制覇するフィロソフィア
よい! よいぞっ!
爽快、なのである。痛快、なのである。とんでもない飛び道具をワンアイディアで展開する豪腕こそがライトノベルの骨頂であるとするならば、これはまさにその有り様を具現しているのである。
えー、自分の脳内分類として、ジュブナイルは「大人が若者に向けて語る小説」であるのに対し、ライトノベルは「若者が若者に対して語る小説」という分けかたをしている。この場合の若者とは実年齢ではないのはいうまでもないのだが、それはそれとして、じゃあ「若者が語る“こと”」はなにか? それはつまり、肥大化した自意識過剰からくる痛み。であったり、逆に、過大な自己認識からくる大言壮語。であったりするわけだ。端的に云えば、何のことはない「青臭さの小説」である。しかしいずれにせよ中途半端では遺憾のであって、上げでも下げでも突き抜けることが重要。それが若さだし、そうじゃないと面白くないっしょ。
で、本作。バカ! バカはバカなりに力強い。パロディであろうとも、なんだろうと、突破していればそれは真であろう。
ところでさて。自分は実はかなりの青っちい理想主義者であることは知る人ぞ知るところであるが、理想主義者は往々にしてイデア論を信奉するのは自明の理。なので、今回の大ネタである哲理で、イデアを語られてしまうと、だね。それだけで、待ってましたとばかりに燃えが入ってしまうのである。冷静に読めば、かなり詭弁で胡散臭い設定なのだが、勢いで逡巡させないね。よくぞこんなバカを思いついたという一点でこれは傑作と言い切ってしまいたい。
後半、失速気味であったりもするのだが、ともあれ久々のバカ小説である。今後の展開が楽しみだ。
制覇するフィロソフィア 著者:定金 伸治 |
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント