スローモーション
佐藤多佳子の文章はいつも静謐で抑制された感覚がある。それが清々しい効果を発揮するのだが、場合によっては突き放した寒々しさになる場合もあるのだなぁ。ということを今回感じた。
あるビターな出来事を通じてそれにかかわった人の成長する姿を描いてはいるのだけれど、どうにも感情移入できないのだ。納得いかない感じ。
それは何のことはない、ニイチャンの生き方と人とのかかわり方に腹が立つせいなのだ。別に自分自身そんなに正しい生き方をしているわけでもないし、白々しく正論を吐くつもりもないのだが、己のダメッぷりに依存して他人を巻き込んで平気なタイプってダメなんだよ。ダメならダメでいいから、人を巻き込まないでほしいのだ。人を不幸のスパイラルに巻き込むような人間はキライなのだ。
というわけで、ストーリー的には全然ダメだったのだが、そのような登場人物に対する感情を励起させる筆力がある作者の力はいつもながらにだが凄い。と思う。まあ、できるならもっと読後の伸びやかな気持ちを抱かせてほしいなぁ、次回は。
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スローモーション 著者:佐藤 多佳子 |
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