそれでいいのだと思う。この物語は刹那的な渦きを励起させるプチエロと主人公ふたりのツンデレ漫才、そしてなによりも作者自身のひとり漫才を堪能する、そういう話だと思うからだ。

しかし冒頭の尻尾攻撃のシークエンスはものごっつい渦きまくりですよ。あからさまにエロチックだもんね。

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だめあね☆☆ 山からブルマがおりてきた

ちょっと期待が大きすぎたのだろうか。肩透かしだったかなぁ。

ブルマだ水着だなんだと、あからさまな萌えねらいの大バカなネタを暴投してくる強引っぷりは、前巻に引き続きかなり好きなんだけど、ただね、文章が浮ついているような気がする。会話文が必要以上に書かれているというか、ヘンにエクスキューズのために言葉を重ねているというか、そんな感じ。会話でストーリーを進めているというのではなく、単なるオモシロ会話(?)を入れ込んでいるだけなのね。そうではなくて、ストーリーを進めていってほしいんだよなぁ。

バカ小説は事件/事象がひたすら転がっていかないといけないと思うのですよ。例えば、雪山で小さな雪球が転がり落ちるうちにどんどん大きくなり、しまいには林を破壊し、雪崩に至るというような。あるいは、古城の屋根の上でロープ用ロケットを拾おうとして屋根を駆けおりはじめ、しまいには塔をいくつも飛び越していくかのように。そういう雪だるま式にバカ事件が暴走展開していくってのが必要なんだと思うわけです。

そういう展開にならないのは、多分、ライバルありきで「対決!」というフォーマットに枠がはまっちゃったせいではなかろうかと思うのです。そうなっちゃうと意表をついた展開にならないでしょ?
自分としては、くだらないビジネスをはじめて事件が拡大、カタストロフィ、でも大団円。みたいな流れのほうが、だめあねには相応しいと思うのですよ。だから本巻でいえば、人造海岸島の前半部分がベストリーディングポイントであったと思う。

と、いいつつも「だめあね」というアイディア自体は、自分にとってまだキラーコンテンツではあるので、もう少し追います。イラストのプチエロっぷりとあわせて、お姉さんに渦きまくってますから。次回とりあえず期待。

だめあね☆☆ 山からブルマがおりてきた Book だめあね☆☆ 山からブルマがおりてきた

著者:葛西 伸哉
販売元:エンターブレイン
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サマースクールデイズ

小細工のないすごく正統派、しかも話自体もさほど長くないので、一気に物語が終わってしまう印象だった。その分、主人公の心境の変化がストーリーの進行に寄り添って非常にシンプルにわかるようになっていると思う。それは云い換えると「単純」ということでもあるんだけれど、だからこそ高校生らしい悩みでもあるなぁと思う(と書いてみたが、現代社会における今日びの高校生はこんなにピュアじゃあないよなぁ?)。

恋愛模様もあるが基本的に友情の物語で、必要以上にエピソードを追加しないってのが自分としては好感触なのだが、サマースクールの日常のエピソードというものがスポイルされちゃっているともいえ、それはそれで読みたかったかもしれない。それは元々その長さが前提だったからこういう形になったんだろうかしらね。

サマースクールデイズ Book サマースクールデイズ

著者:深沢 美潮
販売元:ジャイブ
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2006年7月12日 (水)

ウルトラマン誕生

巨匠監督にしてカルト監督である実相寺氏が語るウルトラマン回顧録、あの頃ボクは若かった。風な内容かと思いきや、意外と実践的でちょっと意表をつかれた感じであった。

もちろん、回顧録的な話ではあるのだけれど、ノウハウについてふんだんに盛り込んだ制作秘話なのである。実相寺監督といえば、半ば強引ともいえる見切れカット割で有名だが、それがスタジオの構造の制約からきているとは思いませんでした。まあ、それだけが理由ではないのだろうけれど、モノを創るってクリエーターの直感と独創だけれはない、理詰めの(あるいはやむにやまれぬ)根拠があるんだなぁ、としみじみ感じさせられました。

そしてやはり愛情なんだなぁ、と、ね。自分を見失いがちな昨今、こんなにも打ち込めることがあることの素晴らしさを思うのでした。

ウルトラマン誕生 Book ウルトラマン誕生

著者:実相寺 昭雄
販売元:筑摩書房
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マリア様がみてる 仮面のアクトレス

まったくもって、ああイライラするったら! と由乃さんのキレッぷりが実感できるくらいにグダグダな話になってきているというのが実感である。もともと感情の乱高下はあっても基本的にノーテンキな祐巳の繰り広げる学園ユリコメディという楽しみかたをしているわけですが、そして、2年になってからは下級生(つーかドリルだ!)の変化球ラブ光線に全然気がつかない鈍感っぷりにやきもきするという愉しみかたをしているわけですが、しかし! ここ数巻のマイナー続きはさすがにどうなんですか? 引っぱりすぎじゃあないですかね。

ま、ここが祐巳のスールというこの物語における大きな焦点であるのは確かだが、そしてこのままだといくらでもだらだら続いてしまいそうな物語のひとつのクライマックスにしようと(これを描くことによって祥子と祐巳の関係の再確認も行われるわけだ)しているのだろうとは思うが、それにしても長すぎではないでしょうか。

ここまで焼きもきさせられた分、納得できる大団円を用意しておいてくれなきゃ困るよ、いやホント。次回、いよいよ! 決着!? してください。お願いだから。

あ、だからといって本巻がつまらなかったわけじゃあないですよ。

おまけのつっこみその1。由乃と令の第1エピソードだが、これまで多くの冊を重ねてきてはじめて本格的な一人称だったんじゃないのかな? いままでずっと擬似一人称だったのであまり違和感を感じなかったかもしれないけれど。

おまけのつっこみその2。祐巳が祥子に対しての科白。「抱きしめてください」には、作者に対して「確信犯!」と思わずにはいられませんでした。ライトユリ万歳(笑)

マリア様がみてる (仮面のアクトレス) Book マリア様がみてる (仮面のアクトレス)

著者:今野 緒雪
販売元:集英社
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2006年7月 9日 (日)

DIVE!!(上・下)

ひさびさに大ヒットした。燃えた。面白い。未読の人は絶対読むべきだ。

ダイビングというマイナースポーツでの少年達の成長を描くスポーツ小説。簡単にまとめてしまうと単にそれだけなのだけれどね。
登場人物全員がしっかりと描かれている。夏の物語風の叙情的な雰囲気を残しつつぐいぐい進むストーリー展開。クライマックスの手に汗握る展開に、余韻と未来を感じさせるエンディングに泣かせる。これぞ本読みの醍醐味といってよいだろう。ああ、こんなに手放しでポジティブキャンペーン張ってしまっていいものだろうかとも思うが、まあ、自分の読後の感動をどうしても伝えておきたかったのですともさ。

ところで、一般的にこの手の物語は「スポ根」といわれるのだろうけれど、自分はそうじゃないだろ、と思っている。登場人物が潜在的な才能を、自己の成長と他者からの影響によって開花させていく物語だろ、と思っているのだ。それをもってスポ根というのなら、まあしかたないのかもしれないけれど、どうも「スポ根」という言葉の持つ、努力と根性で成長といった古くさい精神論的教養(強要)物語とは違うカテゴリーとして捉えたいのだ。例としては曽田正人作品(「め組の大吾」や「カペタ」)を上げたいが、つまりは、努力を要しないのではなく、努力によってすべて解決するという思想が嫌いなのかもしれない。

といいつつ。自分から書いておいてなんだけど、そんな小難しい屁理屈などどうでもいいっす。とにかく読め、と。それが唯一にして最大の賛辞だ。

補足。実はひとつだけ不満がある。タイトルの「!」2つ重ね。ちょっとチャラい感じでどうかと思うのですよ。まあ作中にエクスキューズされているんだけど、ちょっとね。好き好きなんだろうけれど、ね。

DIVE!!〈上〉 Book DIVE!!〈上〉

著者:森 絵都
販売元:角川書店
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DIVE!!〈下〉 DIVE!!〈下〉

著者:森 絵都
販売元:角川書店
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仔羊の巣

日常の謎を読み解いていくミステリーとしては完成度が高く、安心して楽しむことができるシリーズだと思っている。今回も本当にささいな謎(それは概ね人と人とが関わりあって際の誤解などなのだが)に焦点が当てられていて、実は人間関係の機微をミステリーの形式を借りて表現しているだけのように思うこともある。その意味において、本作品はいわゆる「本格ミステリーではない」のかもしれない。

ストーリー構造としてちょっと思ったのだが、複数の謎がひとつのエピソードの中で交錯して最後に大団円を迎えるって、実にドラマ的(特に思い出したのは「ジョン&パンチ」だったりする)だということだ。

それにしても、登場人物が全員、本音をぶつけあえる関係を構築しているということに、ウソ臭さを感じている自分がいる。実際に架空の話だからそこに描かれている姿はひとつの理想的な人間関係だということは事実なのだが、そんなに自分を他人にさらけ出す、本心を話す、なんてことしないでしょう? 普通。もしそれが現実においてもあることなのだとしたら、と、自分を省みてしまいかなり愕然と孤独と焦燥を感じてしまいました。ネガティブ指向だなぁ。

仔羊の巣 Book 仔羊の巣

著者:坂木 司
販売元:東京創元社
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涼宮ハルヒの憤慨

さて、ようやく追いついた。世間と同じ時間軸に到着したですよ。

というわけで。感想です。一言で云えば高値安定。安心して楽しめました。学校生活のお約束ネタを、「意識的に」導入する、あるいは「せざるを得ない」状況設定を理不尽にならない程度に稼動させるための設計ができているので、その展開自体に安心して楽しみ浸ることができる(というより自分が慣れただけかもしれないけれど)。

ただひとつ苦言があるとするならば、(前作「陰謀」でも感じたのだが)長期シリーズ化には必ず起こってしまう、ライバルインフレ現象がやはり発生しているのがちょっとマズイかな、と。手を変え品を変え、やたらに登場人物を増やしていって、それがイコール新展開というのは、ちょっとどうかな、と思わないでもない。個人的には最少人数でドタバタしている感じが好きなんですが。

ところで。ここまで読んできてずっと気にかかっていたのが、キョンの能力と本名。たぶん、ネット上ではいろいろと詮索されているような気がするが、検索するつもりはないので勝手に自分の考えだけ垂れ流してみましょう。
まず、名前のほうだが、八条京介って感じなのでは? ま、これはどうでもいい話題だな。それよりも能力のほうが実は最後の最後に至る重要な伏線のような気がしている。平凡な(?)一般人と書かれているが、自分の勝手な推測では、実は超能力者なんじゃねーの、と思っているのですよ。その根拠は、文体。一人称で書かれているが、キョンの科白がカギカッコつきの場合となしの場合が混在していて、しかもそこに書かれている内容が相手に伝わっているでしょう。ここですよ。実は登場人物の誰にも気がついていないが、実はすこぶるのテレパスであり、意識共有能力のあるというのはどうか? まさに叙述SF。まあ、かんぐりすぎだろうけれど。

涼宮ハルヒの憤慨 Book 涼宮ハルヒの憤慨

著者:谷川 流
販売元:角川書店
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2006年7月 7日 (金)

超人計画

ドス暗いルサンチマンを延々と怨嗟のどこくに垂れ流されて、いったいそれを同楽しめるというのでしょう。いや、自分自身、ダウなー傾向があるので、「おお! 友よ!」みたいな黄泉かたをしただけですが。

しかし、これってばエッセイのように書かれているが、実はフィクションとして捉えるべきのような気がする。ひとりのオタクでヒキコモリな自称(?)作家が自分を取り戻そうとしてもがく姿をエッセイ風に描いたフィクション。いや、ノンフィクション小説といったほうがいいのか。要するにそれなりに起承転結を持つ小説であり、随筆ではない、ということである。だから、そう、結局、滝本作品なのだ。

でも、どんなにどん底を味わったといっても、レイちゃんレイちゃんいうてたりしても、結局、幸せが見つけられたんだからいいじゃん。

超人計画 Book 超人計画

著者:滝本 竜彦
販売元:角川書店
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紀文大尽舞

とにかく! 基本的に歴史が嫌いなので、本当ならばこんな話は読まないはずなのだが、一連の米村作品の持つ時代物講談としてのリーダビリティには好意があったので、その流れで読んだわけだ。

その文章力や、あっけらかんとした明るさはそのままなのだが、しかし内容はハードというか生々しいというか、歴史上の史実をどれだけ読み替え、新たな事実を見出せるかというのが、この手の歴史秘話の真骨頂とするのならば、かなりうまくできているのかもしれない。

といいつつ、しかし、冒頭に書いたとおり歴史は嫌いだし、だから史実についての知識もないので、ここに書かれた内容がどれだけ独創的なのか、自分ではわからないのである。単に面白いなぁ、江戸時代のエスピオナージ的に楽しめるなぁ、と思うだけである。だから本作品の本質的な楽しみ方はしていないでしょ、といわれればそうなんだろうと思う。しかし、そんな下準備や共通知識がなくても読めるというのは、面白かったからでしょ、とも思う。

というわけで不満ではないのですが、でも、米村作品には、もう少し牧歌的な「花のお江戸の大騒ぎ」みたいな話を期待しますね、どうしても。

紀文大尽舞 Book 紀文大尽舞

著者:米村 圭伍
販売元:新潮社
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涼宮ハルヒの陰謀

ひさしぶりというか。今回は朝比奈さん完全フィーチャーといったところの物語。つまり。1巻「憂鬱」におけるハルヒとキョン、4巻「消失」における長門とキョン、と同様、朝比奈さんとキョンのスタンスと、そして各人のポジショニングの確認、という物語であったわけだ。なにより敵対組織も出てきて、全体の話としては起承転結の「承」に(ようやく?)突入したというところか。

ストーリー的にみた場合、そんなに傑作というほどでもないような感想なのだが、それは多分、自分がハルヒ小説に求めているモノが「日常の非日常」あるいは「非日常の日常」にあるからなのかもしれない。だから、敵対組織については、今後の物語を転がしていくための登場であることはまったく承知の上ではあるのだけど、しかし展開的にはありふれたライトノベルっぽくなってしまって、ちょっと興が醒める感じがしたのだ。
なんだろうね。普通。典型的。そういうのが好きじゃない自分の趣味のせいだからかね。元々、ハルヒシリーズって、典型的でお約束のベタなSFネタをこれでもかと盛り込んだサービス過剰さと、それを有効に活用しない贅沢っぷりにあると思っているので、このような展開は、典型的だいう意味において実にハルヒ的なのかもしれないけれど。

といいつつ、次巻に続く。

涼宮ハルヒの陰謀 Book 涼宮ハルヒの陰謀

著者:いとう のいぢ,谷川 流
販売元:角川書店
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