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2006年6月19日 (月)

ブレイブ・ストーリー(上・中・下)

一義的にはすごく王道のRPG系ヒロイックファンタジー。だもんで異世界編に移る前の導入部としての現実世界の描写が延々と続くことに対して、正直不要なんじゃないの? とは思ったのですよ。読んでいるうちはね。しかし読み終えてみて、その感想は逆に、現実世界をきちんと描いているからこそ、傑作足りえたのだと思うようになりました。

つまり異世界での物語があまりにも典型的であるのは、典型的で平板であったとしてもその背景にあるリアリティ(心や意思や志気が「ある」ための理由といってもいいか)をしっかりと構築することで、物語に命を吹き込むことができる。あるいは平板なゲーム的ストーリーにもリアルな意味がある。ということである。ゲーム好きの作家としてゲームのアイデンティティを弁明しようとしているともいえる。さらに云えば、作者の技量を持ってすればもっと独創的な異世界を作り出せそうなものを、あえて見知った世界観を用いてその裏にあるものを浮き彫りにしようとしているのかもしれない。と思ったっす。

典型的な、と書いたが、しかし実際には何か別の作品のどこかをパッチワークしたという感じとも違うのだ。どこかで見聞きしたことがある気がするけれど、はじめて出会う物語。そんな不思議な感じ。
そして、そこに描かれる中には死や憎しみがあり、人柱に関する扱いも逃げがない。ライトノベル的な甘さとは一線を画している(人死がリアルだというのではなく、その有様が、ね)。

エンディングがもっと泣かせに入るかと思ったけれど、意外とあっさりとした余韻であったのは意外でもあり、当然でもあり、なんかヘンに納得しました。

ところで、映画公開前に読むということを自分は基本的にしない。で、今回は安直にアニメにするのはいかがなものか、という思いがあり映画は観ないつもりだったので読んだわけですが、読み終わって逆に映画が観たくなったっす。それは文章の力で構築された物語をどう映像にしたのかが観たくなったから。
そしてキ・キーマの発音が自分には上手く出来ないからだっ(笑)!

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